家が傾く――そんな深刻なトラブルの裏には、さまざまな原因が隠れています。なかでも「不同沈下」は、地盤の一部だけが沈むことで建物が傾き、ひび割れやドアの不具合、さらには健康被害にまで発展することもある厄介な現象です。
この不同沈下は、単なる自然現象ではなく、建てる前の調査不足や施工ミス、周辺環境の変化など、人為的な要因が関わっていることも少なくありません。
原因を正しく知ることで、予防や早期対策が可能になります。ここでは、不同沈下の代表的な原因を10項目にわけて、わかりやすくご紹介します。ご自身の土地や建物に当てはまる要素がないか、ぜひチェックしてみてください。
不同沈下を起こした主な原因を10項目あげてみました。以下について、詳しく説明します。
不同沈下の主な原因 10選
- 地盤が軟弱である(自然地盤の性質)
- 地盤調査を行わずに建築してしまった
- 造成や盛土によってつくられた人工地盤
- 埋設物(ガラ・浄化槽・木の根など)の上に建てた
- 排水処理が不十分で地盤がゆるむ
- 基礎の設計ミス・施工不良
- 擁壁の裏側の埋め戻しが不十分
- 地下水の汲み上げや地下構造物の掘削
- 近隣の大型工事や道路工事の影響
- 交通振動や地震などの長期的な揺れの蓄積
地盤が軟弱である(自然地盤の性質)
不同沈下が起こる最も代表的な原因のひとつが、「軟弱地盤」に建物を建ててしまうことです。軟弱地盤とは、簡単に言えば「建物の重さを支える力(=地耐力)が十分でない地盤」のことを指します。
建物は、想像以上に大きな荷重がかかっています。たとえば一般的な木造住宅(2階建て)でも、基礎を含めた総重量はおよそ40〜50トンにもなります。その重さを建物の基礎を通じて地盤が支えているのです。したがって、もし地盤がその重さに耐えられなければ、一部が沈んでしまい、不同沈下が発生します。
軟弱地盤ができる自然条件とは?
軟弱地盤は、もともと自然の中で形成された「土の履歴」によって決まります。以下のような条件でできた土地は、特に注意が必要です。
昔、川や池、沼だった場所
古地図を調べると、今は住宅街になっていても、明治時代や昭和初期には「川の分流」「溜池」「湿地帯」だった土地が数多くあります。こうした土地は、もともと粘土質やシルト(細かい泥)の層が堆積していて、水分を多く含んでいるため、非常に柔らかい地盤になっています。
こういった場所では、表面を多少固めたとしても、地下にある柔らかい地層が建物の重さに耐えきれず、じわじわと沈んでいくことがあります。
沖積層・低湿地・沿岸部など
沖積層とは、川が運んできた砂や粘土などが堆積してできた地層のことです。関東平野や大阪平野の低地部など、日本全国の都市部の多くはこうした沖積地に形成されています。
特に海に近い低地や三角州、埋立地などでは、地盤がゆるく、沈下が長期的に続くという特徴があります。昭和の高度成長期に埋立てられた地域などでは、地盤改良や杭工事がなされていないまま建てられた建物に、近年になって不同沈下の問題が出ている例もあります。
有機質土(腐植土)を含む地盤
草木が腐敗してできた「腐植土」が多く含まれている地盤も要注意です。腐植土は、水を含むと膨張し、乾燥すると収縮するという性質があり、建物を建てるとその荷重で圧密沈下(時間をかけてじわじわ沈む現象)を起こします。
特に、田んぼだった場所を宅地造成して家を建てた場合、腐植層がそのまま残っていると、表面は見た目にきれいでも内部は軟弱なままというケースが少なくありません。
地盤の強さはどうやって判断する?
地盤が軟弱かどうかを見た目で判断するのは、非常に難しいです。一見、整地されていて地面が固く見えても、表面だけが転圧(押し固め)されていて、中はふわふわしている場合もあるため、目視や足踏みだけでは判断できません。
正確に判断するには、建築前に**スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)**などの地盤調査を行い、N値(地盤の強さを示す数値)を確認する必要があります。
目安としては以下の通りです:
N値 | 評価 | 対応策 |
---|---|---|
0〜2 | 非常に軟弱 | 地盤改良必須/杭工法推奨 |
3〜5 | 軟弱 | 柱状改良などで対応可 |
6以上 | 良好 | 状況により通常基礎でも可 |
軟弱地盤に建てる場合の注意点
軟弱地盤だからといって、家が建てられないわけではありません。重要なのは、「その土地に合った対策を事前に行うこと」です。
- 地盤調査で軟弱地盤と診断された場合は、柱状改良・表層改良・鋼管杭工法などの地盤改良を行う
- 地盤に適した**基礎形状(ベタ基礎や杭基礎)**を選ぶ
- 埋設物の除去や、雨水の排水対策も忘れずに行う
これらの対策をしっかり取れば、軟弱地盤でも安全で快適な住宅を建てることは可能です。不同沈下を防ぐうえで、**土地の過去を知ること(地歴調査)**は非常に重要です。
見た目がきれいな宅地でも、昔は沼だったり、川だったりすることもあります。
そういった地盤に対して、適切な調査と補強を怠ると、後に大きな後悔につながります。
「見えない地面の中」が、家の未来を左右する――。
そんな意識を持って、慎重に土地と向き合うことが、不同沈下を防ぐ第一歩です。
地盤調査を行わずに建築してしまった
住宅の設計や建築において、「地盤調査」は決して省略してはいけない最初のステップです。しかし、かつてはコスト削減や知識不足を理由に、地盤調査を行わずに家を建ててしまうケースが少なくありませんでした。
地盤調査を省略した場合、どんなリスクがあるのか?
その結果、実際にどのような不同沈下が起きているのか?
ここでは、その背景と具体的な例を交えて詳しく説明します。
地盤調査とは何をするもの?
地盤調査とは、建物を建てる前に、その土地の地盤が建物の荷重に耐えられるかどうかを調べることです。一般的な戸建て住宅では「スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)(現在は、スクリューウェイト試験という)」という簡易な方法が主流で、以下の情報が得られます。
- 地盤の硬さ(地耐力)
- 土の種類(粘土・砂・シルトなど)
- 地盤の層構造
- 地盤改良の必要性の有無
この調査により、「この土地にはどのような基礎工法が適しているか」が明確になり、不同沈下のリスクを事前に把握することができます。
なぜ地盤調査をしないと危ないのか?
地盤の強さは、見た目ではまったく分かりません。舗装され、整地されているように見えても、表面の数十センチだけ固く、その下が非常に軟弱な地盤だったということはよくあります。
もし地盤調査をせずに、「ここは平らで硬そうだから大丈夫」と感覚的に判断して基礎工事を行ってしまうと、次のような問題が発生します。
1.不適切な基礎が選ばれる
たとえば、本来なら「ベタ基礎」や「杭基礎」が必要な土地に、「布基礎」が選ばれてしまうと、建物の荷重が偏って沈下しやすくなります。
2.地盤改良を行わずに着工してしまう
地盤が明らかに弱いのに、改良工事をせずにそのまま基礎をつくってしまうと、建物完成後、数年以内に傾きが現れる可能性があります。
3.責任の所在が不明確になる
後から不同沈下が発生しても、「最初に地盤調査をしなかったため、施工会社が責任を負いにくい」という状況にもなりかねません。
造成や盛土によってつくられた人工地盤
家が建っている土地は、もともと自然のままの地盤であるとは限りません。近年の住宅地では、もとの山・谷・田畑などを整地して、建物が建てられるように「造成」された人工的な地盤が多く使われています。
その中でも特に注意が必要なのが、「盛土(もりど)」です。これは、低い土地を埋めて高くし、平らな宅地にするために土を盛ったものですが、見た目がきれいでも中身に問題を抱えているケースが多く、不同沈下のリスクが非常に高い人工地盤の一種です。
盛土とは?
盛土とは、次のようなケースで行われます:
- 斜面を平坦にするために、谷側を土で埋める
- 段差のある土地を均すために、一方を盛り上げる
- 湿地や低地を埋めて宅地に変える
片側が切土(山を削った部分)、もう片側が盛土(谷を埋めた部分)で構成される住宅地
一見整地されていても、盛土部分は以下のような問題を抱えやすいのです。
盛土地盤のリスクとは?
盛土地盤には、様々なリスクがあります。それを説明します。
① 十分に締め固められていないことがある
盛土は、重機で土を少しずつ入れて、その都度しっかりと押し固め(転圧)していく必要があります。しかし、工期を急いだり施工精度が低いと、土の中に空隙が残り、後から徐々に沈下する「圧密沈下」が発生します。
とくに造成直後に建築される住宅は、まだ地盤が安定していない状態のまま建てられるため、不同沈下のリスクが極めて高くなります。
② 土の種類がバラバラで均質でない
盛土には、近隣の掘削残土や建設残土などが使われることが多く、粒度や締まり具合が一定ではないことが多いです。そのため、一部だけ柔らかく、そこだけ沈んでしまうといった不同沈下が生じやすくなります。
③ 盛土下に「湿地」や「有機質土」が残っている場合も
特に田んぼ跡地などでは、湿った泥状の腐植層(有機質土)が盛土の下に残っているケースがあり、長期間にわたって沈下する可能性があります。表面は乾いていても、地下ではじわじわと沈下や変形が進行していることがあるのです。
実際にあった事例
ある宅地造成地で、盛土と切土が組み合わされた敷地に3軒の住宅が建てられました。
そのうち、盛土側に建った1軒の家だけが数年後に不同沈下を起こし、リビングの床が3cm以上傾いたという事例があります。
原因を調査したところ、盛土部分の転圧が不十分で、地下には不均質な土が層状に堆積しており、雨水が入り込みやすい状態になっていました。
建て主は、造成業者や建設会社と補償をめぐる交渉に時間を取られ、補修費も300万円以上かかることになりました。
盛土地盤での注意点と対策
✅ 建てる前に地盤調査を必ず行う
盛土かどうかは、土地の見た目ではわかりません。
必ず 地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験など) を実施して、N値や地層構成を確認しましょう。
✅ 地歴(その土地の過去)を調べる
- 昔は田んぼ・池・谷地だった場所かどうか
- 古地図やハザードマップ、航空写真、登記簿などから調査可能
✅ 地盤改良工事の実施
調査で弱い地盤と判明したら、表層改良・柱状改良・鋼管杭工法などを選択し、建物の荷重を確実に支える地盤をつくりましょう。
✅ 造成後すぐに建てず、時間をおく選択も
造成直後は、まだ地盤が落ち着いていないことがあります。
1〜2年ほど観察期間を設けてから建築することで、沈下の兆候を見極めるという方法もあります。
まとめ:盛土は「人工の地盤」ゆえに慎重に!
盛土による人工地盤は、必ずしも危険な土地というわけではありません。
正しく施工され、適切な地盤調査と補強が行われていれば、安全な住まいは十分可能です。
ただし、「人工的に造られた地盤である」という事実をしっかりと理解し、見えない地下にこそ慎重になる意識を持つことが、不同沈下を未然に防ぐ最大のポイントです。
埋設物(ガラ・浄化槽・木の根など)の上に建てた
古い建物の解体跡や不適切な埋め戻し(土の中にゴミや瓦礫が残った状態)に建てられると、その部分だけ沈みやすくなる。
排水処理が不十分で地盤がゆるむ
雨水や排水管の漏水が地中に染み込み、地盤が柔らかくなって沈下するケース。特に排水管の逆勾配や破損は要注意。
基礎の設計ミス・施工不良
建物の荷重に対して基礎が弱かったり、施工不良(配筋不足・コンクリート強度不足)があると、構造上の偏りが生じて沈下する。
擁壁の裏側の埋め戻しが不十分
擁壁や境界の裏側の土がしっかり締め固められていないと、雨水や地圧により沈下や崩れが起き、建物が引っ張られて傾くことも。
地下水の汲み上げや地下構造物の掘削
地域の地下水位が下がると地盤が乾燥・圧縮されて沈下が進む。近隣での地下工事(マンション建設など)も原因になりうる。
近隣の大型工事や道路工事の影響
隣の土地で杭打ち・掘削・コンクリート打設などが行われると、地盤に緩みや変位が生じて自宅に不同沈下が起きる場合がある。
交通振動や地震などの長期的な揺れの蓄積
国道沿い・線路沿い・空港近くなどでは、振動の影響で微小なゆるみが蓄積し、数年かけて地盤沈下が進行することがある。
これらの原因は単独で起きるだけでなく、複合的に絡み合って不同沈下を引き起こすことが多いです。
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