遣り方の確認

 建物の基礎工事を始める前に行う「遣り方(やりかた)」は、建物の正確な位置と高さを現場に示すための重要な作業です。施主として、この遣り方が適切に行われているか確認することは、工事全体の品質と進行に直結します。この記事では、遣り方とは何か、何のために行うのか、施主が確認すべきポイントについて詳しく説明します。

遣り方とは?

 遣り方は、建物の基礎工事を始める前に、設計図通りに建物の位置と高さを現場に示すために行われる作業です。これにより、基礎工事が正確に行われる基準が設けられます。遣り方の手順は以下の通りです:

  1. 基準線の設定:
    • 建物の四隅に基準線を設定します。基準線は、建物の外周や中心線を示すものです。
  2. 杭の設置:
    • 基準線の交点に杭を打ち込みます。これらの杭は、建物の四隅や重要な位置を示すために使われます。
  3. 貫(ぬき)の設置:
    • 杭の上部に水平な貫を設置します。貫は基準線を示し、高さの基準点としても機能します。
  4. 糸の張り渡し:
    • 貫に糸を張り渡して、建物の外周線や中心線を正確に示します。糸の高さを測定して、基礎の高さも確認します。

遣り方を行う目的

遣り方を行う主な目的は以下の通りです:

  1. 建物の位置確認:
    • 設計図通りの位置に建物が建てられるよう、現場に基準線を設定します。
  2. 高さの設定:
    • 建物全体の水平を確保するために、基礎の高さを設定します。
  3. 基礎工事の準備:
    • 正確な位置と高さが確認されることで、基礎工事がスムーズに進むようになります。

施主が確認すべきポイント

遣り方が行われた後、施主として確認すべきポイントを以下にまとめます:

  1. 基準線の位置確認
    • 四隅の位置: 設計図通りに杭が打ち込まれているか確認します。設計図を持参し、現場での位置が一致しているか慎重にチェックします。
    • 外周ライン: 張られた糸が建物の外周ラインを正確に示しているかを確認します。糸がまっすぐ張られているか、曲がっていないかを目視で確認します。
  2. 敷地内の位置確認
    • 境界線との距離: 建物が敷地の境界線から適切な距離を保っているか確認します。隣接する建物や道路からの距離も合わせてチェックします。
    • 法的制限の確認: 建物が建築基準法や地域の規制に従った位置に配置されているか確認します。特にセットバックや建ぺい率などの規制に注意しましょう。
  3. 高さの基準点確認
    • 基礎の高さ: 建物の基礎の高さが適切に設定されているか確認します。貫に張られた糸の高さを測定し、設計図の高さと一致しているか確認します。
  4. 施工者および設計監理者とのコミュニケーション
    • 質問と確認: 遣り方の確認中に疑問点があれば、設計監理者や施工者に質問しましょう。どんな小さな疑問でもクリアにしておくことが大切です。
    • 記録の保持: 遣り方の状況を写真やメモで記録しておきます。後で再確認する際に役立ちます。

変更が必要な場合の対処方法

  1. 設計図との不一致
    • 対処法: 設計図と遣り方が一致していない場合、設計監理者にすぐに報告し、現場での再確認を行います。設計監理者と現場監督が協力して、設計図通りに修正します。
  2. 敷地境界との不適切な距離
    • 対処法: 建物が境界線や隣接建物と適切な距離を保っていない場合、設計監理者に相談し、法的制限を確認します。必要に応じて、建物の位置を調整します。
  3. 高さの設定ミス
    • 対処法: 基礎の高さが適切に設定されていない場合、設計監理者に報告し、高さの基準点を再確認します。地盤の状況や水はけも考慮して調整します。
  4. 重要な部分の配置ミス
    • 対処法: エントランスや駐車場、庭などの配置が希望通りでない場合、設計監理者に詳細な要望を伝え、設計図の修正を依頼します。現場での再確認を行い、正確に反映させます。

変更に伴うリスクと対処法

変更が必要な場合、大きな変更であれば以下のリスクが発生することがあります:

  1. 費用の発生
    • 対処法: 変更に伴う追加費用について、事前に見積もりを依頼し、予算にどの程度影響するかを確認します。費用対効果を考慮して、変更の可否を判断します。
  2. 図面の書き換え
    • 対処法: 設計図の変更が必要な場合、設計監理者に依頼して新しい図面を作成します。この際、変更点を明確にしておくことが重要です。
  3. 確認申請のやり直し
    • 対処法: 変更内容によっては確認申請のやり直しが必要になることがあります。再申請に伴う手続きや時間を事前に確認し、工期にどのような影響が出るかを考慮します。
  4. 工期の見直し
    • 対処法: 変更により工期が延びる可能性があります。施工者と協議し、新しい工期スケジュールを設定し、施主としての予定と調整します。

現場訪問時の注意点

  • 安全対策を守る: 現場では必ずヘルメットや安全靴を着用し、安全対策を守りましょう。危険なエリアには立ち入らないようにします。
  • 事前の連絡: 遣り方の確認に行く前に、設計監理者や施工者に事前に連絡し、訪問の時間や日程を調整しておきます。

最後に

 遣り方は、建物の位置と高さを正確に設定するための非常に重要な作業です。施工者、設計監理者、施主が協力して確認作業を行うことで、工事の進行がスムーズになり、建物が設計通りに完成することを確保します。変更が必要な場合も、適切な対処法を講じることでリスクを最小限に抑えることができます。細心の注意を払いながら確認作業を行い、理想の住まいの実現に向けて一歩一歩進んでいきましょう。

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