もしも、粗悪な基礎をつくってしまったら

 住宅の基礎は、建物全体の安全性と耐久性に直結する重要な部分です。本来、粗悪な基礎(欠陥のある基礎)をつくらないために、事前に十分に打合せをし、施工前に施工計画をチェックし、施工中も施工状況をしっかりとチェックしなければなりません。しかしながら、それでも何らかの原因で粗悪な基礎ができてしまうことがあります。そうなった場合、すぐに工事を止めて対策をしなければなりません。この記事では、基礎工事で実際に起きる具体的な欠陥について、状況と原因、放置するとどうなるのか、対処法を考察します。

ジャンカ

状況

 コンクリートの表面や内部に粗い空洞や気泡が生じ、コンクリートの密度が不均一な状態です。表面には、小さな穴や凹凸が多数見られ、場合によっては鉄筋が露出していることもあります。ジャンカは、施工中に気づかれることが少なく、完成後に発見されることが多いため、特に注意が必要です。

原因

 ジャンカの主な原因は、コンクリート打設時の施工不良です。具体的には、コンクリートの流動性が不足していた場合や、バイブレーションを十分に行わなかった場合に発生します。また、型枠の密閉性が不十分な場合や、コンクリートの投入が速すぎたり、偏っていたりすることも原因となります。コンクリートミキサーの不適切な使用や、ミキサー車から型枠までの距離が長すぎることも影響します。

放置するとどうなるのか

 ジャンカを放置すると、コンクリートの強度が低下し、耐久性が損なわれます。特に鉄筋が露出している場合、湿気や酸素が鉄筋に直接触れることで錆びが進行し、鉄筋コンクリートの性能が大幅に低下します。これにより、地震や強風などの外力に対して脆弱になり、建物の安全性が著しく低下します。最悪の場合、基礎全体の劣化が進行し、補修が困難になることもあります。

対処法

 ジャンカが発生した場合、まずは現場の状況を詳しく確認し、修復が可能かどうかを評価します。軽度のジャンカであれば、専用の補修材を用いて表面を埋め、平滑に仕上げます。補修材には、エポキシ樹脂やポリマーセメントモルタルなどを使用します。中度以上のジャンカの場合は、問題部分を切削して新たにコンクリートを打設することが必要です。この際、適切なバイブレーションと養生を行い、再度ジャンカが発生しないようにします。

土台が基礎からはみ出る

状況

 建物の土台部分が基礎からはみ出している状態で、設計図と実際の施工が一致していないことを示しています。はみ出しは、基礎の端部に集中することが多く、見た目にも確認しやすい欠陥です。特に基礎と土台の接合部で隙間が生じている場合、構造的な不安定さが懸念されます。

原因

 基礎の型枠設置時における誤差や施工中の測量ミスが主な原因です。具体的には、施工図面の確認不足や、型枠がずれたままコンクリートを打設した場合、基礎の形状が変形し、土台が正しい位置に配置されないことがあります。また、施工中の現場管理が不十分であると、職人の技量不足や施工ミスによっても発生します。

放置するとどうなるのか

 基礎から土台がはみ出していると、建物の重心がずれてしまい、構造の安定性が損なわれます。この状態では、地震や強風による揺れに対する耐性が低下し、建物が傾いたり、最悪の場合には崩壊する危険性があります。また、はみ出した部分が外部環境にさらされることで、腐食や劣化が進行することもあります。

対処法

 基礎と土台の位置を再確認し、土台の位置を調整することで修正を試みます。具体的には、土台の固定具を調整して正しい位置に戻すか、必要に応じて土台自体を再配置します。基礎部分の拡張工事が必要な場合は、設計者と協議し、追加工事を計画します。施工管理を徹底し、再発防止のための教育や訓練を実施します。

アンカーボルトが芯から外れている

状況

 アンカーボルトが設計位置からずれており、ボルトが芯から外れているため、構造体との接続が不十分です。通常、ボルトは基礎と建物を固定する重要な役割を果たしますが、この状態では接続強度が不足しています。

原因

 アンカーボルトの固定が不十分で、コンクリート打設時に位置がずれてしまったことが原因です。施工中の監督不足や測量ミス、施工者の不注意も影響します。また、コンクリート打設中にボルトが動いてしまうこともよくある原因です。

放置するとどうなるのか

 ボルトが芯から外れていると、構造体の固定が弱くなり、建物全体の耐震性能に悪影響を及ぼします。地震や強風の際にボルトが抜けたり、接続部分から破損が進む可能性があります。このような場合、建物の一部または全体が崩壊するリスクが高まります。

対処法

 アンカーボルトのずれを修正するために、特殊な接合具や補強金具を用いて位置を調整します。場合によっては、ボルトを再配置するために基礎を部分的に再施工することも検討します。再施工の際には、ボルトの位置をしっかりと固定し、打設中に動かないようにテンプレートや型枠を使用します。

アンカーボルトの高さの誤り

状況

 アンカーボルトの高さが設計図と異なり、予定よりも高かったり低かったりする状態です。これにより、建物の構造体が正しい位置に固定できなくなります。

原因

 ボルトの固定が不十分、あるいは測量ミスにより高さが狂ってしまうことがあります。施工中の管理不足や、ボルトを固定する際の手順ミスも原因となります。

放置するとどうなるのか

 高さが正確でないと、接合される構造体が正しく設置できず、耐震性や安定性に問題が生じます。特に高さのズレは、建物の垂直荷重に影響を与え、構造的な不均一性をもたらします。

対処法

 必要に応じてボルトの高さを再調整し、適切な位置に固定します。調整が難しい場合は、ボルトを抜いて再設置することも検討します。また、建物の構造に応じて調整プレートやスペーサーを使用して高さを調節することもあります。

コンクリートひび割れ(クラック)

状況

 コンクリートにひび割れが生じている状態です。表面に細かいクラックが入ることもあれば、深刻な場合は基礎全体に影響する大きな亀裂が生じます。

原因

 乾燥収縮、施工不良、温度変化、地盤沈下、不適切な養生など様々な原因が考えられます。特に施工時に適切な水分管理や養生を行わなかった場合に発生しやすいです。また、コンクリートの配合ミスや、急激な温度変化もひび割れの原因となります。

放置するとどうなるのか

 ひび割れを放置すると、基礎全体の強度が低下し、水分の浸入による劣化が進行します。特に鉄筋が錆びると構造全体に悪影響を及ぼし、基礎の耐久性が著しく低下します。浸水によってさらにひび割れが拡大するリスクもあります。

対処法

 ひび割れの程度に応じて、補修材を用いたクラックの修復を行います。軽度のひび割れであれば、エポキシ樹脂やポリマーセメントを用いて補修します。重大なひび割れの場合は、基礎の補強工事を行うことが必要です。さらに、原因を分析し、再発防止策を講じます。

基礎の位置が間違っている

状況

 基礎が設計図とは異なる位置に配置されている状態です。基礎全体が設計よりもずれてしまい、建物全体の配置が狂っています。

原因

 墨出し作業の不備、測量ミス、施工中の確認不足が主な原因です。特に、初期の墨出し段階での確認が甘いと、施工の進行に伴い位置のズレが顕在化します。

放置するとどうなるのか

 建物全体の位置がずれることで、敷地境界線の侵害や、隣接建物との干渉が発生します。また、設計上の荷重バランスが崩れ、建物の安全性や機能性が損なわれる可能性があります。また、基礎の位置がずれることにより、斜線の位置もずれて、高さ制限にひっかかる場合があり、そうなると建築基準法に適合しなくなります。

対処法

 基礎の位置を再確認し、必要に応じて修正工事を行います。軽微なズレであれば、構造補強を行うことで対応できますが、大幅なズレの場合は基礎を再構築する必要があります。施工計画を見直し、徹底した測量と管理を行うことで再発を防止します。

まとめ

 粗悪な基礎ができてしまった場合には、迅速かつ適切な対策を講じることが重要です。その問題が重大なのか、そうでないのかを適切に判断し、重大な問題であれば、適切な処置を迅速に講じなければなりません。場合によっては、工程の見直し、契約の見直し、設計変更も必要となります。施工前の計画と施工中の管理を徹底し、問題が発生した際には現場監督、設計監理者と連携して対応することが求められます。適切な対策を講じることで、建物の安全性と耐久性を確保することができます。

タイトルとURLをコピーしました