引き渡し時に必要な書類・図面

 家の建築が完了し、いよいよ引き渡しの時がやってきます。引き渡し時には、家の所有者である施主が施工者から多くの書類や図面を受け取ります。これらの書類は、今後のメンテナンスやトラブル対応、さらには将来の建物の売却時においても非常に重要な役割を果たします。ここでは、引き渡し時に必要な主な図面(竣工図)や書類について、それぞれ詳しく解説します。

図面(竣工図)に関して

 建物が完成した際に、実際に施工された内容を反映した図面のことを竣工図といいます。竣工図は、設計段階で作成された図面と異なり、施工中に生じた変更や修正がすべて反映されているため、完成後の建物の正確な状態を示しています。これにより、将来的なメンテナンスやリフォーム時に非常に重要な資料となります。竣工図には以下のような図面が含まれます。

  1. 工事概要書:工事概要書は、建築工事の全体像を把握するための資料です。使用される材料や工法、各工程の概要が記載されており、施主が工事の内容を理解するために重要な書類です。
  2. 仕様書:仕様書には、建物の仕様が詳細に記載されています。具体的には、使用される材料の種類、設備の内容、仕上げ方法などが含まれます。施工者との間で合意した内容を確認するための基準となります。
  3. 仕上げ表:仕上げ表は、各部屋や外装の仕上げ材料や色、質感などが一覧になっている表です。壁紙の種類や床材、外壁の仕上げなどが記載されており、完成後に工事が計画通りに行われたかを確認する際に使用されます。
  4. 配置図:配置図は、建物が敷地内でどのように配置されているかを示す図面です。建物の位置、駐車場や庭などの配置が記載され、敷地に対する建物の位置関係を確認するために重要です。
  5. 平面図:平面図は、建物の各階の間取りを示した図面です。部屋の配置や壁の位置、窓やドアの位置が詳細に描かれており、建物の内部レイアウトを理解するのに役立ちます。
  6. 立面図:立面図は、建物を正面、背面、側面から見た図面です。建物の高さや外観、窓やドアの配置がわかりやすく描かれており、外観のデザインを確認する際に使用されます。
  7. 断面図:断面図は、建物の内部構造を示す図面で、建物の断面を切り取って見た状態が描かれています。階高や床、天井の構造、断熱材の配置などを確認することができます。
  8. 矩計図(かなばかりず):矩計図は、建物の断面をより詳細に描いた図面です。柱や梁の寸法、階段や屋根の形状など、工事の精度を確認するために使われます。
  9. シックハウス図:シックハウス図は、建物の換気計画や使用する建材の仕様を示した図面で、シックハウス症候群を防止するために作成されます。健康に配慮した設計であることを確認するために使用されます。
  10. 構造関連図:構造関連図は、建物の基礎や柱、梁などの構造部分に関する図面です。建物の安全性や耐震性を確認するために使用されます。
  11. 給排水ガス設備図:給排水ガス設備図は、給排水やガスの配管経路を示す図面です。将来的なメンテナンスや設備の修理時に役立ちます。
  12. 電気設備図:電気設備図は、電気配線やコンセント、照明の位置を示す図面です。電気設備の配置を確認し、工事が適切に行われたかを確認するために使用されます。

書類に関して

 引き渡し時には、竣工図とともに、様々な書類が必要です。これらの書類も入居後、何かトラブルが生じたとき、後に増改築、リフォームされる際、売却される際にも必ず、必要となる重要な書類です。これらの書類は、建物が存続する限りにおいては、大切に保管しておかなければなりません。以下にどのような書類が必要なのかを説明します。

引渡し書 (Handover Document)

 引渡し書は、建物の引き渡しが完了したことを正式に確認するための重要な書類です。この書類は、施主(家の所有者)と施工者(建築会社や工務店)の双方が署名・捺印を行い、引き渡しの日時や引き渡される物件の詳細、引き渡しに関する特記事項が記載されます。具体的な内容は以下のようになります:

  • 物件の特定情報: 建物の住所や建築物の名称、引き渡される土地の範囲など、物件を特定するための情報が記載されます。
  • 引き渡しの日時: 引き渡しが正式に行われた日時が明記されます。これにより、施主の所有権が正式に確定する時点を明示します。
  • 工事の完了確認: 工事がすべて計画通りに完了したことを確認し、双方が同意した旨を記載します。完了していない部分がある場合、その内容や対応方法についても明記されることがあります。
  • 付帯設備の確認: 引き渡し時に物件に付帯している設備(エアコン、給湯器など)が正しく設置され、動作していることの確認が記載されます。
  • 引き渡しに関する特記事項: 引き渡し時点での未解決事項や補修が必要な箇所について、今後の対応方法や期限が記載されることがあります。
  • 双方の署名・捺印: 施主と施工者の両者が、上記の内容に同意したことを示すための署名と捺印が求められます。

建築確認申請書

 建築確認申請書は、建築計画が法令に適合していることを確認するために地方自治体に提出する書類です。内容は以下の通りです:

  • 建築計画の概要: 建物の規模、用途、構造、配置などが記載されます。
  • 設計図書: 平面図や立面図など、建物の設計に関する図面が添付されます。
  • 構造計算書: 建物の構造が安全であることを証明するための計算結果が含まれます。
  • 防火対策: 防火区域内の場合、防火設備や耐火構造の説明が記載されます。

中間検査合格証

中間検査合格証は、工事の途中で行われる検査に合格したことを示す書類です。具体的には以下の点が記載されています:

  • 検査日: 中間検査が行われた日付が記載されます。
  • 検査対象: 検査対象となった工事の内容が記載されています(例:基礎工事、構造工事)。
  • 合格判定: 検査の結果、工事が基準を満たしていることが確認され、合格となった旨が記載されます。

検査済証

検査済証は、建物がすべての基準に適合して完成したことを示す証明書です。以下の内容が含まれます:

  • 検査番号: 申請に対して発行された検査番号が記載されます。
  • 検査項目: 行われた検査の内容が詳細に記載されます。
  • 合格判定: 検査結果が合格であることを示す記載があります。

地盤調査報告書

地盤調査報告書は、建築予定地の地盤の状態を調査し、その結果をまとめた報告書です。主な内容は以下の通りです:

  • 調査方法: ボーリング調査やスウェーデン式サウンディング試験など、使用した調査方法が記載されます。
  • 地盤の特性: 地層の構成、地下水位、地盤の硬さなど、調査結果が詳細に記載されます。
  • 基礎工事の推奨事項: 調査結果に基づき、適切な基礎工法(杭基礎、ベタ基礎など)が提案されます。

各工事施工写真

各工事施工写真は、工事の進行状況を記録した写真をまとめたものです。具体的には以下の内容が含まれます:

  • 基礎工事: 基礎の配筋やコンクリート打設の様子が記録されています。
  • 躯体工事: 柱、梁、屋根の構造部分の施工過程が記録されています。
  • 防水工事:防水工事の状況が記録されています。
  • 内外装下地工事:内外装の下地の状況が記録されています。
  • 内外装仕上げ工事: 内外装の仕上げの様子が記録されます。
  • 設備工事: 電気配線や給排水設備の施工状況が記録されています。

工事監理報告書

工事監理報告書は、工事監理者が工事の進捗状況を確認し、記録した報告書です。内容は以下の通りです:

  • 工事の進行状況: 各工事段階での進行状況が詳細に記録されます。
  • 問題点と対応: 工事中に発見された問題点や、その対応策が記載されます。
  • 監理者のコメント: 工事の品質や進捗に関する監理者の意見やコメントが含まれます。

設備機器保証書

設備機器保証書は、建物に設置された設備や機器の保証を示す書類です。具体的な内容は以下の通りです:

  • 保証対象: 保証の対象となる設備や機器の名称、型番などが記載されています。
  • 保証期間: 保証が適用される期間が明記されています。
  • 保証内容: 故障や不具合が発生した際に無料で修理または交換される範囲が記載されています。

設備機器取扱説明書

 設備機器取扱説明書は、設置された設備や機器の正しい使用方法を説明する書類です。以下の情報が含まれます:

  • 操作方法: 各機器の操作手順が詳細に説明されています。
  • メンテナンス方法: 機器を長く安全に使用するためのメンテナンス方法が記載されています。
  • トラブルシューティング: トラブルが発生した際の対処法が説明されています。

アフターサービス規準

 アフターサービス規準は、引き渡し後のアフターサービスに関する基準や対応内容を示す書類です。具体的には以下の内容が含まれます:

  • 補修の範囲: 補修対象となる工事部分や、補修の範囲が記載されています。
  • 対応期間: アフターサービスの対象となる期間が明記されています。
  • 連絡先: アフターサービスを受けるための連絡先が記載されています。

各種保証書(防水保証書、白蟻保証書など)

 各種保証書は、防水処理や白蟻対策など特定の工事に対する保証を示す書類です。以下の内容が記載されます:

  • 保証対象: 保証の対象となる工事や処置が明記されています。
  • 保証期間: 保証が適用される期間が記載されています。
  • 保証内容: 不具合が発生した際に補修や再処理が行われる範囲が記載されています。

住宅瑕疵担保責任保険証券

 住宅瑕疵担保責任保険証券は、新築住宅における瑕疵(欠陥)に対する保険を示す証券です。以下の内容が含まれます:

  • 保険の対象: 保険が適用される瑕疵や欠陥の範囲が記載されています。
  • 保険期間: 保険が適用される期間が明記されています。
  • 保険金額: 瑕疵が発生した場合に支払われる保険金の上限が記載されています。

緊急連絡先一覧

緊急連絡先一覧は、建物に関する緊急時の連絡先をまとめたリストです。以下の内容が含まれます:

  • 施工者の連絡先: 建物の施工を担当した会社や担当者の連絡先が記載されています。
  • 設備業者の連絡先: 給排水設備、電気設備、ガス設備などを担当した業者の連絡先が記載されています。
  • 管理会社の連絡先: 分譲マンションなどの場合、管理会社の連絡先が記載されています。

 これらの書類は、引き渡し時に施主が受け取ることで、建物に関する全体像を理解し、今後のメンテナンスやトラブル対応に役立てることができます。また、これらの書類を適切に保管しておくことで、将来的な建物の売却時や保険申請時にも重要な資料となります。

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