腐朽菌と白蟻の違いと関係性

白蟻から家を守るために知っておきたい基礎知識
腐朽菌と白蟻の違いと関係性

見えない脅威は単独では来ない。連携して家を蝕む「静かな侵入者たち」~

 木造住宅を脅かす代表的な生物的劣化要因に、「白蟻(しろあり)」と「腐朽菌(ふきゅうきん)」があります。このふたつは、それぞれ異なる種類の生物ですが、発生しやすい環境が共通しており、互いに密接に関係し合って被害を拡大するという特徴を持ちます。

腐朽菌とは?

 腐朽菌とは、木材を分解・腐らせる菌類(カビやキノコの仲間)で、湿気の多い環境に繁殖します。
見た目にはカビやシミ、あるいはきのこ状のものが木材表面に現れることがあります。

腐朽菌の主な種類

種類特徴
褐色腐朽菌木材のセルロースを分解し、赤茶色に変色。強度低下が大きい。
白色腐朽菌リグニンとセルロースを分解。白っぽく繊維質に変わる。
軟腐菌土壌中や非常に湿潤な環境でも繁殖。構造の内部から腐朽が進行。

腐朽菌による被害は、「木材の色が変わる」「もろく崩れる」など、構造耐力を低下させることが最大の問題です。

白蟻とは?

 白蟻は、社会性昆虫で、木材のセルロースを主食とする生物です。木材の内部にトンネル(蟻道)を作りながら食害し、住宅に深刻なダメージを与えます。

日本で主に見られる白蟻

種類特徴
ヤマトシロアリ日本全国に分布。加害範囲が広く、床下に多く生息。湿潤環境を好む。
イエシロアリ九州・西日本中心。加害スピードが速く、乾材も湿らせて食害。
アメリカカンザイシロアリ乾燥材にも生息。輸入家具などから拡大中。日本ではやや珍しい。

白蟻の被害は、見えない場所で静かに進行し、気づいたときには柱の中が空洞になっていたというケースも少なくありません。

腐朽菌と白蟻の「違い」

比較項目腐朽菌白蟻
正体菌類(カビやキノコの仲間)昆虫(社会性をもつ)
好む環境高湿・適温・暗所高湿・適温・暗所(腐朽菌と類似)
加害の仕方木材を分解(腐らせる)木材を食害(物理的にかじる)
移動胞子で拡散巣から移動しながら活動
発見のしやすさカビ臭・変色・キノコなどで気づきやすい基本的に目に見えず気づきにくい

腐朽菌と白蟻の「関係性」

 このふたつの生物は、同時に発生することが多く、互いに影響し合って被害を拡大させるという特徴があります。

腐朽菌が先に発生するとどうなる?

  • 木材が柔らかく・もろくなる → 白蟻が食べやすくなる
  • 表面が湿る → 白蟻が侵入しやすくなる

つまり、腐朽菌が白蟻にとっての“食前の準備”をしてしまうのです。

白蟻が先に侵入するとどうなる?

  • 木材の表面に泥(蟻道)や湿気がつく → 局所的に湿度が上昇
  • 被害部位が傷つき → 菌が侵入しやすくなる

白蟻の活動が、腐朽菌が繁殖しやすい環境を作り出すという構図になります。

両者を同時に防ぐために重要なポイント

対策内容
床下・壁内の通気・乾燥湿気をこもらせない構造・換気計画
雨漏り・結露対策雨仕舞・断熱・気密を適切に施工
防腐・防蟻処理材の使用加圧注入材や薬剤処理を行うことで、同時対策が可能
定期点検の実施床下点検・含水率の測定・外観確認を定期的に行う

まとめ:片方だけでは不十分。両方を見据えた対策が必要

 白蟻と腐朽菌は別の生き物でありながら、「高湿・高温・暗所」という共通の環境を好み、互いに連携して家を蝕んでいきます。だからこそ、白蟻対策=腐朽菌対策。どちらか一方だけを見ていては、真の防除にはなりません。

静かに広がる“複合被害”を防ぐには、
設計・施工・維持管理のすべてで、 両者を意識した対応が必要不可欠なのです。

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