白蟻はすべての木材を均等に食べるわけではありません。彼らにも「好きな木」と「嫌いな木」があります。その中でも、スギ(杉)・マツ(松)・ラワンなどの木材は、建築用材として多く使われる一方で、白蟻にとって非常に好まれる“食材”となることが知られています。
白蟻が食いやすい木材の特徴とは?
白蟻にとっての“ごちそう”になる木材には共通点があります。
食われやすい木の特徴
特性 | 内容 |
---|---|
柔らかく加工しやすい | 白蟻にとっても食い進めやすく、蟻道が作りやすい |
乾燥していても栄養価が高い | セルロースやヘミセルロースが豊富で、白蟻の主食になる |
防蟻・防腐成分が少ない | 自然由来の樹脂や精油などをあまり含まず、白蟻にとって“無防備”な素材 |
代表的な「食われやすい」木材
スギ(杉)
- 日本の代表的な針葉樹で、内装・構造・下地など幅広く使用される
- 加工性が良く、香りも好まれるが、白蟻にとっても非常に食べやすい
- 特に地面に近い部分(床下・土台)への使用は要注意
- 耐久性を高めるには加圧注入や塗布による防蟻処理が必須
マツ(松)
- 赤松や唐松などが多く流通し、梁や垂木・造作材などに使われる
- スギよりはやや重硬だが、心材と辺材で耐蟻性に大きな差があり、特に辺材部分が狙われやすい
- 樹脂を多く含むが、それが防蟻性にはつながらない(逆に腐朽菌の繁殖源になることも)
ラワン(南洋材:メランチ、セラヤ等を含む)
- 合板の表面材や下地材、ドア枠・家具材に多用される
- 価格が安く柔らかいため、白蟻の食害に非常に弱い
- とくに屋外や湿気の多い場所では短期間で被害を受けやすい
- 防蟻・防腐処理なしでの使用は避けるべき
注意:同じ木でも部位によって耐久性が違う
白蟻は木の“辺材(外側の柔らかい部分)を好んで食べる傾向があります。逆に、“心材(中心部)”はやや食われにくいこともありますが、スギやマツのような木では、心材でも安心とは言えません。
「心材だから安全」とは限らず、使用箇所(湿気の多い場所)や処理の有無が重要です。
対策:食われやすい木材を使う場合の注意点
食われやすい木材を使うなということではありません。重要なのは使用場所と処理方法です。
安全に使うためのポイント
- 床下や地面に近い場所では、必ず防蟻処理されたものを使用
- カットや加工した場合は、切断面に薬剤を再処理
- 可能であればヒノキ・ヒバなどとの使い分けを行う
- 水まわり・結露が発生しやすい場所では、特に注意を
まとめ:安価・流通性と“食われやすさ”は裏表
スギやラワンは非常に使いやすい素材ですが、白蟻にとっても同じように「使いやすい素材」です。つまり、設計者や施工者が「当たり前に使っている木材」が、白蟻被害のきっかけになっていることも少なくありません。
素材を理解し、場所と処理を正しく選べば、
食われやすい木材でも“強い家”はつくれます。
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