木材は、種類によって白蟻への「耐性」に大きな差があります。スギやラワンのように白蟻に食われやすい木材がある一方で、ヒノキやイペのように白蟻がほとんど寄りつかない木材もあります。その違いは、「樹種」だけではなく、木の性質=内部構造や含まれる成分、密度や水分との関係にも密接に結びついています。本節では、木のもつ「物理的・化学的特性」と白蟻の侵食リスクの関係を詳しく解説します。
木の耐蟻性に影響する主な性質
分類 | 耐蟻性に影響する要素 | 解説 |
---|---|---|
化学的性質 | 精油・樹脂成分の有無 | 特定の香り成分(例:ヒノキチオール、フェノール類など)は白蟻を忌避する |
物理的性質 | 密度・硬さ | 木材が硬くて密であるほど、白蟻は噛み砕きにくく、蟻道も形成しづらい |
水分含有量 | 含水率の低さ | 乾燥している材は白蟻が好む環境を作りにくく、活動が制限される |
腐朽耐性 | 腐朽菌への耐性 | 白蟻は「腐りかけた木」が大好き。腐朽しにくい材は白蟻も寄りつかない |
精油や成分による「忌避効果」
いくつかの木材は、白蟻にとって不快な成分を自然に含んでいます。たとえば:
- ヒノキ・ヒバ:ヒノキチオール、ツヨイ香りのある精油成分 → 白蟻が近づかない
- チーク:天然の油分・フェノール類 → 白蟻に対する忌避効果が高い
- 青森ヒバ:ヒノキアスナロール → 抗菌・防腐・防蟻効果が非常に強い
このような「香りのある成分」を含む木材は、薬剤を使わずに防蟻効果が期待できることが知られています。
木の密度や硬さが防御力を決める
白蟻は硬い木を噛むのが苦手です。
密度と耐蟻性の関係
木材 | 比重(密度) | 備考 |
---|---|---|
イペ | 約0.9~1.1 | 非常に硬くて重く、白蟻がほとんど侵入できない |
チーク | 約0.7 | 加工性は落ちるが、密度・耐久性ともに優秀 |
スギ | 約0.4~0.45 | 軽く柔らかいため、白蟻にとっては噛みやすい素材 |
ラワン | 約0.3~0.5 | 軽量で柔らかく、被害を受けやすい代表例 |
密度が高い材ほど、白蟻による侵入・食害のリスクが低下します。
含水率と白蟻の活動環境
白蟻は水を必要とする昆虫です。そのため、木材に含まれる水分が多いほど、白蟻にとって快適な環境となります。
- 含水率が20%以上:白蟻が活発に活動しやすい
- 含水率が15%以下:白蟻の生存・活動が困難
「乾燥した木材」や「湿気が抜けやすい構造」は、白蟻にとって不向きな環境となります。
腐朽しにくい木は白蟻にも強い
白蟻は、腐朽菌によって“朽ちかけて柔らかくなった木”を好んで侵食します。つまり、木材が腐りにくい=白蟻が寄りつきにくいという関係性があります。
腐朽耐性のある木材の例:
- ヒノキ、ヒバ、イペ、チーク、ウリン など
まとめ:木の「性質」を知れば、白蟻対策はもっとスマートになる
木材はただの「構造材」や「仕上げ材」ではなく、それぞれが自然の防蟻性能を持つ個性ある素材です。「どの木を、どこに、どう使うか」によって、白蟻に強い建物は実現できます。
白蟻対策は、薬剤に頼る前に、素材の選定から始める。
木の性質を知ることが、建築の質を一段高めてくれます。
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