住宅を建てるときや増築・改築・大規模なリフォームを行う際に、建築確認申請が必要かどうかを判断するための大原則は、「構造」「規模」「建てる場所」の3つです。ここでは、それぞれについてわかりやすく説明していきます。
構造:木造か鉄骨造か、2階建てか3階建てかで分かれる
建築確認申請が必要かどうかは、構造(建物の造り)によって大きく異なります。たとえば以下のような線引きがあります。
- 木造の2階建て・延べ面積500㎡以下の住宅であれば、従来は「4号特例」により構造に関する審査が免除されていました(2025年法改正により縮小)。
- 鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)の住宅、また3階建て以上の建物は、そもそも「4号特例」適用外で、構造審査も含めた確認申請が必須です。
🔸ポイント:
2025年からは、木造2階建ての住宅でも構造計算が必要になるケースが増えるため、「木造だから申請不要」という時代は終わりつつあります。
構造】木造か非木造かで判断が分かれる
確認申請が必要かどうかの最初の分岐点は「構造」です。特に、木造かどうかが重要な判断基準となります。
【具体例】
・木造2階建て住宅の間取りを一部変更する場合、構造に影響を与えなければ申請は不要。
・しかし、RC(鉄筋コンクリート)造の住宅の壁を撤去する場合は、耐力壁である可能性が高く、構造安全性に直結するため、申請が必要になることが多いです。
また、木造であっても、3階建てや延べ面積が大きい場合は、「新2号建築物」として扱われることがあり、確認申請が必要になることがあります。
規模:床面積や高さによって審査の有無が決まる
建物の規模(大きさ)も、申請の要否を判断する大きな基準です。
例 | 確認申請の要否 |
---|---|
延べ床面積10㎡未満の物置や車庫 | 不要(※一部例外あり) |
延べ床面積10㎡以上の増築 | 必要 |
高さ13m超または軒の高さ9m超の建築物 | 基本的に必要 |
既存建物の一部改修で構造に影響のないリフォーム | 不要(ただし要確認) |
🔸注意点:
「10㎡」という広さの基準が一つの目安になります。6畳間が約10㎡なので、それより大きな増築は、ほぼ申請対象と考えてください。
延べ面積や階数が基準を超えると申請が必要に
建築基準法では、構造だけでなく建物の規模(床面積・階数)も重要な判断基準です。具体的には、以下のような線引きがあります。
【事例1:面積の拡張】
・木造平屋住宅のキッチンを4畳分拡張し、建物の延べ床面積が10㎡以上増える場合、増築として確認申請が必要になります。
・逆に、4㎡程度のサンルームを既存のウッドデッキの上に設置するだけで、固定せず取り外し可能な仕様であれば、申請不要と判断されることもあります(※自治体による差あり)。
【事例2:2階建てへの変更】
・平屋の屋根裏を利用して2階に改築する場合、構造強度の変更が必要なため、必ず確認申請が必要です。
・ロフトを設けるだけであれば、面積や天井高によっては「階」とは見なされず、申請不要の場合もあります。
場所:防火地域・準防火地域かどうかが重要
建てる場所(敷地の地域区分)によっても、確認申請が必要かどうかが変わります。
- 防火地域・準防火地域:小さな増築や物置の設置でも、確認申請が必要になるケースが多くなります。
- 市街化調整区域:基本的に建築が制限されており、申請前に都市計画法の許可が必要です。
- 用途地域なし(非線引き区域など):やや自由度は高いが、建築基準法や条例の規制は適用される。
🔸例外に注意!
たとえば、「自宅の敷地内に小屋を建てるだけだから申請不要」と思っていても、防火地域内であれば屋根や外壁の仕様制限があるため、確認申請が必要になります。
場所】防火地域・準防火地域では制限が厳しくなる
建築物の立地が「防火地域」または「準防火地域」にあるかどうかも、申請の必要性を判断するうえで重要なポイントです。
【具体例】
・準防火地域内で、窓の大きさを変えずサッシを取り替えるだけなら、原則申請不要。
・しかし、壁面の開口部(窓・ドア)を大きく変更したり、外壁材を防火仕様でないものに張り替えたりする場合には、防火性能の適合確認が必要になり、確認申請の対象になります。
【実際のケース】
・大阪市内の準防火地域で、外壁の張替えを予定していた施主が、非防火仕様のサイディングを選択したために、建築士から「申請が必要」と指摘され、急きょ仕様変更を余儀なくされた例があります。
見落とされやすい盲点ポイント
- 既存建物の一部改修でも、耐力壁を撤去・移動する場合は構造に影響が出るため申請対象となる可能性あり。
- 敷地に接道義務を満たしていないと、確認申請を出しても許可されない(=再建築不可物件)。
- 過去に無申請で建てられた部分があると、それに手を加える際に問題になることがある。
判断に迷ったら、専門家と事前に相談を
確認申請が必要かどうかを判断するには、次の3点を常に意識しましょう。
判断基準 | 例 | 申請の要否 |
---|---|---|
構造 | 鉄骨造、RC造など | 多くの場合、構造に手を加えると申請が必要 |
規模 | 10㎡以上の増築、階数変更 | 原則申請が必要 |
場所 | 防火・準防火地域 | 火災時の安全性確保のため制限あり |
これらを知らずに工事を進めてしまうと、後から「違反建築」として是正指導を受けるリスクもあります。まずは、「どの構造か」「どの程度の規模か」「どの地域か」を冷静に確認し、「これは申請が必要か?」と迷うようなケースでは、役所、建築士や工務店などの専門家に早めに相談することが最も確実です。
また、自治体によって判断の運用が微妙に異なる場合もあるため、最終的には所轄の建築主事(市区町村や特定行政庁)に確認するのがベストです。
目次