以下に、2025年7月の現時点から見た「4号特例縮小の影響と今後の見通し」、そして建築士が施主に伝えるべきアドバイスを盛り込んだ記事にリライトいたしました。
2025年4月に改正法施行となりました。今後の変化と、建築士が果たすべき役割を再確認しましょう。
「4号特例縮小」の運用開始。見えてきた現場の変化
2025年4月からスタートした「4号特例の縮小」。木造2階建ての住宅であっても、条件によっては構造審査や省エネ審査が必要になり、確認申請の難易度は確実に上がっています。現場ではすでに次のような変化が起きています。
- 確認申請に時間がかかるケースが増加
特に構造計算を伴う物件では、審査機関によるチェックが厳格化し、これまでよりも2〜3週間長くかかる例も見られています。 - 中小工務店の一部が対応に苦慮
計算ソフトや省エネ知識に乏しい工務店は、確認申請の対応を設計者任せにする傾向が強まり、設計事務所に過剰な業務負担がかかっている状況も。 - 行政からの是正指導が増加傾向
特例の内容を正しく理解しないまま旧来の運用をしてしまい、申請不備や軽微な違反を指摘される例も報告されています。
これから起こりうること【予測】
法施行から数ヶ月ではありますが、今後次のような流れが予測されます。
- 設計・確認申請業務の“外注化”が進む
工務店がすべてを抱えるのは難しくなり、構造設計者や省エネ適判者との連携が必須になります。 - 「確認申請を軽視していた工務店」からのトラブル増加
従来どおりの段取りで工事を進めようとした結果、着工遅れや是正命令を受け、施主とトラブルになるケースが増えると予想されます。 - 構造や省エネに強い設計者・施工者が選ばれる時代へ
消費者の目も徐々に変わり、「安心・安全・長寿命な家をつくれるかどうか」が選定基準になっていくでしょう。
建築士が施主に伝えておきたいこと【アドバイス】
このような社会的変化のなかで、建築士は施主に対して次の点をしっかり伝える必要があります。
「早めの準備が鍵」
確認申請にかかる時間は今後も増える可能性があります。着工予定の2〜3ヶ月前には設計を固め、申請準備に入るよう促しましょう。
「構造や省エネにも費用がかかる」
構造計算や省エネ適合性判定には追加の設計費や申請費がかかることを、明確に伝えておくことがトラブル防止につながります。
「申請は任せてOK。でも内容は一緒に確認を」
専門的な部分は建築士に任せて大丈夫ですが、「なぜこの壁が必要なのか」「この断熱性能にはどんな意味があるのか」など、施主にも最低限の理解を得ることが、信頼と満足につながります。
「ネットの情報ではなく、プロの話を聞いて」
最近ではSNSやブログなどで「確認申請は面倒で無駄」といった誤情報も流れています。施主が誤解する前に、建築士から正しい制度の意味と重要性を説明することが大切です。
まとめ:これからは「制度を味方にできる」設計者・施主が選ばれる時代
法改正は一見「面倒」や「制限」と捉えられがちですが、家を長く安心して住むための安全装置とも言えます。建築士にとっても、知識と対応力で差別化できるチャンス。制度を正しく理解し、施主との信頼関係を築くことが、これからの設計活動を支える基盤となるでしょう。
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