土地探しや中古住宅購入の際、多くの人はまず図面や資料を見ます。配置図、間取り図、測量図、用途地域図、ハザードマップ、物件概要書…。これらは確かに重要な情報です。しかし、図面や資料だけで判断することは、とても危険です。なぜなら、図面は「条件」を示すものであって、「暮らし」を示すものではないからです。
図面は“正確”だが、“体感”は教えてくれない
図面に書いてあることは基本的に正しい情報です。敷地面積、接道幅員、建ぺい率、容積率、方位…。しかし、そこから読み取れるのは“数値条件”だけです。
例えば、南向きと書いてあっても、
・隣家が迫っていて日当たりが悪い
・高低差があり、道路から丸見えになる
・周囲の建物配置により風が抜けない
といったことは、図面だけでは分かりません。土地は三次元の空間です。図面は二次元の情報です。その差を埋めるのが「現地確認」なのです。
写真や広告は“良い面”しか写さない
不動産広告の写真は、もっとも条件が良く見える角度で撮影されています。
✔ 広く見えるレンズ
✔ 電線が目立たない角度
✔ 日当たりが良い時間帯
これは決して不正ではありませんが、「実際の印象」とは違うことがあります。現地に立ったとき、
・思ったより狭い
・圧迫感がある
・車の音が大きい
と感じることは珍しくありません。
法規や資料も“解釈”が必要
用途地域、防火地域、日影規制、建築基準法上の道路条件など、法規資料も重要です。しかし、それらは専門知識がないと正しく読み解くことが難しいものです。例えば、
・セットバックが必要なのに気づかない
・道路種別の違いを理解していない
・再建築不可の可能性を見落とす
といったことも起こります。資料を“持っている”ことと、“理解している”ことは別なのです。
ハザードマップも万能ではない
最近は災害リスクを確認するためにハザードマップを見る方も増えています。これはとても良いことです。しかし、ハザードマップはあくまで「想定図」です。
✔ 実際の地盤の高低差
✔ 道路との関係
✔ 近隣の排水状況
までは反映されていません。現地で側溝の高さや周囲の地盤レベルを見ると、資料だけではわからなかったことが見えてきます。
“住む自分”を想像してみる
図面を見ながら、「ここに玄関があって、ここにリビングがあって…」と想像することは大切です。しかし、さらに一歩進めて、
・雨の日にどう感じるか
・夜道は明るいか
・ゴミ出しはしやすいか
・近隣の視線は気にならないか
といった生活の場面まで想像することが必要です。これらは図面には絶対に書いてありません。
建築士として伝えたいこと
これまで多くの相談を受けてきましたが、「図面・資料だけで判断してしまった」というケースは非常に多いです。そして後から、
・思ったより日当たりが悪い
・道路が使いにくい
・騒音が気になる
といった悩みにつながることがあります。土地や建物は、高額で、簡単にやり直せない買い物です。だからこそ、
✔ 図面は“参考資料”
✔ 現地は“最終判断材料”
という意識を持っていただきたいのです。
まとめ
図面や資料は、家づくりのスタートラインです。しかし、そこに書かれていない“空気感”こそが、暮らしの質を左右します。必ず現地に立ち、できれば時間帯を変えて確認し、五感で感じてください。土地は「情報」で選ぶものではなく、「体感」と「理解」で選ぶものです。それが、後悔しない住まいづくりの第一歩です。
