建築家のマスターベーションに気をつけろ:家づくりの落とし穴

 家を建てるという大きな決断をしたとき、多くの人は信頼できる建築家を探し、自分の理想の家を設計してもらうことを期待します。しかし、ここで注意が必要なのは、建築家が時として自分のデザインや美学を優先し、実際の機能や住み心地を犠牲にしてしまうことがあるという事実です。この現象を、一般的に「建築家のマスターベーション」と呼びます。

建築家が陥る自己満足の罠

 多くの建築家は、自分のデザインに対する信念が強く、雑誌やホームページを見て、依頼されたということであれば、クライアントから全面的な支持を得たと誤解することがあります。例えば、「このプランやデザインは既に承認されたものだから、自分の判断に間違いはない。自分の独断で計画することができる。」といった思い込みがあることがよくあります。建築家は、クライアントが素人であり、設計に関する詳細な説明を受けても、全てを完全に理解できているわけではないという現実を忘れることがあります。

 そのため、家が完成してからクライアントが「こんなものを望んでいたわけではない」と後悔するケースがあります。これは、デザイン優先で建築家の独断で進めた結果、機能が二の次にされ、実際の使用時に様々な不便や問題が生じることが原因です。

デザイン重視がもたらす弊害

 デザインに重きを置くあまり、以下のような問題が発生することがよくあります。例えば、

  • 水切りの省略による雨漏り:シャープな収まりを追求するために、屋根の水切りを省略した結果、メーカーの仕様を無視してしまい、その部分から雨漏りが発生する。
  • 内樋にすることによる雨漏り:通常、樋は、外部に設置するものです。しかし、建物をすっきりとシャープに見せたいという願望からデザインを優先にしたばかりに内樋にしたのはいいけれど、雨漏りを起こした。
  • 機能を無視した使い勝手の悪さ:美しいデザインを優先した結果、日常的な使い勝手が悪くなり、住む人にストレスを与える。
  • 開放感優先の結果、快適さを犠牲に:開放的な大空間の素敵に見える吹き抜けを作ったけれど、実際は寒さに悩まされる多い。

 さらに、悪質な建築家の中には、天井にトップライト(天窓)を取り入れることを強く推奨し、「このトップライトは、部屋の景観をよくする、これが居心地のよい空間だ、こうすれば解放感のある空間ができる。これが素晴らしいんだ」と自分で思い込み、トップライトも自分で独自にデザインし、これをクライアント、施工会社に押し付けたのはいいものの、結局は雨漏りが発生します。その際に、施工会社の技術力の不足を非難し、「偉大な建築家の作品は、この世にないものをつくり出すことに挑戦している。だから、この雨漏りも挑戦した結果であり、これが素晴らしことなのだ。」と言葉巧みに説得し、雨漏りを美的なものとして扱うという態度を取ることもあります。

 このような問題は、最終的にはクライアントが望んでいた家とは全く異なる結果を生み、場合によっては裁判沙汰にまで発展することもあります。

建築雑誌の罠に注意

 さらに、建築雑誌で取り上げられている建築家の作品を見て「素晴らしい」と思うことがあるかもしれません。しかし、実際にその建築家と話をしてみると、自分の考えやニーズと大きく異なることがわかることもあります。その場合には、断る勇気を持つことが非常に重要です。雑誌での評判や外見だけに惑わされず、自分自身が本当に納得できるかどうかを最優先に考えましょう。

自己顕示欲に囚われた建築家たち

 建築家の中には、「自分はすごいんだ。このような自分に惚れられたんだ」という過剰な自己評価を持ち、写真映りが良く、見栄えのいいデザインを世に発表し、さらに認められたいという強い欲求を抱いている者もいます。特に、こうした傾向は、これから業界でやっていこうとする駆け出しの若い建築家に多く見られます。彼らは自身の名声を築くために、クライアントの要望を軽視し、自らのデザインを押し付けることがあります。結果として、クライアントの満足よりも、自分の作品がどれだけ注目を集めるかが重要視されることになるのです。このような態度は、家を建てようとする人々にとっては、非常に危険なものです。

建築家を選ぶ際の注意点

 家を建てる際、どの建築家に依頼するかは非常に重要な決断です。以下のポイントに注意することで、失敗を避けることができます。

  1. 要望をしっかり聞いてくれるか:その建築家があなたの要望や希望、そして今後のライフスタイルについてしっかりと聞いてくれているかどうかを確認しましょう。話を丁寧に聞かず、自分の意見やデザインばかりを主張してくる建築家には注意が必要です。
  2. 提案内容があなたのニーズに合っているか:要望に対して、具体的かつ実現可能な提案をしてくれるかどうかも重要です。希望に寄り添う設計ができるかどうかをしっかりと見極める必要があります。
  3. 自己中心的でないか:自分のことばかり喋り、自分がどれだけ優れているかを示そうとする建築家には警戒が必要です。特に、若い駆け出しの建築家にこの傾向が見られることが多いです。建築家はクライアントの夢を形にする役割を持っていますが、自己顕示欲が強すぎると、クライアントのニーズが無視されるリスクが高まります。

建築家に依頼するときの注意点

 これから家を建てようと考えている方々には、以下の点をしっかりと押さえておくことをお勧めします。

  1. 建築家とのコミュニケーションを密に:設計の段階で、納得がいくまで説明を求め、自分の希望が正しく反映されているか確認することが重要です。
  2. デザインと機能のバランスを考慮:見た目だけでなく、日常生活での使い勝手やメンテナンスのしやすさを考慮したデザインを優先しましょう。
  3. 長期的な視点で判断する:建築家が提案するデザインが、将来的に維持や修繕が必要になる可能性についても考慮しましょう。
  4. 納得できなければ断る勇気を:もし、建築家と話をして自分のニーズと合わないと感じた場合、断ることを恐れないでください。最終的に住むのはあなたですので、自分が本当に満足できる選択をすることが大切です。

 家づくりは一生に一度の大きなプロジェクトです。そのため、建築家に全てを任せきりにせず、自分の意思をしっかりと伝え、後悔のない家づくりを実現することが大切です。

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