建築士が設計し、工事を監理する──これまでの「4号建築物」では、この流れだけで家づくりが進められるケースが多くありました。しかし、2025年の建築基準法改正では「確認申請の義務化」が広がります。なぜ、建築士のチェックだけでは不十分とされたのでしょうか? その背景と理由をわかりやすく解説します。
建築士の設計は信頼できるが…
建築士は、建築に関する専門知識を持つ国家資格者です。もちろん、法律や安全性を熟知し、誠実に業務を行っている建築士も多く存在します。しかし現実には、次のような課題も指摘されてきました。
指摘される課題 | 具体的な内容 |
---|---|
設計・監理の兼任による甘さ | 自分で描いた設計を自分で確認するため、客観性が欠けやすい |
工務店に設計を任せっきり | 無資格者が設計したり、建築士が形だけ関与しているケースも |
忙しさによる手抜き | 申請が不要だと、設計図や計算書が簡略化されることも |
これらはすべての建築士に当てはまるわけではありませんが、「制度としての穴」が存在していたのは確かです。
第三者のチェック=“確認申請”の意味
確認申請とは、「建築基準法に合っているかどうかを、役所や指定確認検査機関がチェックする制度」です。これにより、以下のような効果が期待されます。
- 設計内容に法的な誤りがないかを客観的に確認できる
- 必要な構造計算や省エネ基準が満たされているかを第三者が審査
- 建て主自身が気づかないリスクを未然に防ぐ
つまり、建築士を“信用する”ことと、第三者が“検証する”ことは別物なのです。
なぜ今、それが重要なのか?
近年の住宅では、省エネ・耐震・劣化対策など「複雑な基準」が増えています。たとえば以下のような内容を、個人の設計士の責任だけで管理するのは非常に困難です。
- 断熱材の厚さや性能(UA値)
- 複雑な屋根形状の構造計算
- 火災避難経路や開口部の仕様
- 長期優良住宅やZEH対応など、複数制度の併用設計
こうした高度化に対応するには、専門性を持った第三者の審査が不可欠なのです。
安心して住むための「二重チェック体制」
これからの家づくりでは、
- 設計は建築士が行う
- 審査は第三者が行う
という「ダブルチェック体制」が基本となります。
これは住まい手にとって“負担”ではなく、“安心と信頼”につながる大切な仕組みです。
たとえるなら…
お医者さん(建築士)が診察して、
レントゲンや血液検査(確認申請)で別の目からチェックされるようなものです。
まとめ:家族を守るために、制度が支える
視点 | 理由 |
---|---|
建築士の信頼 | 大前提として重要だが、主観的になりやすい面もある |
第三者審査の必要性 | 客観的な安全性・法令遵守を確保できる |
建て主の安心 | 間違いや見落としが減り、後悔しない家づくりにつながる |
確認申請は“義務”ではありますが、同時に“味方”でもあります。
これから家を建てる人にとって、制度を知ることが「安心の第一歩」になるのです。
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