建物の外壁仕上げにはいくつかの種類がありますが、施工方法や使用材料の違いによって、ひび割れの出やすさや性質、リスクの大きさが異なります。この章では、よく使われる外壁仕上げ材ごとに、ひび割れの特徴と注意すべきポイントを詳しく見ていきます。
モルタル塗り壁のひび割れ
モルタル塗りは、セメントと砂、水を練ってつくる外壁の下地や仕上げ材として古くから使われています。左官職人の手作業で仕上げられるため風合いに味がありますが、硬化・乾燥時に収縮が起こりやすく、クラックが入りやすいのが難点です。
主なクラックの特徴
種類 | 内容 |
---|---|
ヘアクラック | 幅0.2mm以下の細く浅い割れ。乾燥収縮が主因。 |
構造クラック | 基礎や開口部近くなど、動きが集中する箇所に斜めのクラックが入ることがある。 |
縁切れクラック | ジョイントや金網の継ぎ目部分に集中して割れる |
注意点
- 乾燥収縮によるクラックは避けがたいため、あらかじめ目地やエキスパンションジョイントで誘導する工夫が必要
- 防水塗装や吹付材(リシン・スタッコ)で仕上げた場合も、クラックを完全には防げない
- 内部に水が入り込むと白華や浮き、はがれを招く
クラック発生を前提に、早期発見と補修で防水性を維持することが重要。
サイディング(窯業系・金属系など)のひび割れ
サイディングは、工場で成形されたパネル状の外壁材で、施工性に優れ、仕上がりも均一になるのが特徴です。近年の住宅の主流ですが、板と板の継ぎ目(目地)やビス留め部からクラックが発生することがあります。
主なクラックの特徴
部位 | 内容 |
---|---|
目地部分 | シーリング材の劣化により割れやすくなる。雨水侵入の原因に。 |
ビス・釘まわり | 板の固定が不十分だと、浮きや割れが発生することがある。 |
パネル自体 | 冬季などの温度差で、反り・伸縮から微細な割れが出ることも。 |
注意点
- サイディング本体よりも、シーリングの劣化からの浸水に注意が必要
- 通常10~15年でシーリング打ち替え、塗装の再施工が推奨される
- 割れを放置すると、パネルの浮きや内部腐朽につながる
表面だけでなく、“つなぎ目”の状態こそが耐久性を左右するポイント。
ALC(軽量気泡コンクリートパネル)のひび割れ
ALCパネルは、内部に気泡を含んだコンクリート製の外壁材で、耐火性・断熱性に優れた素材です。
一方で、乾燥収縮・温度変化・地震などの“動き”に対する柔軟性は低く、継ぎ目やパネル面にひび割れが出ることがあります。
主なクラックの特徴
発生部位 | 内容 |
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パネル目地 | シーリング切れ・たわみ・地震の揺れで割れることが多い |
パネル面 | 固定不良や熱膨張で表面にクラックが現れることも |
開口部周辺 | 動きに追従できず、斜めクラックが入りやすい |
注意点
- 防水層を兼ねるシーリングの劣化は雨漏り直結なので要注意
- 表面に防水塗装(弾性塗料など)を施していても、割れから水が侵入することがある
- 専用金物による固定や目地設計が適切でないとクラックが頻発する
ALCは性能が高い分、施工精度と維持管理が重要な素材。
まとめ:施工方法が変われば「割れ方」も変わる
ひび割れの発生は、建物の構造だけでなく、外壁の仕上げ材や施工方法の違いによっても大きく異なります。
施工方法 | 特徴 | 注意点 |
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モルタル塗り | 自然な風合いと柔軟性 | 乾燥収縮・仕上げの厚みによるクラックに注意 |
サイディング | 施工性・均一性に優れる | 継ぎ目・ビス部の劣化からのクラック |
ALCパネル | 耐火・断熱に優れる | 動きに弱く、目地と塗膜の劣化が致命傷に |
それぞれの材料に合わせたメンテナンス方法と点検ポイントを知ることが、ひび割れの被害を防ぐ第一歩です。
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