住宅トラブルや欠陥住宅の相談を数多く受けてきた中で、はっきりと言えることがあります。それは、大きな問題の多くが、購入前・契約前の段階ですでに芽を出しているという事実です。住み始めてから不具合が見つかり、
「こんなはずではなかった」
「説明を受けていなかった」
と後悔する方は少なくありません。しかしその多くは、判断を誤ったというより、確認すべきポイントや確認の仕方を知らなかっただけなのです。
この章では、欠陥や住宅トラブルを未然に防ぐために、
購入前・契約前に必ず意識しておきたい考え方と確認ポイントを整理します。
契約前は「最も立場が強い時間」である
住宅購入や工事契約において、買い手・建て主の立場が最も強いのは、契約書に署名・押印する前です。一度契約を結んでしまうと、
- もう決まっている
- 今さら変更できない
- 追加費用がかかる
といった言葉が出てきやすくなり、主導権は次第に業者側へ移っていきます。逆に言えば、契約前であれば、
- 質問すること
- 確認を求めること
- 書面での説明を求めること
すべてが正当な権利です。高額で、長く暮らす住まいだからこそ、慎重であることは当然であり、遠慮する必要はまったくありません。
「建物」だけでなく「条件」を見る視点を持つ
購入前に多くの方が注目するのは、
- 立地
- 間取り
- 価格
- デザイン
- 築年数
といった、目に見えやすい情報です。もちろん重要ですが、欠陥やトラブルにつながりやすいのは、目に見えにくい条件です。例えば、
- 建築された時期(耐震基準・法改正との関係)
- 建築確認・検査済証の有無
- 増改築やリフォームの履歴
- 地盤条件や造成の経緯
- 接道状況や法的制限
これらは、購入後の改修・補強・トラブルに大きく影響します。「建物を見る」だけでなく、その建物がどのような条件の上に成り立っているのかを見る視点が欠かせません。
図面・書類が揃っているかは重要な判断材料
契約前には、可能な範囲で次の資料が確認できるかを意識してください。
- 建築確認済証・検査済証
- 設計図書(平面図・立面図・断面図など)
- 過去のリフォーム・改修記録
- 重要事項説明書の内容
これらが揃っていない場合、「古い建物だから仕方ない」と説明されることもありますが、不明点が多い建物ほど、リスクは高くなります。特に注意したいのは、図面の内容と現況が一致しているかどうかです。増築されている、間取りが違う、用途が変わっている――こうしたズレは、将来の耐震改修やリフォームで大きな制約となることがあります。
「大丈夫」という言葉を鵜呑みにしない
購入前の説明では、
- 問題ありません
- よくあることです
- 今までトラブルはありませんでした
といった言葉が使われることがあります。これらは必ずしも嘘ではありませんが、具体的な根拠が示されない限り、安心材料にはなりません。
- 何をもって「問題ない」のか
- どこまで確認しているのか
- 将来的なリスクはどう考えているのか
こうした点を、言葉だけでなく、資料や説明として確認する姿勢が重要です。
違和感を覚えたら「立ち止まる勇気」を持つ
購入前・契約前に、
- 説明が曖昧に感じる
- 質問しづらい雰囲気がある
- 契約を急かされていると感じる
こうした違和感があれば、一度立ち止まることが大切です。住宅購入はスピードよりも納得感が重要です。不安を抱えたまま進めてしまうと、その不安は後から必ず問題として表面化します。
専門家には「見るだけ」でも頼ってよい
この段階で第三者の専門家に相談することは、決して大げさではありません。むしろ、最も費用対効果が高いタイミングです。
- 購入前の簡易チェック
- 図面や資料の読み解き
- 想定されるリスクの整理
これだけでも、判断の質は大きく変わります。
まとめ
購入前・契約前は、欠陥住宅や住宅トラブルを防ぐための最大のチャンスです。
- 契約前は最も立場が強い
- 見えない条件こそ丁寧に確認する
- 書類と現況の一致を意識する
- 「大丈夫」という言葉に根拠を求める
- 違和感を覚えたら立ち止まる
- 専門家の力を早めに借りる
これらを意識するだけで、「こんなはずではなかった」という後悔の多くは防ぐことができます。

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