家は人生で最も大きな買い物のひとつです。長く快適に住み続けるためには、「不同沈下(ふどうちんか)」のリスクを避けることがとても重要です。不同沈下とは、家の基礎が部分的に沈んでしまい、建物が傾いたり、壁に亀裂が入ったりする現象のこと。これを防ぐには、家を建てる前の段階で適切な準備と確認をしておくことが欠かせません。この記事では、不同沈下を未然に防ぐためにやっておくべきことを、わかりやすくご紹介します。
地盤調査を必ず行う
最も基本であり、最も重要なステップが「地盤調査」です。家を建てようとしている土地が、家の重さに耐えられるだけの強さを持っているかを確認する必要があります。
地盤調査には、スクリューウェイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験))やボーリング調査などがあり、土地の性質や規模に応じて選ばれます。特に以下のような土地は注意が必要です。
- 昔は田んぼや沼地だった土地
- 埋め立て地や盛土された場所
- 近隣に不同沈下の被害があった地域
調査の結果、地盤が軟弱だと判定された場合は、地盤改良工事が必要になります。地盤調査をせずに家を建ててしまうと、不同沈下のリスクが大幅に高まりますので、必ず専門家に依頼して調査を行いましょう。
信頼できる専門業者に依頼する
地盤調査や改良工事を依頼する際は、経験豊富で実績のある業者を選ぶことが大切です。地盤は目に見えない部分だからこそ、信頼できるパートナー選びが必要です。チェックポイントとしては以下のようなものがあります。
- 施工実績が豊富である
- 第三者保証(地盤保証)が付いている
- 調査データや改良内容をきちんと説明してくれる
- 相談や質問に丁寧に対応してくれる
一括請負の住宅メーカーであっても、下請け業者の質は確認しておくと安心です。
必要に応じて地盤改良を行う
地盤調査の結果、軟弱地盤であると判明した場合は、必ず地盤改良工事を行う必要があります。代表的な地盤改良の方法には以下のようなものがあります。
- 表層改良工法(浅い地盤をセメントで固める)
- 柱状改良工法(コンクリートの柱を地中に作る)
- 鋼管杭工法(鋼の杭を支持層まで打ち込む)
地盤の状況や建物の規模に応じて、適切な方法を選定することが重要です。費用は数十万円〜百万円単位になることもありますが、安全・安心には代えられません。
設計段階から不同沈下対策を考える
設計段階でも不同沈下を起こしにくい家づくりが可能です。たとえば、以下のような工夫が挙げられます。
- 建物の形状をなるべくシンプルにする(凹凸が多いと荷重が偏りやすくなる)
- 地盤改良と基礎設計をセットで考える
- 重い設備(太陽光パネル、吹抜けなど)の位置をバランスよく配置する
- 基礎の立ち上がりや配筋の構造を適切に設計する
構造設計者や基礎の施工業者とよく打ち合わせを行い、不同沈下のリスクを下げるための工夫をしておくことが重要です。
地歴(ちれき)を調べておく
土地の「地歴」=過去の利用状況も調査しておくと安心です。昔、沼や川、池だった場所は、地盤が軟弱なケースが多いです。自治体のハザードマップや古地図などで確認できることもあるので、土地を購入する前に調べてみるとよいでしょう。また、近隣で地盤沈下が起きた事例がないか、不動産会社や近所の人に聞いてみるのもおすすめです。
地盤保証制度を利用する
最後に、不同沈下による損害に備えて「地盤保証制度」に加入することも忘れないようにしましょう。これは、一定の基準で調査・改良・施工を行ったうえで、万一、不同沈下が起きた場合に補償が受けられる制度です。
地盤保証は10年間が一般的で、住宅瑕疵保険とは別に加入することになります。信頼できる地盤会社が提供している保証であるかどうかも確認しましょう。
まとめ
不同沈下は、建物の寿命を縮め、住む人の心と体にも大きな負担を与える深刻な問題です。しかし、家を建てる前の段階でしっかりとした準備と確認を行うことで、そのリスクを大きく下げることができます。
「地盤調査を行う」「地歴を調べる」「設計段階で配慮する」「信頼できる業者に依頼する」「保証制度を活用する」といったポイントをしっかり押さえて、大切なマイホームを長く安心して暮らせる場所にしましょう。
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