これまで「4号特例」によって確認申請手続きが簡略化されていた木造住宅。2025年以降は多くの住宅で申請が必要になり、それにともなって工事スケジュールや設計費用、申請コスト、監理費などにも影響が出てきます。ここでは、具体的にどのような変化があるのかを見ていきましょう。
確認申請が必要になると、どのようにスケジュールが変わるのか?
確認申請が義務化されると、設計~着工までのプロセスに**「申請・審査期間」が加わります。これにより、着工までに最低でも2~4週間程度の時間**が追加で必要になります。
【スケジュールの変化:例】
工程 | 旧制度(申請省略) | 新制度(申請義務) |
---|---|---|
プラン打合せ | 2週間 | 2週間 |
設計図完成 | 1週間 | 1週間 |
着工 | すぐ可能 | 確認申請提出後、審査(2〜4週間)を経て着工 |
つまり、確認済証が交付されるまで着工できないため、工事の開始が後ろ倒しになる可能性があります。
建築確認がもたらす“設計・図面”への影響
申請に必要な図面や構造計算書類の作成が必須となるため、設計内容がより精緻化される一方、設計者の負担も増加します。
【必要書類の例】
- 平面図・立面図・断面図
- 配置図・構造仕様書
- 構造計算書(該当時)
- 省エネ性能計算書(適用される地域や規模による)
これまで「参考図」で済んでいた部分も、確認申請では「法的整合性」が求められます。そのため、図面修正や再提出の可能性も視野に入れておく必要があります。
工期だけでなく「検査対応」も追加に
これまで現場でのチェックは設計者・監理者のみで済んでいたのに対し、中間検査や完了検査が義務となるケースも出てきます。
とくに新たに「新2号建築物」に該当する家屋では、
- 構造耐力上主要な部分(柱、梁など)の検査
- 防火・省エネ・避難の観点からの完了検査
が加わる可能性があり、現場の施工スケジュールや段取りにも影響します。
確認申請で増える“コスト”とは?
確認申請そのものには申請手数料が必要です。これは自治体や建築主事、民間確認検査機関によって異なりますが、一般的には2〜7万円程度。加えて、構造計算書や省エネ性能評価書の作成・外注費が発生するケースもあります。
【コスト増加の主な内訳】
項目 | 内容 | 概算費用 |
---|---|---|
確認申請手数料 | 確認申請書の審査費用 | 20,000〜70,000円 |
構造計算書作成 | 木造でも条件によって必要 | 50,000〜200,000円 |
省エネ計算書作成 | 地域区分や建物仕様により必要 | 30,000〜100,000円 |
検査立会い | 設計者や監理者の立会い時間・費用 | 状況により変動 |
“申請が必要になると損”ではなく、“品質が見える化される”という考え方を
申請や検査に伴って時間や費用がかかるのは確かですが、その一方で、
- 第三者の目で構造や法的要件がチェックされる
- 検査を経ることで信頼性の高い家づくりができる
- 売買や評価時に確認済証や検査済証がアピール材料になる
といった長期的なメリットもあります。
工期・予算に余裕を持って計画しよう
今回の法改正で最も大切なのは、設計者だけでなく施主も“スケジュールと予算に余裕を持った計画”を立てることです。
今後の家づくりでは、「着工前に余裕を持った確認申請スケジュール」と「設計段階での十分なヒアリング・法的チェック」が不可欠になるでしょう。
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