耐震改修工事は、正しく行えば建物の安全性を大きく高めることができます。しかしその一方で、工事の進め方を誤ると、期待した耐震効果が得られないケースも少なくありません。
実際の現場では、次のようなポイントで失敗が起こりやすくなっています。
耐力壁の「量」だけを増やしてしまう
配置バランスを考えていない失敗
耐震改修でよくある誤解が、「耐力壁をたくさん入れれば安心」という考え方です。実際には、耐力壁は配置バランスが非常に重要です。一方向だけに補強が集中すると、地震時に建物がねじれるように揺れ、かえって被害が大きくなることがあります。
失敗例として多いのは、
- 使っていない部屋だけに補強を集中させる
- 生活動線を優先しすぎて補強位置が偏る
といったケースです。耐震改修では、建物全体のバランスを見た補強計画が欠かせません。
基礎の状態を十分に確認しないまま工事を進める
「上部だけ直しても意味がない」ケース
壁や金物の補強を行っても、基礎が弱いままでは耐震性は向上しません。
特に注意が必要なのは、
- 無筋コンクリート基礎
- 大きなひび割れがある基礎
- 不同沈下の兆候がある基礎
こうした状態を見落としたまま工事を進めてしまうことです。基礎補強は費用がかかるため、敬遠されがちですが、 必要な基礎補強を省略することが、最大の失敗につながる場合があります。
金物補強を「付けただけ」で安心してしまう
施工精度の差がそのまま性能差になる
接合部の金物補強は、耐震改修の要とも言える工事です。しかし現場では、
- 指定された位置に取り付けられていない
- ビスの本数が不足している
- 下地材との取り合いが不適切
といった施工不良が起こることがあります。金物は、正しい位置・正しい方法で施工されて初めて意味を持つものです。「金物が付いているから大丈夫」と思い込むのは危険です。
屋根の重さを考慮せずに補強計画を立ててしまう
「重い家」をそのままにしている失敗
重い屋根は、地震時に建物へ大きな負担を与えます。にもかかわらず、屋根の軽量化を検討せずに、壁補強だけで対応しようとするケースも少なくありません。その結果、
- 必要以上に壁補強が増える
- 費用がかさむ
- 工事規模が大きくなる
といった問題が起こります。屋根を軽くすることで、補強量を抑えられる場合もあるため、屋根を含めた総合的な検討が重要です。
劣化部分を放置したまま補強してしまう
「土台が弱ければ、補強も効かない」
シロアリ被害や腐朽がある状態で補強を行っても、本来の耐震性能は発揮されません。よくある失敗として、
- 腐った土台に耐力壁を取り付ける
- 雨漏り箇所を直さずに補強する
といったケースがあります。耐震改修では、補強の前に「直すべき劣化」をきちんと是正することが不可欠です。
まとめ
耐震改修工事で起こる失敗の多くは、工事そのものよりも、計画や判断の段階で生じています。
- バランスを考えない壁補強
- 基礎の見落とし
- 金物施工の確認不足
- 屋根の重さへの配慮不足
- 劣化部分の放置
これらはすべて、事前に知っていれば防げる失敗です。
次節では、こうした失敗を防ぐために、工事中・工事後に施主自身が確認すべきチェックポイントを具体的に解説します。耐震改修を「やって良かった工事」にするためにも、ぜひ続けてご覧ください。

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