家の寿命や耐震性への影響

白蟻から家を守るために知っておきたい基礎知識
知らぬ間に進む“静かな老朽化

 白蟻(しろあり)の被害は目に見えない場所で静かに進行します。そして気づいたときには、家の土台や柱がスカスカに食い荒らされていたというケースも少なくありません。それがもたらす影響は、単なる「床が沈む」「ドアが閉まりにくい」といった表面的なものにとどまりません。実は白蟻被害は、家の寿命を縮め、地震などの自然災害時に大きな被害をもたらす要因となるのです。

白蟻がもたらす“構造的劣化”とは?

 白蟻は木材の内部を食害し、構造材を中空化させていきます。特に被害を受けやすいのは、以下のような住宅の基幹部材です。

部材役割と被害の影響
土台建物と基礎をつなぐ重要部分。被害で建物全体の安定性が損なわれる。
垂直荷重と水平力を受け持つ。被害で耐震性能が著しく低下。
梁・桁上階や屋根の荷重を支える水平材。部分欠損でも変形・沈下の原因に。
大引・根太床構面を形成。被害で床の沈下や剛性低下が発生。

構造部材が食害されると、建物はわずかな荷重変化にも耐えられず、急速に老朽化が進行します。

白蟻被害が家の寿命を縮める理由

 一般的に、定期的なメンテナンスを行えば木造住宅の寿命は50年以上持つとされています。しかし、白蟻による被害を放置すると、その寿命は数十年単位で短縮することがあります。

老朽化が早まる原因

  • 内部から腐朽・劣化が進行(目視での発見が遅れる)
  • 湿気やカビが同時に発生し、腐朽菌の繁殖を助長
  • 地震や強風での揺れに耐えきれず損傷が連鎖的に進む

家は「目に見えない柱と土台」で持っている。
そこが侵されれば、表面がきれいでも危険なのです。

地震に対して“極端に脆くなる”

白蟻の被害が耐震性に与える影響は、きわめて深刻です。

例えば…

  • 柱の断面が半分以上失われている → 圧縮強度が激減
  • 土台の接合部がスカスカ → アンカーボルトが効かず、地震時に外れる
  • 壁の耐力バランスが崩れる → 偏心して一部が先に倒壊

実際、阪神・淡路大震災では、白蟻被害のあった住宅の倒壊率が高かったと報告されています。

表面から見えない「構造内部の空洞化」は、
建築基準法の構造計算では想定されていません。
つまり、白蟻被害は想定外の弱点を家に生むということなのです。


被害に気づくのが遅れる理由

白蟻の食害は:

  • 暗所・湿気・床下などの目に触れない場所で進行する
  • 木材表面が残っている場合、外見上は無傷に見える
  • 建築から10年以上経ってから発生することが多く、気づきにくい

このため、白蟻による構造劣化は**「静かな老朽化」**とも呼ばれています。

家の寿命と耐震性を守るために今できること

定期的な点検の実施

  • 5〜10年に一度の白蟻点検(専門業者に依頼)
  • 床下・水まわり・壁内部の湿気と通気性を確認
  • 過去に防蟻処理をしている場合も、再処理の時期をチェック

新築・リフォーム時の備え

  • ベタ基礎+基礎パッキンで通気性向上
  • 防蟻処理材(加圧注入材・薬剤)を使用
  • 白蟻に強い樹種の選定(ヒノキやヒバなど)

まとめ:家を長持ちさせるには“白蟻対策”が欠かせない

 白蟻の被害は、家の内部で進む静かな破壊行為です。寿命を縮め、耐震性を奪い、家の安全性を脅かします。

大きな被害が出る前に、
小さな点検・小さな予防を積み重ねること。
それが家と家族を守る最善の道です。

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