白蟻の嫌う環境を設計でつくる~
白蟻は「高湿・暗所・通気不良」の環境を好み、床下がその条件を満たしてしまうと被害のリスクが一気に高まります。つまり、設計の工夫によって「白蟻が住みにくい環境」を床下につくることが、最初の防除対策になります。この節では、白蟻対策として非常に有効な3つの設計要素――「床下通気」「ベタ基礎」「基礎高確保」について解説します。
床下通気~湿気を溜めないことが最大の防御~
白蟻は乾燥に弱く、風通しの良い床下には住み着きにくくなります。逆に、通気が悪く湿気がこもると、腐朽菌が繁殖しやすくなり、それに引き寄せられる形で白蟻も侵入しやすくなります。
床下通気の方法
通気方式 | 特徴と効果 |
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基礎パッキン工法 | 基礎と土台の間に通気材を挟むことで、連続した通気路を確保。構造強度を保ちつつ通気性能が高い。 |
換気口方式(従来型) | 基礎に開口部を設け、風を通す。配置が悪いと通気ムラができやすい。 |
強制換気方式(機械式) | 床下にファンを設置して強制的に空気を流す。湿気が多い地域や気密性の高い住宅に有効。 |
→ とくに基礎パッキン工法は、現在の主流かつ効果的な方法で、湿気を効率よく外部に排出できます。
ベタ基礎~白蟻の侵入を遮断する「底板のバリア」~
ベタ基礎とは、建物全体の下に鉄筋コンクリートの“底板”を打設する工法です。従来の布基礎と違い、白蟻が地面から侵入するルートを遮断する効果が非常に高いとされています。
ベタ基礎のメリット
- 白蟻の侵入を物理的に防ぐ
- 地面がむき出しでないため、蟻道をつくりにくい
- 地面からの湿気を遮断
- 防湿シートと組み合わせるとより効果的
- 構造強度が向上
- 地震時の不同沈下にも強く、耐震性も高まる
注意:ひび割れや打設不良があると、そこから侵入されるリスクもあるため、施工精度が非常に重要です。
基礎高の確保~「狭すぎない床下空間」が点検・通気・乾燥のカギ~
建築基準法では、床下の高さ(地盤面から大引下端まで)を原則330mm以上確保することが定められています。しかし実務上は、400mm以上を確保することで、点検性・通気性・施工性のすべてが向上します。
基礎高が高いメリット
高さの確保 | 効果 |
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400mm以上 | 通気空間が大きくなり、湿気がこもりにくくなる |
450mm以上 | 床下点検・防蟻処理作業がしやすくなる |
600mm以上 | 建物全体の風通しが改善され、構造体が長持ちしやすい |
→ 特に「床下点検口から人が入れる高さ」が確保されているかどうかは、維持管理のしやすさに直結します。
まとめ:床下を設計から“敵地”にする
白蟻の侵入経路となりやすい床下は、設計によってそのリスクを大幅に軽減できます。床下通気、ベタ基礎、基礎高の3点を組み合わせることで、「乾燥した・風通しの良い・点検しやすい」環境をつくり、白蟻が嫌う床下を実現しましょう。
白蟻は“湿って静かな場所”を好む。
設計次第で、床下は“乾いて健全な空間”に変えられます。
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