雨漏りをとめるために・・・防水の工法(その1)

 ここでは、具体的にどのようにすれば、雨漏りを防止して、建物と人の生活を守ることができるのか、それをご紹介したいと思います。その工法のひとつとして防水工事があります。防水工事にもいろいろあるのですが、まず、大きく分けて、メンブレン防水シーリング防水の2つのタイプがあります。それぞれの特徴を以下に説明します。

メンブレン防水

 メンブレン防水は、防水層を作るためにシートや液体状の材料を使用して膜(メンブレン)を形成する方法です。この防水膜が建物の表面を覆い、水の浸入を防ぎます。以下に代表的なメンブレン防水の種類と特徴を説明します。

  • シート防水: PVC(ポリ塩化ビニル)やEPDM(合成ゴム)などのシートを貼り付けることで防水層を作る方法です。シートを継ぎ目なく接着することで、防水効果を高めます。
  • 塗膜防水: 液体状の防水材(ポリウレタンやアクリル系など)を塗布して防水層を作る方法です。塗布した材料が乾燥して膜状になり、水の浸入を防ぎます。
  • FRP防水: ガラス繊維を樹脂で固めて防水層を形成する方法です。軽量で強度があり、複雑な形状にも対応可能です。

シーリング防水

 シーリング防水は、建物の接合部分や隙間にシーリング材(コーキング材)を充填して水の浸入を防ぐ方法です。主に、サッシ周りや目地などの隙間を防水するために使用されます。

  • 主な用途: 窓枠やドア周り、外壁の目地、屋根材の接合部など、建材同士の接合部分を密閉して防水します。
  • 特徴: シーリング防水は、材料の柔軟性を活かして動きのある接合部にも対応できます。施工が比較的簡単で、局所的な補修が可能です。
  • メンテナンス: 経年劣化により、シーリング材が硬化やひび割れを起こすことがあるため、定期的な点検とメンテナンスが必要です。

メンブレン防水工法の種類と用途

 それでは、具体的な防水工法の種類について、まずは、メンブレン防水に関して、それぞれの特徴や適した用途・場所を詳しく説明していきます。

アスファルト防水

特徴

アスファルト防水は、アスファルトを用いて防水層を形成する方法で、シート状または液体状のアスファルトを使用します。一般的には「熱溶着工法」と呼ばれる、アスファルトを加熱して貼り付ける方法が用いられます。

適した用途と場所
  • 用途: 大規模な商業施設や工場、学校などの広い屋根に適しています。
  • 場所: 屋上や大型の屋根、駐車場の床など、広範囲にわたる防水が必要な場所に最適です。
メリット
  • 高い耐久性: アスファルト防水は非常に頑丈で、約10〜20年の耐用年数があります。しっかりと施工されれば、長期間にわたって建物を雨水から保護します。
  • 優れた防水性能: 大型の屋根や商業ビルなど、大規模な建物で広く使用されており、優れた防水性能を発揮します。
  • 経済的: 他の防水工法に比べて材料費が比較的安価であるため、コストを抑えられる点が魅力です。
デメリット
  • 施工が複雑: アスファルト防水は特殊な機械と高い技術が必要なため、専門の施工業者による工事が求められます。DIYでは対応が難しい工法です。
  • 紫外線に弱い: 直接日光に当たると劣化が早まるため、表面を保護するための保護層が必要です。
  • 重量がある: 防水層が重くなるため、建物の構造に負担をかける可能性があります。

ウレタン防水

特徴

 ウレタン防水は、ウレタン樹脂を液体状にして塗布することで防水層を形成します。液体なので、複雑な形状にも対応しやすい特徴があります。

適した用途と場所
  • 用途: 屋上やバルコニー、ベランダ、複雑な形状の屋根など。
  • 場所: 戸建住宅やマンションのバルコニー、複雑な形状の屋根など、細かい場所に適しています。
メリット
  • 継ぎ目がない: 液体を塗布するため、継ぎ目がなく、一体化した防水層が作れます。これにより、水の侵入を防ぎやすくなります。
  • 軽量で建物に優しい: 防水層が軽量なため、建物の構造に大きな負担をかけません。特に木造住宅などでは大きなメリットです。
  • 補修が容易: ウレタン防水は、部分的な補修が簡単にできるため、メンテナンスがしやすいです。
デメリット
  • 紫外線に弱い: 紫外線に長期間さらされると劣化が進むため、定期的にトップコート(保護層)を塗布する必要があります。メンテナンス頻度がやや高い点がデメリットです。
  • 乾燥時間が必要: ウレタンが乾燥するまで時間がかかり、施工環境によっては時間が変わることがあります。気温や湿度に影響されやすいです。

シート防水

特徴

 シート防水は、PVC(ポリ塩化ビニル)やEPDM(合成ゴム)のシートを建物に貼り付ける工法です。これにより、均一で強固な防水層を作ります。

適した用途と場所
  • 用途: 商業施設や集合住宅の屋上、ベランダ。
  • 場所: 広い面積が必要な屋上やベランダに適しており、特にメンテナンスが重要な場所で使われます。
メリット
  • 高い耐久性: 紫外線や天候の変化に強く、約10〜20年の耐久性があります。屋上やベランダなどで広く使われています。
  • 施工が速い: シートを貼り付けるだけの簡単な施工方法なので、工期が短く済む点が大きなメリットです。
  • メンテナンスが容易: 補修や交換が簡単に行えるため、長期的な管理がしやすいです。
デメリット
  • 複雑な形状には不向き: シートを貼り付けるため、複雑な形状の場所では施工が難しくなります。継ぎ目の処理も重要です。
  • 下地の状態に依存: シートがしっかりと固定されるためには、下地の状態が重要です。平滑で乾燥した下地が必要で、事前の準備が欠かせません。

塗膜防水

特徴

 塗膜防水は、液体状の防水材を塗り重ねて防水層を形成する工法です。ポリウレタンやアクリル系の塗料を使います。

適した用途と場所
  • 用途: バルコニーやベランダ、小型の屋根。
  • 場所: 複雑な形状が多い場所や、隙間が多い箇所に適しています。住宅のバルコニーや小型の屋根に向いています。
メリット
  • 柔軟性: どんな形状にも対応できるため、複雑な屋根やベランダにも適しています。塗布することで一体化した防水層が作れます。
  • 継ぎ目がない: 継ぎ目がないため、隙間からの水漏れを防ぐことができます。特に小さな漏水を防ぐのに効果的です。
  • 施工が比較的簡単: 特殊な機械を使わずに、ローラーや刷毛で塗布できるため、DIYでも挑戦しやすい工法です。
デメリット
  • 耐久性の問題: 紫外線に弱く、5〜10年ごとにトップコートを塗り直す必要があります。定期的なメンテナンスが重要です。
  • 乾燥時間の影響: 塗布後に乾燥するまで時間がかかり、気温や湿度に影響されやすいため、施工時期を選ぶ必要があります。

セメント系防水

特徴

 セメント系防水は、セメントモルタルに防水剤を混ぜて、基礎部分や地下部分に塗布する工法です。主に構造物の内部から防水を施します。

適した用途と場所
  • 用途: 地下構造物や基礎部分の防水。
  • 場所: 地下室や基礎部分、駐車場の床など、水圧がかかる場所に適しています。
メリット
  • 下地と一体化: 下地にしっかりと密着し、構造物と一体化するため、耐久性に優れています。
  • コストパフォーマンス: 材料費が安価で、大規模な防水工事にも向いています。特に基礎部分や地下での使用に適しています。
  • 耐水性能: 水に強く、地下水などの影響を受けにくいのが特徴です。
デメリット
  • 施工が難しい: 専門的な技術が必要で、施工ミスが起こるとひび割れが生じる可能性があります。熟練した技術者による施工が望ましいです。
  • 硬化後のひび割れ: 硬化する際にひび割れが発生することがあり、これが水の侵入を許す原因となることがあります。

シリコン系防水

特徴

 シリコン系防水は、シリコン樹脂を使用して防水層を形成します。特に屋根や外壁の補修に使われることが多い工法です。

適した用途と場所
  • 用途: 屋根や外壁の防水、補修。
  • 場所: 新築住宅や既存住宅の屋根・外壁で使用され、補修工事に最適です。
メリット
  • 優れた耐候性: 紫外線や酸性雨に強く、劣化しにくい特性があります。長期間にわたって性能を維持します。
  • 高い伸縮性: 建物の動きや温度変化に追随するため、ひび割れに強いです。これにより、建物の動きによる防水層の破損を防ぎます。
  • 軽量で建物に優しい: 防水層が軽量で、構造への負担が少なく済みます。
デメリット
  • コストが高い: 材料自体が高価なため、他の工法に比べてコストが高くなることがあります。
  • 下地の影響: 下地がしっかりと整えられていないと、接着がうまくいかず、性能が発揮できない場合があります。下地処理が重要です。

FRP防水

特徴

 FRP(繊維強化プラスチック)防水は、ガラス繊維を樹脂で固めて防水層を形成する工法です。ベランダやバルコニーでよく用いられています。

適した用途と場所
  • 用途: バルコニー、ベランダ、屋上などの小規模な防水。
  • 場所: ベランダやバルコニー、屋上などの平らな面に適しており、特に強度が求められる場所に最適です。
メリット
  • 高い耐久性と強度: FRPは非常に強く、耐久性があります。約10〜20年の耐用年数が期待でき、耐衝撃性にも優れています。
  • 軽量で施工が簡単: 軽量なため、施工が比較的簡単で、複雑な形状にも対応しやすいです。
  • 速乾性: 樹脂が早く乾燥するため、施工後すぐに使用できるのがメリットです。施工環境に左右されにくいです。
  • 木造住宅に最適: FRP防水は木造住宅によく使用されており、その理由は耐久性の高さと軽量であることです。木造住宅では構造に負担をかけず、しっかりと防水性能を発揮します。また、FRPの強度が木材の動きに追随できるため、ひび割れが生じにくい点も重要です。
デメリット
  • 紫外線に弱い: 紫外線によって表面が劣化しやすいため、トップコートによる保護が必要です。定期的なメンテナンスが必要です。
  • コスト: 初期費用が高くなることがありますが、その分長期間の使用が可能です。

適切な防水工法の選び方

 防水工事を選ぶ際には、以下の要素を考慮することが重要です。

  • 建物の種類と使用目的: 屋根、外壁、バルコニーなど、施工箇所に応じた適切な工法を選びます。例えば、屋上ならアスファルト防水やシート防水が、バルコニーならウレタン防水やFRP防水が適しています。
  • 予算とコスト: 防水工事にはそれぞれ異なる費用がかかります。予算に応じて、初期費用とメンテナンス費用を考慮した選択を行います。
  • 施工環境と施工期間: 施工場所の気候条件や建物の状況に応じて、施工可能な季節や期間を考慮します。施工が簡単で速い方法を選ぶことも有効です。
  • 耐久性とメンテナンス性: 長期的な耐久性を求める場合は、耐候性やメンテナンスの容易さも考慮する必要があります。
  • 専門業者の選定: 高品質の施工を保証するためには、信頼できる専門業者に依頼することが重要です。業者の経験や技術力も確認しましょう。

 以上の点を考慮し、防水工事を計画することで、建物を長期間にわたって守ることができます。防水は建物の寿命を大きく左右するため、適切な選択と施工が非常に重要です。

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