専門家による調査と診断

不同沈下特集
傾きの原因を正しく見極めるために。専門家による調査と判断の流れとは?

 セルフチェックで何らかの異常が見つかった場合、次に必要なのは専門家による正確な調査と診断です。建物の傾きやヒビの原因が本当に不同沈下によるものなのか、またどれほど深刻な状態なのかを把握するためには、第三者の冷静かつ客観的な目が不可欠です。この章では、どのような調査が行われ、何が明らかになるのかを具体的にご紹介します。 

建物診断(インスペクション)

 まず最初に行われるのが、建物そのものに対する目視や計測による診断です。これを行うのは「ホームインスペクター(住宅診断士)」や一級建築士などの専門家です。 

主な調査内容:

  • 水平器やレーザーレベルによる床や建物の傾きの測定
  • ヒビ割れ(クラック)の幅や長さの確認
  • ドア・窓の建付け不良のチェック
  • 基礎部分や外壁の状態の観察
  • 室内外の傾き・変形の比較(隣家との高さ差など)

 ここで収集された情報をもとに、建物に起きている変形の傾向と深刻度が判断されます。 

地盤調査

 建物に傾きや沈下が確認された場合、その根本原因が地盤にあるかどうかを調べるため、地盤調査が行われます。以下のような方法が一般的です。 

地盤調査の主な方法:

  • SWS試験(スクリューウエイト貫入試験):手動もしくは自動で地盤の支持力を測る簡易な方法。
  • ボーリング調査:深くまで掘削し、地盤の構成を詳しく調査する方法。精度は高いがコストもかかる。
  • 平板載荷試験:一定の荷重をかけて沈下量を測ることで、支持力を評価。

 調査の結果、支持層が深すぎる/軟弱地盤が残っている/地盤改良不足といった問題が明らかになることがあります。 

診断結果の報告書

 調査の完了後、診断報告書が作成されます。報告書には以下のような内容が記載されます。 

  • 建物の傾きの有無とその程度(mm/m 単位などで)
  • ヒビやクラックの位置・幅・進行度
  • 地盤の強度と構成(層の種類、N値など)
  • 原因の推定(例:地盤沈下、地中の空洞、施工不良など)
  • 必要な補修工事の方向性と概算費用の目安

 この報告書は、補修工事を依頼する際の判断資料として非常に重要になります。
また、火災保険や瑕疵担保責任保険の保険金請求の証拠資料としても活用できます。 

調査にかかる費用と時間

 専門家による調査は、内容に応じて費用が異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。 

  • ホームインスペクション:5万円〜10万円程度
  • SWS地盤調査:5万円〜10万円程度
  • ボーリング調査:1箇所あたり20万〜30万円程度
  • 詳細報告書の作成:別途3万円〜(場合によっては無料) 

 調査期間は、簡易なインスペクションであれば半日〜1日程度、本格的な地盤調査や報告書の作成を含めると1〜2週間程度が目安です。 

中立な第三者に依頼することが大切

 調査を依頼する際は、施工業者だけでなく、利害関係のない第三者機関や専門家に依頼することが大切です。工務店やハウスメーカーに依頼する場合でも、自社に不利な情報を過小評価する可能性があるため、必要に応じて第三者の意見も併せて確認することをおすすめします。

まとめ:問題の本質を知ることが、正しい解決への第一歩

 不同沈下が起きているかどうかを見極めるには、感覚や憶測ではなく、客観的なデータに基づいた専門的な診断が必要です。そして、その診断結果をもとに適切な補修方法を選ぶことで、住まいの安全性と快適性を取り戻すことができます。

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