構造別・材料別に見られる特徴(木造・RC造・鉄骨造)

建物のひび割れ対策特集
構造ごとに違う、ひび割れの出やすさと注意点

 建物に発生するひび割れ(クラック)は、その構造種別や使用材料によって起きやすい場所や原因、性質が異なります。この章では、代表的な構造である「木造」「RC造(鉄筋コンクリート造)」「鉄骨造」のそれぞれに見られるクラックの特徴をわかりやすく解説します。

木造住宅に見られるひび割れの特徴

 木造住宅は、柱・梁・土台などの構造材に木を使用しており、呼吸するように湿気を吸収・放出する性質を持ちます。

よく見られるクラックの特徴

発生箇所原因と特徴
外壁(モルタル)木材の収縮・温度変化に伴う動きで仕上げ材にひびが発生。ヘアクラックが多い。
開口部周辺(窓・ドア)躯体のたわみにより、角に斜めのクラックが入りやすい。
基礎(布基礎)地盤の沈下やコンクリートの乾燥収縮により縦・斜めの割れが生じることがある。

特に注意すべき点

  • 木材の乾燥により構造全体がわずかに動くため、仕上げ材との相性が重要
  • 湿気による膨張・収縮を防ぐ設計がポイント
  • 地盤の影響を受けやすいため、不同沈下に伴う基礎クラックに注意

外壁のクラックが構造体に直結しない場合が多いが、雨水侵入のリスクは常に考慮すべき。

RC造(鉄筋コンクリート造)に見られるひび割れの特徴

 鉄筋コンクリートは圧縮強度に優れていますが、引張力に弱く、硬いためクラックが入りやすい性質を持ちます。

よく見られるクラックの特徴

発生箇所原因と特徴
柱・梁・スラブ構造体自体に力がかかり、縦・横・斜め方向にクラックが入ることがある。
開口部上部(梁)地震や沈下の力でコーナーに斜めのクラックが発生。
外壁(RC打放し)温度変化や乾燥収縮によって、ヘアクラックや表面剥離が見られる。
鉄筋まわり鉄筋の腐食による内部膨張で、爆裂(ポップアウト)現象が起きることも。

特に注意すべき点

  • 幅0.3mm以上のクラックは鉄筋まで到達している可能性がある
  • 鉄筋が錆びると膨張し、コンクリートを破壊してクラックが拡大する
  • 仕上げがなく「RC打ち放し仕上げ」の場合、防水性が低いためヘアクラックでも要注意

クラックが構造的劣化に直結しやすいため、定期点検が必須

鉄骨造(S造)に見られるひび割れの特徴

 鉄骨造の構造体自体にはひび割れはほとんど入りません。しかし、鉄骨フレームに取り付けられた外壁や床などの仕上げ部位にクラックが発生することがあります。

よく見られるクラックの特徴

発生箇所原因と特徴
外壁(ALC・サイディング)鉄骨のたわみや温度変化による動きに追従できず、パネルや継ぎ目にクラックが発生。
開口部周囲ALCなどの乾燥収縮や地震時の変形で斜めにクラックが入ることがある。
床スラブ二次構造(下地やモルタル)にひびが入り、振動や施工精度が影響する。

特に注意すべき点

  • 鉄骨は「たわみ」が大きいため、剛性の弱い仕上げ材に無理がかかりやすい
  • ALCパネルでは、目地シーリングの劣化とクラックの併発に注意
  • クラック自体は構造に影響しにくいが、雨漏りや内部への浸水のリスクがある

クラックというより、「取り合い部の可動域の不足」が問題の根本となるケースも多いです。

まとめ:構造ごとの「クラックの意味」を正しく読み取る

 ひび割れは、構造によって「起きやすさ」「深刻度」「対処方法」が大きく異なります。それぞれの構造に合わせて、以下のような見方が大切です。

構造クラックの主な要因優先すべき対処
木造乾燥・湿気・地盤変動雨水侵入防止、定期点検、外壁補修
RC造収縮・鉄筋腐食・外力幅・深さの把握、鉄筋露出の有無確認
鉄骨造外壁との取り合い不良シーリング点検、動きに追従する仕上げ設計

構造の特性を理解すれば、クラックの“本当の意味”が見えてきます。

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