補修方法の種類と選び方(充填・注入・切削補修など)

建物のひび割れ対策特集
「とりあえず塞ぐ」ではなく、原因と症状に応じた補修を

 ひび割れ(クラック)を見つけたあと、どう補修するかは、その原因と深刻度によって異なります。
適切な方法を選ばなければ、見た目だけ整っても内部の劣化や水の侵入を止めることはできません。この章では、ひび割れの補修方法を種類ごとに解説し、状況に応じた選び方の考え方もご紹介します。

補修方法の分類:3つの基本系統

ひび割れの補修は、大きく以下の3種類に分類されます。

分類方法特徴
表面補修(充填)シーリング材・補修材で表面を埋める軽微なひび・表層の劣化向け
内部補修(注入)エポキシ樹脂などをクラック内部に注入深い割れ・構造補強が必要な場合に有効
部分切削・再施工クラック部を除去・補修材やモルタルで再成形再発防止や美観性の回復にも有効

クラックの幅・深さ・場所・原因に応じて、適切な方法を選ぶことが大切です。

補修方法①:表面補修(充填)

適用シーン

  • 幅0.3mm以下の浅いクラック(ヘアクラック)
  • 防水層まで貫通していない仕上げ面のクラック

使用材料

  • 弾性シーリング材(変成シリコン、ポリウレタンなど)
  • 専用補修パテやモルタル補修材

特徴

項目内容
費用安価で手軽(DIYも可能)
工期半日〜1日程度
効果防水性の回復に効果的。ただし内部補強にはならない

再発を防ぐには、仕上げ材の再塗装や防水再施工と併用すると効果的です。

補修方法②:注入補修(樹脂注入)

適用シーン

  • 幅0.3mm以上の貫通クラック
  • 基礎・構造壁などの耐力部材に生じた割れ
  • クラック内部まで水が浸入している可能性がある場合

使用材料

  • エポキシ樹脂(構造補強用)
  • ポリウレタン樹脂(止水用)

特徴

項目内容
費用中程度~高め(機械・技術が必要)
工期1日~数日(養生・施工手順あり)
効果内部まで接着・補強でき、再発を防ぐ。耐震性の維持にも有効

重要構造部のクラックは、必ず専門業者による調査と注入補修が望まれます。

補修方法③:切削補修・再施工

適用シーン

  • 劣化が進んで崩れ・剥がれがある場合
  • クラック部分に白華(エフロ)やサビが発生している場合
  • 美観性も重視したい場合

作業内容

  • クラック部をグラインダーやハンマーで切削・除去
  • 補修モルタル・防水材などで再構築
  • 必要に応じて塗装仕上げ

特徴

項目内容
費用やや高め(手間・仕上げ工程が多いため)
工期1〜3日程度(乾燥養生含む)
効果外観・強度の回復が可能。再発防止にも有効

中長期的に安心できる補修を目指すなら、切削補修が有力な選択肢です。

クラックの状態別:補修方法の選び方早見表

クラックの状態おすすめ補修方法
幅0.2mm以下・浅い表面補修(シーリング材など)
幅0.3mm以上・深い注入補修(エポキシ樹脂)
構造部(基礎・壁)に斜め割れ樹脂注入+構造調査
白華やはがれがある切削補修+再施工
美観を重視切削+再塗装 or 左官補修

注意すべき補修の落とし穴

NG例理由
クラック原因を調べずに上から塗る内部で進行していても気づけず、再発リスク大
適合しない材料を使用動きに追従せず、剥離や再割れの原因に
雨天や高温時に無理な施工接着不良・硬化不良・仕上がりのムラが出る

「補修=その場しのぎ」ではなく、「根本対応+長期性能確保」が基本です。

まとめ:「正しい補修は、原因と症状の“見極め”から始まる」

ポイント意味
表面補修は応急処置再発を防ぐには根本原因への対処が必要
構造部は注入補修が基本建物の強度維持に直結する補修法
見た目だけでは選ばない見えない部分に潜む危険を見極める

 ひび割れを「きれいにする」ことではなく、「再び割れないようにする」ことが本当の補修です。そのためには、診断 → 補修方法の選定 → 専門施工というステップが欠かせません。

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