再建築不可・建築確認が下りないケース

擁壁が原因で「建て替えできない土地」になる現実 擁壁特集
擁壁は「建て替えできる土地かどうか」を左右する

 中古住宅や擁壁付きの土地を検討する際、多くの人が見落としがちなのが、「将来、建て替えができるかどうか」という視点です。現在建物が建っていて、普通に暮らせているとしても、その土地が再建築不可、あるいは建築確認が下りない状態であるケースは、実際に少なくありません。特に擁壁が関係する土地では、この問題が顕在化しやすくなります。

擁壁が原因で再建築不可になる典型例

擁壁が現行法規に適合していない

 古い擁壁の多くは、現在の建築基準法や宅地造成工事規制法が整備される前に造られています。そのため、

  • 鉄筋が入っていない
  • 排水構造が不十分
  • 高さ・勾配・基礎構造が基準外

といった理由で、既存不適格擁壁と判断されることがあります。この場合、建て替えの際に「まず擁壁を現行基準に適合させること」が求められ、それができなければ建築確認が下りません。

擁壁が敷地外(隣地・道路)にまたがっている

擁壁の一部が、

  • 隣地側に越境している
  • 道路用地に食い込んでいる
  • 官地(里道・水路)にかかっている

といったケースでは、そもそも擁壁の作り替えができないことがあります。擁壁を直せない=建築確認の前提条件を満たせない、という結果になり、再建築不可となることがあります。

二段擁壁・ブロック積擁壁が含まれている

 擁壁の上にブロック塀を積んだ二段擁壁や、構造計算がされていないブロック積擁壁は、行政から「擁壁として認められない」と判断されるケースがあります。この場合、

  • 建物荷重を支えられない
  • 安全性が担保できない

として、建築確認の前提条件を満たさないことがあります。

建築確認が下りない具体的な流れ

購入者が建て替えを考え、建築士に相談した結果、

  1. 役所に事前相談
  2. 擁壁の安全性・法適合性が問題になる
  3. 「擁壁を是正しないと確認申請できない」と指摘される
  4. しかし是正工事が物理的・法的に不可能
  5. 結果として建築計画がストップ

という流れになるケースは、実務では珍しくありません。

「直せばいい」が通用しない理由

再建築不可の土地では、よく次のような言葉を耳にします。

  • 「今まで建っていたのだから大丈夫」
  • 「建築士に頼めば何とかなる」
  • 「多少の是正で済むはず」

しかし実際には、

  • 擁壁の作り替えに数百万円〜数千万円かかる
  • 隣地の同意が得られない
  • 行政が許可しない

といった理由で、現実的な解決策が存在しない場合もあります。

不動産広告・重要事項説明では見抜きにくい

再建築不可や建築確認不可のリスクは、

  • 不動産広告に明確に書かれない
  • 「既存不適格」「現況有姿」といった曖昧な表現で済まされる
  • 擁壁について詳細な説明がない

ということが多く、購入前に自分で確認しなければ分からない問題です。

購入前に必ず確認すべきこと

擁壁がある土地を検討する場合は、必ず次の点を確認する必要があります。

  • 擁壁は誰の所有か(敷地内か、越境はないか)
  • 現行法規に適合しているか
  • 建て替え時に是正が求められる可能性はあるか
  • 行政に事前相談した実績はあるか

これらは、不動産会社だけで判断するのではなく、建築士などの専門家を交えて確認することが不可欠です。

まとめ

 擁壁の問題は、単なる安全性の話にとどまりません。それは、将来その土地で暮らし続けられるかどうかを左右する、極めて重要な要素です。「今住める」ではなく、「将来も建て替えられるか」という視点で擁壁を見ることが、後悔しない土地・住宅選びにつながります。

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