中古住宅では、「今すぐ倒れそうではない」「これまで地震で大きな被害はなかった」という理由で、耐震改修を先送りにしてしまうケースも少なくありません。しかし、一定の条件がそろった住宅では、耐震改修を前提に考える必要があります。ここでは、耐震改修が必要になる代表的なケースを整理します。
旧耐震基準で建てられ、耐震診断の評点が低い場合
1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた住宅は、現行の耐震性能を満たしていない可能性が高くなります。特に、
- 耐震診断を行った結果、評点が基準値を下回る
- 「倒壊の可能性がある」と判定された
このような場合は、耐震改修を行わなければ、安全な住まいとは言えません。旧耐震住宅では、「診断 → 改修」をセットで考えることが基本になります。
壁量・構造バランスが明らかに悪い場合
耐震診断を行わなくても、次のような住宅は要注意です。
- 1階の壁が極端に少ない
- 大開口が多く、耐力壁が確保できていない
- 上下階の壁の位置が揃っていない
このような住宅は、地震時に大きく揺れ、ねじれや層崩壊が起こりやすい構造になっています。構造的な弱点が明確な場合は、耐震改修を前提に検討する必要があります。
増改築や間取り変更によって耐震性が低下している場合
中古住宅では、
- 壁を抜いて広いLDKにした
- 増築を繰り返している
- 重い屋根材に変更している
といった改変が行われていることがあります。これらが、
- 構造検討なし
- 耐震補強なし
で行われている場合、当初の耐震性能が大きく損なわれている可能性があります。こうした住宅では、
現状に合わせた耐震改修が必要になります。
基礎に問題があり、上部構造だけでは対応できない場合
耐震改修は、壁や筋かいを増やせばよい、という単純なものではありません。
- 無筋コンクリート基礎
- 大きなひび割れ
- 不同沈下が見られる
このような場合、基礎自体の補強や改修が必要になることもあります。基礎が弱い住宅では、上部構造の補強だけでは不十分であり、耐震改修の内容も大きくなりがちです。
劣化やシロアリ被害によって構造性能が低下している場合
耐震性能は、設計時の性能がそのまま維持されるわけではありません。
- 雨漏りによる柱・梁の腐朽
- シロアリ被害による断面欠損
- 床下・小屋裏の湿気
これらが進行している住宅では、耐震改修と同時に補修・交換が必要になります。劣化を放置したままでは、耐震補強の効果も十分に発揮されません。
将来も長く住み続ける予定がある場合
たとえ、
- 現時点で大きな不具合が見られなくても
- すぐに倒壊する可能性が低くても
今後も長く住み続ける予定がある住宅では、耐震改修を前向きに検討する価値があります。特に、
- 子どもや高齢者が暮らす
- 災害時に在宅避難を想定している
場合は、「最低限」ではなく「安心できる水準」を目指すことが重要です。
耐震改修は「必要になってから」では遅い
耐震改修は、被害が出てから行うものではありません。
- 被害が出る前に
- 冷静に判断できるうちに
行うことで、費用・工事内容・選択肢の幅も広がります。中古住宅では、「買う前」「住み続ける前」に耐震改修の必要性を見極めることが、後悔しない住まい選びにつながります。

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