日本では、これまで繰り返し大きな地震が発生し、そのたびに多くの住宅が被害を受けてきました。
地震の種類や規模、揺れ方は異なりますが、住宅被害の記録を振り返ることで、地震に対する住まいの弱点が少しずつ明らかになってきました。ここでは、日本で起きてきた代表的な地震を通して、住宅被害の特徴とそこから見えてくる共通点を整理します。
最近発生した日本の大地震
宮城県沖地震(1978年)
― 耐震設計の考え方が見直される契機となった地震 ―
1978年に発生した宮城県沖地震では、当時の耐震基準を満たしていた建物においても、一定の被害が確認されました。この地震をきっかけに、
- 想定していた地震動を超える揺れが起こり得ること
- 建物の強さだけでなく、粘り(変形性能)が重要であること
が改めて認識され、1981年の新耐震基準へとつながっていきます。ただし、この時点ではまだ、
「大地震が繰り返し起こる」「直下型地震が都市を直撃する」という現実は、十分に実感されていませんでした。
阪神・淡路大震災(1995年)
― 木造住宅の被害が一気に顕在化した地震 ―
1995年の阪神・淡路大震災は、内陸直下型地震による極めて強い揺れが、都市部を直撃しました。この地震では、
- 旧耐震基準で建てられた木造住宅の倒壊
- 1階部分が押しつぶされる形での崩壊
- 壁量不足や配置バランスの悪さによる被害
が数多く発生しました。同じ地域でも被害に差が出たことから、「築年数」だけでなく、「構造の考え方」や「建て方」が、住宅被害を大きく左右することが明確になりました。
新潟県中越地震(2004年)
― 地盤と建物の関係が被害を左右した地震 ―
新潟県中越地震では、強い揺れに加え、余震が多く発生しました。住宅被害としては、
- 不同沈下による建物の傾き
- 基礎のひび割れや破損
- 地盤条件による被害の集中
などが目立ち、建物単体だけでなく、地盤を含めて住宅を考える必要性が浮き彫りになりました。
東日本大震災(2011年)
― 長時間・繰り返しの揺れがもたらした被害 ―
東日本大震災では、海溝型地震による非常に長時間の揺れが特徴でした。この地震では、
- 一度の揺れでは耐えた住宅が、その後の揺れで損傷を拡大
- 新耐震基準の住宅でも被害が確認
- 津波による壊滅的被害
など、複合的な被害が発生しました。ここから分かるのは、「一度耐えたから次も大丈夫」という考え方が成り立たないという現実です。
熊本地震(2016年)
― 連続する直下型地震が住宅を追い込んだ例 ―
熊本地震では、短期間に震度7クラスの地震が連続して発生しました。この地震では、
- 前の地震で受けたダメージが
- 次の地震で一気に致命的な被害につながる
というケースが多く見られました。見えない損傷が蓄積し、次の揺れで限界を超えるという現象が、はっきりと確認された地震です。
地震被害から見えてくる住宅被害の共通点
これらの地震を振り返ると、住宅被害には共通した傾向があります。
- 旧耐震基準の住宅は被害が大きくなりやすい
- 壁の量や配置バランスが悪い住宅は倒壊しやすい
- 地盤条件が被害の大きさを左右する
- 一度の地震で終わらず、被害は蓄積する
地震は偶然に住宅を壊すのではなく、構造的に弱い部分を確実に突いてくる存在だと言えます。
過去の地震被害を知る意味
過去の地震被害を知ることは、恐怖を煽るためではありません。
- 自分の家は、どの地震で被害を受けやすいのか
- 同じ条件が重なったとき、どうなる可能性があるのか
- いま、何を確認しておくべきか
を考えるための、現実的な判断材料です。
まとめ
― 地震被害の記録が教えてくれること ―
これまで日本で起きてきた地震を振り返ると、住宅被害は地震の規模や種類が違っていても、
似たような形で繰り返し発生していることが分かります。
宮城県沖地震をきっかけに耐震基準が見直され、阪神・淡路大震災では木造住宅の弱点が一気に表面化しました。その後の中越地震、東日本大震災、熊本地震においても、揺れの性質や地盤条件は違えど、
- 耐震性が不足している住宅
- 構造や壁の配置に偏りがある住宅
- 地盤条件への配慮が不十分な住宅
で、被害が大きくなる傾向は共通しています。また、多くの地震被害が示しているのは、
- 一度の地震で終わらず
- 見えない損傷が蓄積し
- 次の地震で被害が拡大する
という現実です。「前の地震では大丈夫だった」「基準を満たしているから安心」といった判断だけでは、将来の安全を十分に説明できないことが、過去の被害から読み取れます。
地震被害の記録は、恐怖を煽るためのものではありません。自分の家をどう捉え、何を確認すべきかを考えるための材料です。

目次