断熱材の種類、特徴とその性能とは

断熱材の種類と特徴を施主向けにやさしく解説。グラスウールやウレタンなどの違い、熱伝導率やR値、メリット・デメリット、施工上の注意点までわかりやすくまとめました。後悔しない断熱材選びのポイントを解説します。 断熱完全ガイド
材料の違いを正しく理解する

前章で、断熱材の性能は

✔ 熱伝導率(λ値)
✔ 厚み
✔ 施工精度

で決まることを学びました。では実際に、どのような種類の断熱材があるのでしょうか?

  1. 繊維系断熱材
    1. グラスウール
          1. ■ 特徴
          2. ■ メリット(なぜ広く使われているのか)
          3. ■ デメリット(本当の問題点)
          4. ■ 施工上の重要チェックポイント
          5. ■ 向いている住宅
          6. ■ コスト感
    2. ロックウール
          1. ■ 特徴
          2. ■ メリット
          3. ■ デメリット
          4. ■ 向いている住宅
    3. セルロースファイバー
          1. ■ 特徴
          2. ■ メリット
          3. ■ デメリット
          4. ■ 向いている住宅
    4. インシュレーションファイバー(木質繊維)
          1. ■ 特徴
          2. ■ メリット
          3. ■ デメリット
  2. 発泡プラスチック系断熱材
    1. EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)
          1. ■ メリット
          2. ■ デメリット
    2. XPS(押出法ポリスチレンフォーム)
          1. ■ メリット
          2. ■ デメリット
    3. 硬質ウレタンフォーム
          1. ■ ボードタイプ
          2. ■ 現場発泡タイプ
    4. ポリエチレンフォーム
    5. フェノールフォーム
          1. ■ メリット
          2. ■ デメリット
  3. コストイメージ(一般傾向)
  4. 断熱材比較表
    1. 繊維系断熱材
    2. 発泡プラスチック系断熱材
  5. R値換算比較表(代表値で計算)
    1. 繊維系断熱材
    2. 発泡系断熱材
    3. 見えてくること
  6. 100mm施工時の性能比較(R値で比較)
    1. 100mm施工時のR値一覧(大きいほど高性能)
    2. 100mmでの“差”を直感的に(グラスウール比)
    3. 表より判ること
    4. 失敗しないための注意
  7. 断熱材を決める際の注意点
    1. 材料名だけで判断しない
    2. カタログ値より“実際の施工”
    3. 断熱材単体では家は決まらない
    4. コストだけで選ばない
    5. 施工体制を確認する
    6. 将来のメンテナンス性
    7. 最後に

繊維系断熱材

― 空気を“絡め取って”断熱するタイプ ―

繊維の間に空気を含ませて断熱する材料です。本質は「空気層」です。

グラスウール

■ 特徴
  • ガラスを高温で溶かして繊維化し、マット状・ボード状に加工した断熱材。
  • 日本で最も多く使われている断熱材です。

λ値はおおよそ 0.038前後(製品により異なる)。

■ メリット(なぜ広く使われているのか)

 ✔ コストパフォーマンスが非常に高い
 ✔ 不燃材料で火災時も燃えにくい
 ✔ 吸音性が高く、生活音対策にも効果的
 ✔ 施工経験のある業者が多い

つまり、

「きちんと施工されれば非常に優秀」

な材料です。

■ デメリット(本当の問題点)

 ⚠ 施工精度で性能が大きく変わる
 ⚠ たるみ・圧縮・隙間で性能低下
 ⚠ 防湿層が甘いと結露リスク

現場でよく見かける施工不良は、

  • 柱間に隙間
  • コンセント周りのスカスカ
  • 上部のよれ・落ち込み

などです。断熱材は「入っている」だけでは意味がありません。

■ 施工上の重要チェックポイント

 ✅ 柱間にぴったり充填されているか
 ✅ 圧縮しすぎていないか
 ✅ 上部が落ちていないか
 ✅ 防湿シートが破れていないか
 ✅ 気密テープ処理がされているか

■ 向いている住宅

 ✔ 在来木造
 ✔ コストを抑えたい住宅
 ✔ 監理がしっかりできる現場

■ コスト感
  • 最も安価な部類。
  • 断熱材の中では基準的存在。

ロックウール

■ 特徴

玄武岩などの鉱物を溶かして繊維化。
λ値は 約0.038〜0.045程度

■ メリット

 ✔ 非常に高い耐火性能
 ✔ 防音性が高い
 ✔ 比較的湿気に強い

火災安全性を重視する住宅に向きます。

■ デメリット

 ⚠ 重量がある
 ⚠ グラスウールより高価
 ⚠ 施工性はやや劣る

■ 向いている住宅

 ✔ 防火地域
 ✔ 準耐火構造
 ✔ 音を重視する住宅

セルロースファイバー

■ 特徴
  • 新聞紙をリサイクルし、ホウ酸などを添加。
  • 吹込み施工。

λ値は 約0.040前後

■ メリット

 ✔ 調湿性がある
 ✔ 隙間充填性が高い
 ✔ 防音性能が高い
 ✔ エコ志向にマッチ

■ デメリット

 ⚠ 施工業者が限られる
 ⚠ 価格は高め
 ⚠ 密度不足だと沈下

密度管理が命です。


■ 向いている住宅

✔ 自然素材志向
✔ 高気密住宅
✔ 夏の遮熱も重視する家

インシュレーションファイバー(木質繊維)

■ 特徴

木質繊維を板状に成形。
λ値は 約0.040前後

■ メリット

 ✔ 調湿性
 ✔ 蓄熱性が高い
 ✔ 自然素材

夏の熱を遅らせる効果(位相差)が大きい。

■ デメリット

 ⚠ 高価
 ⚠ 防水設計が重要
 ⚠ 施工できる業者が限られる

発泡プラスチック系断熱材

― 空気を“閉じ込める”タイプ ―

気泡の中に空気やガスを閉じ込める構造。

EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)

λ値:約0.034〜0.040

■ メリット

 ✔ 軽量
 ✔ 比較的安価
 ✔ 外断熱向き

■ デメリット

 ⚠ 紫外線に弱い
 ⚠ 防火対策が必要

XPS(押出法ポリスチレンフォーム)

λ値:約0.028〜0.034

■ メリット

 ✔ 水に非常に強い
 ✔ 基礎断熱向き
 ✔ 強度が高い

■ デメリット

 ⚠ 価格はやや高い
 ⚠ 通気層設計が重要

硬質ウレタンフォーム

λ値:約0.022〜0.028

■ ボードタイプ

 ✔ 非常に高断熱
 ✔ 薄くても性能が出る

 ⚠ 高価

■ 現場発泡タイプ

 ✔ 隙間が少ない
 ✔ 気密と相性抜群

 ⚠ 技量差が出やすい
 ⚠ 厚み管理が重要

ポリエチレンフォーム

  • 軽量で防水用途向き。
  • 断熱材としては補助的。

フェノールフォーム

λ値:約0.020前後(非常に小さい)

■ メリット

 ✔ 業界トップクラスの断熱性能
 ✔ 防火性が高い

■ デメリット

 ⚠ 高価
 ⚠ 割れやすい

コストイメージ(一般傾向)

安い
 グラスウール
  ↓
 EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)
  ↓
 XPS(押出法ポリスチレンフォーム)
  ↓
 ウレタンフォーム
  ↓
 フェノールフォーム
高い

※ただし厚みや工法で逆転します。

断熱材比較表

繊維系断熱材

材料断熱の仕組み熱伝導率(λ値)目安価格帯主な用途特徴
グラスウール空気を絡める約0.035〜0.040比較的安い壁・天井・床不燃・防音性◎
ロックウール空気を絡める約0.038〜0.045やや高め壁・天井耐火性◎・防音◎
セルロースファイバー空気を絡める(吹込)約0.040前後やや高い壁・天井調湿性◎・防音◎
木質繊維(インシュレーションファイバー)空気を絡める約0.040前後高め壁・屋根調湿・蓄熱性◎

発泡プラスチック系断熱材

材料断熱の仕組み熱伝導率(λ値)目安価格帯主な用途特徴
EPS(ビーズ法)空気を閉じ込める約0.034〜0.040比較的安い外断熱・基礎軽量
XPS(押出法)空気を閉じ込める約0.028〜0.034やや高い基礎・外断熱水に強い・強度◎
硬質ウレタンフォーム気泡にガス封入約0.022〜0.028高め壁・屋根高断熱
フェノールフォーム気泡にガス封入約0.020前後高い壁・屋根非常に高断熱・防火性◎

R値換算比較表(代表値で計算)

 ※λ値は代表的な中央値で計算
 ※厚み100mm=0.10m
 ※厚み50mm=0.05m

繊維系断熱材

材料λ値(代表)R値(50mm)R値(100mm)
グラスウール0.0381.322.63
ロックウール0.0401.252.50
セルロース0.0401.252.50
木質繊維0.0401.252.50

発泡系断熱材

材料λ値(代表)R値(50mm)R値(100mm)
EPS0.0361.392.78
XPS0.0301.673.33
硬質ウレタン0.0242.084.17
フェノールフォーム0.0202.505.00

見えてくること

100mmで比較すると

 フェノールフォーム(R=5.0)
   ↓
 ウレタン(R=4.17)
   ↓
 XPS(R=3.33)
   ↓
 EPS(R=2.78)
   ↓
 グラスウール(R=2.63)

100mm施工時の性能比較(R値で比較)

前提:厚み100mm=0.10m
計算:R=0.10 ÷ λ
(※λ値は代表値。製品グレードで前後します)

100mm施工時のR値一覧(大きいほど高性能)

材料λ値(代表)W/mKR値(100mm)㎡K/W性能の目安
フェノールフォーム0.0205.00非常に高い
硬質ウレタンフォーム0.0244.17とても高い
XPS(押出法ポリスチレン)0.0303.33高い
EPS(ビーズ法ポリスチレン)0.0362.78やや高い
グラスウール0.0382.63標準〜やや高い
ロックウール0.0402.50標準
セルロースファイバー0.0402.50標準
木質繊維ボード0.0402.50標準

100mmでの“差”を直感的に(グラスウール比)

基準:グラスウール100mm(R=2.63)= 1.00 として比較

材料R値(100mm)グラスウール比
フェノールフォーム5.001.90倍
硬質ウレタンフォーム4.171.59倍
XPS(押出法ポリスチレン)3.331.27倍
EPS(ビーズ法ポリスチレン)2.781.06倍
グラスウール2.631.00倍
ロックウール2.500.95倍
セルロース2.500.95倍
木質繊維2.500.95倍

表より判ること

100mmという同じ厚みでも、材料で最大「約2倍」の差が出る。ただし、その差が住宅全体の快適性にそのまま2倍効くわけではありません。

理由は:

  • 窓の性能(ここが最大の弱点になりやすい)
  • 断熱欠損(隙間・つぶれ・欠け)
  • 気密(すき間風=対流)
  • 熱橋(構造体や金物で熱が逃げる)

があるからです。

失敗しないための注意

材料より「施工品質」の影響が大きい場面があります。たとえば、グラスウールでも隙間なく、たるみなく、気密層まで丁寧にやると強い。逆に、高性能ボードでも継ぎ目・端部処理が甘いと「熱が抜ける道」ができてしまう。

断熱材は「高い材料ほど安心」ではなく、
「その材料を確実に施工できる体制があるか」で決まります。

断熱材を決める際の注意点

 断熱材にはさまざまな種類があるということを説明しました。しかし、最も大切なのは「どの材料か」よりも、「どう使うか」です。ここでは、材料を選ぶ際に押さえておくべきポイントを整理します。

材料名だけで判断しない

「ウレタンだから高性能」、「グラスウールだから安いだけ」このような単純な判断は危険です。断熱性能は、

 ✔ 熱伝導率(λ値)
 ✔ 厚み
 ✔ 施工精度

で決まります。同じ材料でも厚みが違えば性能は全く変わります。

カタログ値より“実際の施工”

カタログのλ値は理想状態の数値です。しかし現場では、

 ⚠ 隙間
 ⚠ 圧縮
 ⚠ よれ
 ⚠ 防湿不良
 ⚠ 気密処理不足

などで性能が大きく落ちることがあります。断熱材は「入っている」ことが重要なのではなく、「正しく施工されている」ことが重要です。

断熱材単体では家は決まらない

HEAT20 G2やZEHを目指す場合、

 ✔ 窓性能
 ✔ 気密性能(C値)
 ✔ 換気計画
 ✔ 日射取得・遮蔽設計

が断熱材以上に影響します。断熱材はあくまで“構成要素の一つ”です。

コストだけで選ばない

安価な材料でも、厚みを増やせば高性能になります。逆に高価な材料でも、

  • 厚みが不足
  • 施工が甘い

と意味がありません。重要なのは、

「予算の中で、最も合理的な断熱設計をすること」

です。

施工体制を確認する

施主が必ず確認したいのは、

 ✔ 断熱施工写真を見せてもらえるか
 ✔ 気密測定を行うか
 ✔ 防湿施工のチェック体制があるか

材料よりも“会社の姿勢”が重要です。

将来のメンテナンス性

断熱材は壁の中に入ります。

 ✔ 湿気管理はどうするのか
 ✔ 経年劣化はどう考えるのか
 ✔ シロアリ対策は?

長期視点で考えることが重要です。

最後に

断熱材選びで最も大切なのは、

「材料の優劣」ではなく、「家全体の設計思想」

です。高断熱は材料で決まるのではありません。設計と施工で決まります。

断熱材は魔法の材料ではない。正しく設計され、正しく施工されて初めて力を発揮する。

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