ひび割れ(クラック)の中には、施工不良や構造的欠陥とは無関係に、材料の性質上自然に発生するものがあります。その代表が「乾燥収縮」や「温度変化」によるクラックです。これらは必ずしも危険ではありませんが、放置してよいのか、対処すべきかの判断が必要です。
乾燥収縮とは?
これは、材料が乾くときに収縮する自然現象であり、モルタルやコンクリートなど、水を混ぜてつくる建材は、乾燥すると体積が減ります。この収縮によって、表面に細かいクラック(ヘアクラック)が発生することがあります。
よくあるケース
材料 | 状況 | クラックの特徴 |
---|---|---|
モルタル外壁 | 施工後1ヶ月以内 | 幅0.1〜0.2mm程度の浅い網目状の割れ(ヘアクラック) |
コンクリート基礎 | 打設後の急激な乾燥 | 縦・横・斜め方向に細く短い割れ |
ALCパネル・サイディング | 取付後の数ヶ月 | 表面の塗膜や目地に微細な亀裂 |
一般的には構造的な問題は少ないが、防水性の低下を招くことがあるため、塗装・シーリングで補修することが望ましい場合があります。
温度変化によるひび割れ
外気温の変化により建物が動き、建材は膨張・収縮を繰り返します。これが繰り返されることで、継ぎ目や仕上げ面に応力がかかり、クラックが発生します。
特に注意すべき状況
状況 | クラックの原因と特徴 |
---|---|
昼夜の温度差が大きい地域 | 1日での膨張収縮が激しく、サイディングや塗装にヒビが入りやすい |
夏と冬の気温差が大きい地域 | 建材に長期間かけてひずみが蓄積し、目地が開く、パネルが割れるなどの症状が出やすい |
日当たりの強い外壁面 | 紫外線と熱の影響で塗膜の劣化が進み、細かい割れが出やすい |
外壁材の選定・施工の際に、温度変化への追従性(弾性)を考慮することが重要です。
「自然現象のクラック」とどう付き合うか?
これらのクラックは、必ずしも構造的な危険を意味するものではありませんが、以下のような観点でチェックし、必要に応じて補修を行うことが重要です。
放置できるケース
- 幅が0.2mm以下の浅いクラック
- 構造部ではなく仕上げ材表面にとどまっている
- 雨水の侵入や白蟻のリスクがない位置(軒下や室内)
補修すべきケース
- 外壁・屋根の防水性能に影響する位置のクラック
- クラックの周囲が黒ずんでいる、カビがある
- 繰り返し補修しても再発するクラック(構造変動の可能性あり)
「自然なクラックでも、放置しないで見守る」という姿勢が大切です。
クラックを予防する設計・施工上の工夫
対策 | 内容 |
---|---|
伸縮目地の設置 | あらかじめクラックが入りそうな位置に目地を設け、そこに力を逃がす |
弾性塗料の使用 | 塗膜に柔軟性を持たせることで、微細な割れを防ぐ |
適切な乾燥養生 | モルタルやコンクリートを急激に乾かさず、適切な期間をかけて硬化させる |
「割れない建物」ではなく、「割れても問題が起こらない設計」が理想です。
まとめ:「自然に起こるクラック」は、予測と対処がカギ
乾燥収縮や温度変化によるひび割れは、建材の性質上避けられない自然現象です。しかし、その割れが放置可能か補修すべきかを正しく判断し、必要に応じた対処を行うことで、住宅の性能と寿命を守ることができます。乾燥収縮や温度変化によるひび割れは“自然な現象”ですが、“放置していいかどうか”は観察と知識が必要です。予防と点検で、トラブルを未然に防ぎましょう。
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