材料選定の工夫(可とう性・防水性の確保)

建物のひび割れ対策特集
「割れにくい材料」を選ぶことで、予防は始まっている

 建物のひび割れを防ぐには、設計や施工の工夫に加えて、そもそも「割れにくい材料」を選ぶことが大切です。材料にはそれぞれ、「伸び縮みへの強さ(可とう性)」や「水を通しにくい力(防水性)」が異なります。この章では、クラックに強い材料の選び方や、仕上げ・構造別に有効な選定の工夫を具体的に紹介します。

可とう性とは?

 可とう性(かとうせい)とは、材料が変形や伸縮に柔軟に対応できる性質を指します。建物の動きに「追従できる」素材が、割れを防ぐために必要な要因のひとつです。硬くて剛性の高い材料は、外力や乾燥収縮に対して「ひび割れ」や「剥がれ」となって現れやすい一方、可とう性のある材料は変形を吸収してひび割れを起こしにくくなります。

可とう性の高い代表的な材料

材料用途特徴
弾性シーリング材(変成シリコン・ポリウレタンなど)目地部・開口部まわり外壁の動きに追従し、雨水侵入を防止
弾性塗料(弾性リシン・弾性シリコン)外壁仕上げヘアクラックに対応、表面で水を弾く
繊維混入モルタルモルタル下地クラックの進行を抑制し、割れにくい下地を形成
耐震性のある接着剤・タイルボンド内外装材の固定振動時にも追従する柔軟性がある

「硬い=良い材料」とは限らず、“動きに強い素材”こそがひび割れ対策には有効です。

防水性の確保も、ひび割れ対策の一環

 ひび割れの中でも、特に深刻なのが「防水層まで達するクラック」です。ここに水が浸入すると、構造体の腐朽・白蟻被害・内部結露・鉄筋の錆びなど、二次的な重大被害につながります。

防水性に優れた素材の選定ポイント

材料分類具体例特徴
外壁塗料フッ素系・シリコン系・弾性アクリル系など撥水性と耐候性に優れ、経年劣化しにくい
防水シート・防水層透湿防水シート、改質アスファルト、FRP防水など屋根・ベランダ・壁内での二次防水に重要
屋根材ガルバリウム鋼板・陶器瓦継ぎ目の処理と防水下地の組合せが肝心

 外部に面する材料は、「水が入らないこと」と「万が一入っても止められること」の両面から選ぶ必要があります。

ケース別:材料選定の具体的工夫

シーン推奨材料と理由
モルタル塗りの外壁弾性塗料+繊維混入モルタル → 下地から仕上げまで柔軟性を確保
サイディングの目地可とう性の高い変成シリコン系シーリング材 → 外壁の動きに追従
屋根まわり防水下地に改質アスファルトシート → 瓦や金属屋根の下でも安心
ベランダ・バルコニーFRP防水やウレタン防水 → 収縮に追従し、軽量で施工しやすい

仕上げ材だけでなく、下地・接着剤・シーリング材との「材料の相性」も重要な検討ポイントです。

素材選定+施工精度で、はじめて「割れにくい家」になる

良い材料を選んでも、厚み・混合比・乾燥時間などの施工条件を守らなければ、可とう性や防水性は十分に発揮されません

適切な材料選定のためのチェックポイント

  • 使用場所(屋外・屋内)に合っているか?
  • 温度変化・湿気・紫外線への耐性は十分か?
  • 他の素材との「付着性」や「収縮率の違い」は許容範囲か?
  • 経年変化・再施工のタイミングは明確か?

「安価」「手に入りやすい」だけで材料を選ぶのではなく、“建物の特性や環境”に合った材料を選ぶ目が求められます。

まとめ:「ひび割れを防ぐ材料」は、あなたの家の“防御力”そのもの

考慮点なぜ重要か?
可とう性建物の動きに追従し、クラックを防ぐ
防水性クラックが入っても雨水が浸入しにくい
材料の組み合わせ伸縮性・付着力・耐久性の相性が建物全体の保護につながる

材料は「見えない盾」。設計・施工とともに、正しい材料選びこそが長寿命住宅のカギです。

タイトルとURLをコピーしました