ひび割れ(クラック)を見つけたとき、多くの人が最初に悩むのは「この割れ、今すぐ直したほうがいいのか?」「しばらく様子を見てもいいのか?」という判断です。しかし、正しい判断には割れの性状や場所、建物の状況を総合的に見る必要があります。この章では、放置できるひび割れと、補修が必要なひび割れを見極める判断基準をわかりやすく解説します。
基本の3要素:「幅」「深さ」「方向」で判断
まず、ひび割れの基本情報をチェックしましょう。以下の3つの視点が、放置か補修かを判断する最初の基準となります。
判定項目 | 放置してよい例 | 補修すべき例 |
---|---|---|
幅 | 0.2mm以下(ヘアクラック) | 0.3mm以上(雨水浸入や構造への影響が懸念) |
深さ | 表面のみの浅い割れ | コンクリートや構造材まで達している深い割れ |
方向 | 横・表層のクラック | 斜め・縦方向のクラック(構造的影響が疑われる) |
幅が広い・深い・斜めに走る割れは、早期補修を検討しましょう。
発生箇所別で見る判断の目安
ひび割れの位置によっても、危険度は大きく異なります。以下のような箇所に発生している場合は、より慎重な判断が必要です。
● 放置しても問題ない可能性が高い箇所
- モルタル外壁の表層にある浅いヘアクラック(特に乾燥直後)
- サイディングボードの塗装面にできた極小のひび(構造には無関係)
● 補修が必要な可能性が高い箇所
- 基礎にできた縦や斜めの深いクラック
- 開口部周囲に発生した斜めの割れ
- コンクリートのひび割れから錆びた鉄筋が見えている(爆裂)
- 目地のシーリング切れとともに板が浮いている(サイディング)
クラックの“位置”は、建物のどこに力が集中しているかを示す重要な情報です。
見た目ではわからない場合は「進行性」をチェック
一見小さくても、割れが進行している(広がっている・増えている)場合は補修が必要です。次のような変化があれば、要注意です:
- 数週間〜数か月でクラックの幅が広がっている
- 新たなクラックが近くに出てきた
- 雨の日に内部に雨染みやカビが発生する
- クラックの周囲に湿気・におい・白華(エフロレッセンス)が出ている
静的な割れ(固定された割れ)か、動的な割れ(進行中)かが判断のカギになります。
判断が難しいときは「クラックスケール」と「専門家」が助けになる
● クラックスケールで簡易測定
市販のクラックスケール(透明な厚みゲージ)で幅を測れば、0.2mmか0.3mmかの違いが一目で分かります。
● 専門家の目で安全性を判断
- 建築士や住宅診断士(ホームインスペクター)による現地診断
- ドローン・赤外線カメラ・ファイバースコープなどの調査機器を使った精密診断も可能
「見た目」だけでは判断できない場合こそ、専門家の意見が最も信頼できます。
まとめ:迷ったときは以下の表を活用!
クラックの状態 | 判断 | 対応 |
---|---|---|
幅0.2mm以下で浅い | 様子見(経過観察) | 定期点検・再確認 |
幅0.3mm以上・深く・斜め | 補修必要 | 専門家の診断+補修 |
基礎・構造部に発生 | 補修優先度高 | 早期対応で劣化防止 |
雨漏り・カビ・湿気あり | 放置NG | 緊急調査・補修要 |
判断が難しい | 専門家へ相談 | 点検レポートの取得 |
「小さなクラック」は放置できることもありますが、
「進行するクラック」や「構造にかかわるクラック」は、早めの対応があなたの家を守ります。
「様子を見る勇気」よりも、「調べて安心」の一歩を大切にしましょう。
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