ひび割れ(クラック)は、ただ「ある/ない」ではなく、その幅・深さ・方向によって、
どれほど深刻な問題かを読み取る手がかりになります。この章では、クラックの性状を観察することで何がわかるのかを、具体的に解説します。
ひび割れの「幅」からわかること ~0.3mmがひとつの判断基準~
クラックの幅は、構造に対する影響度や補修の必要性を判断する重要なポイントです。
一般的な目安
幅の目安 | 判定の目安 | 備考 |
---|---|---|
0.2mm以下 | ヘアクラック(非構造) | 構造に影響なし。経過観察または塗装補修程度。 |
0.3mm以上 | 構造クラックの可能性 | 雨水浸入・鉄筋腐食・構造劣化の懸念あり。要調査。 |
1.0mm以上 | 高リスク | 早急な補修・構造診断が必要。 |
幅が広いほど、構造体に力が集中している、または材料の破断が進んでいる可能性が高くなります。0.3mm以上かどうかが、構造上の危険を判断する目安です。
ひび割れの「深さ」からわかること ~表面的か、それとも内部まで達しているか~
ひび割れの深さもまた、構造的な危険性を見極めるポイントです。
見分けるポイント
- 表面だけの浅い割れ(非構造クラック)
→ 仕上げ材やモルタルの表面だけに発生。塗装や表面補修で対応可能。 - 内部にまで貫通する深い割れ(構造クラック)
→ 指で押すと空洞感がある、割れ目が黒ずんでいる、水がしみ込むなどの兆候あり。
→ コンクリートの場合は「鉄筋露出」がないか確認する。
深さは見た目で分かりにくいことが多いため、必要に応じて専門家による調査が重要です。
ひび割れの「方向」からわかること~力のかかり方・構造の弱点が現れる~
クラックの走っている方向を見ることで、どんな外力がかかって割れたのかが推測できます。
方向別の特徴
クラックの方向 | 考えられる原因・影響 |
---|---|
縦方向 | 地盤沈下や構造体のたわみ。基礎や柱に力が集中している。 |
横方向 | 温度差や引張力。外壁や開口部周囲に多い。 |
斜め(特に45度) | 地震・風圧など横からの力。筋かい・耐力壁の破壊サイン。 |
網目状(ヘアクラック) | 表面材の乾燥収縮。非構造クラック。 |
放射状・階段状 | 大きな力の集中。地震・施工不良・構造破断の可能性あり。 |
「斜めに入ったクラック」は特に注意が必要です。それは、構造的な限界点が破れてしまったサインかもしれません。
クラックスケールで測ってみよう
市販されている「クラックスケール(透明の厚さゲージ)」を使えば、クラックの幅を簡単に測定できます。誰でも視覚的に測れるため、日常の点検にも活用できます。
クラックスケールの使い方

- クラック部分にスケールを重ねる
- ひびの幅とぴったり一致する目盛りを見る
- 幅0.3mmを超えていれば、補修や調査を検討
まとめ:クラックは“情報を発するサイン”
クラックは、「建物の声」です。その幅・深さ・方向を読むことで、建物がどんなストレスを受け、どこが弱っているのかを教えてくれます。
- 幅が0.3mm以上あるか?
- 深さが表面だけで済んでいるか?
- 方向が斜めや縦に走っていないか?
これらを意識して観察することで、「ただの割れ」ではなく、“早期対応すべき劣化の兆候”として捉えることができます。
「放置して後悔」よりも、「早めに気づいて安心」を選びましょう。
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