中古住宅を調査・相談していると、
「図面と今の家の間取りが違う」
「そもそも図面が残っていない」
というケースは決して珍しくありません。分からない家は判断できないということになります。しかし、図面と現況が一致していない住宅、あるいは図面が存在しない住宅には、見えにくい大きなリスクが潜んでいます。
図面は「家の設計思想」を示す重要な資料
図面は単なる間取り図ではありません。
- どこに耐力壁があるのか
- 柱や梁がどの位置に入っているのか
- 基礎や構造がどう計画されているのか
といった、建物の安全性を支える設計情報そのものです。この情報が無い、または現況と食い違っている場合、家の性能を正しく判断することが難しくなります。
図面と現況が違う場合に考えられる背景
図面と現況が違う住宅では、次のような可能性が考えられます。
- 増改築やリフォームが行われている
- 壁を抜いて間取りを変更している
- 建築途中で計画変更がされている
- 建築確認を伴わない工事が行われている
これらが 構造検討や法的確認なしに行われている場合、耐震性や適法性に問題が生じている可能性があります。
構造的リスクが見えなくなる
図面が無い、または信用できない場合、次のような重要な点が分からなくなります。
- 抜いてはいけない壁が抜かれていないか
- 柱や梁の配置が適切か
- 耐震補強が可能な構造か
見た目がきれいでも、内部構造が分からない家は、安全性を評価できません。
法的リスクにつながる可能性
図面と現況が違う場合、法的な問題を抱えていることもあります。
- 建築確認を受けていない増築
- 容積率・建ぺい率オーバー
- 接道条件や高さ制限への不適合
こうした問題があると、
- 将来の増改築ができない
- 建替え時に建築確認が下りない
- 売却時にトラブルになる
といったリスクにつながります。
修繕・改修費用が読めない
図面が無い住宅では、
- どこを直せばよいのか
- どこまで壊す必要があるのか
が分からず、リフォームや耐震改修の費用が大きくぶれる傾向があります。
「思ったより安く済むはずだった」
「工事途中で追加費用が発生した」
といったトラブルも起こりやすくなります。
金融機関・保険で不利になる場合も
図面や構造が不明確な住宅は、
- 住宅ローンの審査が厳しくなる
- 保険の条件が不利になる
こともあります。特に、耐震性や適法性を説明できない住宅は、金融機関側のリスク判断に影響します。
図面が無い=すぐに諦める必要はない
誤解されがちですが、図面が無い住宅でも、必ずしも購入不可というわけではありません。専門家が、
- 現況調査
- 部分的な確認
- 法的整理
を行うことで、リスクの程度を把握し、判断材料を整えることは可能です。
専門家による確認が不可欠な理由
図面と現況の違いや、図面が無い問題は、一般の方が単独で判断するのは非常に困難です。だからこそ、
- 構造
- 法規
- 将来の改修可能性
を総合的に見られる建築士などの専門家の関与が不可欠になります。
最後に:「分からないまま買わない」ことが最大の防御
中古住宅購入において最も危険なのは、「よく分からないけれど大丈夫だろう」と判断してしまうことです。図面と現況が違う、あるいは図面が無い住宅ほど、立ち止まって確認する勇気が必要です。それが、後悔しない住まい選びにつながります。

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