中古住宅を購入する際、多くの方が、「建物の状態」や「耐震性」には注意を払いますが、書類や法的なチェックが後回しになってしまうケースが少なくありません。しかし、建築確認書や検査済証の有無は、その建物が“法的にどういう立場にあるのか”を示す極めて重要な情報です。ここを確認せずに購入を進めることは、大きなリスクを伴います。
建築確認とは何か
建築確認とは、建物を建てる前に、
- 建築基準法
- 都市計画法
- 各種条例
などに 適合しているかどうかを行政または指定確認検査機関が審査する制度です。住宅は本来、建築確認を受け、確認済証が交付されてから着工することが原則です。
検査済証とは何を示す書類か
検査済証とは、建物が完成したあとに、
- 設計通りに工事が行われたか
- 建築基準法に適合した状態で完成しているか
を検査し、「適法に完成した建物である」と確認された証明書です。つまり、
- 建築確認 → 計画が適法
- 検査済証 → 完成した建物が適法
という役割の違いがあります。
建築確認・検査済証が「ある住宅」の意味
これらの書類がそろっている住宅は、
- 法的に建ててよい場所・内容で建てられている
- 完成時点では法令に適合していた
- 将来の増改築や建替えの検討がしやすい
といった 大きな安心材料になります。特に中古住宅では、検査済証の有無が、将来の選択肢を左右することも少なくありません。
建築確認・検査済証が「無い住宅」で起こりやすい問題
一方、これらの書類が無い場合、次のような問題が生じる可能性があります。
- 建築当時から法令違反の可能性がある
- 増改築時に建築確認が下りない
- 金融機関の融資条件が厳しくなる
- 売却時にトラブルになりやすい
特に注意したいのは、「建っている=合法」ではないという点です。
なぜ中古住宅では書類が揃っていないことが多いのか
中古住宅では、
- 昭和の時代に建てられた住宅
- 建築当時は検査済証の取得が徹底されていなかった
- 増改築を繰り返す中で書類が紛失した
といった理由から、建築確認書や検査済証が残っていないケースも多く見られます。しかし、「古いから仕方がない」で済ませてよい問題ではありません。
書類が無い=すぐに買えない、ではない
誤解されがちですが、建築確認書や検査済証が無いからといって、必ずしも購入できないわけではありません。ただし、
- 現況が法令に適合しているか
- 違反がある場合、是正が可能か
- 将来の増改築や建替えに制限が出ないか
を、専門家の視点で慎重に確認する必要があります。
専門家は書類と現況をどう見ているか
建築士などの専門家は、
- 建築確認・検査済証の有無
- 設計図面との整合性
- 現況建物が法令に適合しているか
を総合的に確認します。書類が無い場合でも、現況調査と法的整理によって、リスクの程度を判断します。これは、一般の購入検討者だけでは難しい作業です。
書類チェックは「将来の安心」につながる
建築確認・検査済証の確認は、今すぐの安全性だけでなく、
- 将来リフォームできるか
- 建替えできるか
- 売却時に困らないか
といった、長期的な安心に直結します。中古住宅を「安心して住み続けられる資産」とするために、まずはこの書類の有無をしっかり確認しましょう。
まとめ
建築確認書や検査済証は、その住宅が建築基準法などの法令に適合して建てられたことを示す重要な書類です。中古住宅では、建物の状態が良く見えても、これらの書類がそろっていないケースも少なくありません。
書類が無い場合には、増改築や建替えの際に建築確認が下りなかったり、金融機関の融資条件が厳しくなったりする可能性があります。一方で、書類が無いからといって直ちに購入できないわけではなく、現況が法令に適合しているかを専門家が確認することで、リスクの整理は可能です。
中古住宅を安心して取得するためには、書類の有無を起点に、将来を見据えた冷静な判断が欠かせません。

目次