擁壁をチェックする専門家とは?

擁壁特集
そして、どうやって見つければいいのか

 擁壁の安全性について調べていくと、最終的には「専門家に確認してもらいましょう」
という結論に行き着きます。しかし多くの方が、そこで立ち止まってしまいます。

「どんな人が擁壁の専門家なのか分からない」
「どこに相談すればいいのか見当がつかない」

 擁壁は、建物・地盤・法律が複雑に絡み合う分野です。そのため、“誰でもいいから聞けばいい”というわけにはいかないのが実情です。それでは、その擁壁をチェックする専門家とは、どういう人でどこにいるのでしょうか。ここでは、それを考えてみます。

擁壁チェックの専門家に求められる基本条件

 まず押さえておきたいのは、擁壁をチェックする専門家には、次の条件が必要だということです。

・擁壁の構造と地盤の関係を理解している
・建築基準法・宅地造成工事規制法を把握している
・工事ありきではなく、第三者として判断できる

 この3つがそろってはじめて、「安心して相談できる専門家」と言えます。

構造・造成に詳しい建築士

 擁壁チェックの中心となる専門家は、擁壁や造成、地盤に詳しい建築士です。このタイプの建築士は、

・擁壁の構造形式の妥当性
・高さ・勾配・控え壁の有無
・法的に問題がないか(既存不適格など)

 を、建築と法律の両面から判断できます。特に重要なのは、工事を請け負う立場ではない第三者建築士であることです。

地盤・造成に詳しい技術者

 擁壁は、背面地盤と切り離して考えることができません。地盤調査や造成設計の経験が豊富な技術者は、

・盛土か切土か
・地下水や雨水の影響
・地形的なリスク

 といった点を、地盤の視点から評価します。

擁壁・造成を扱ってきた土木技術者

 擁壁設計や造成工事の実務経験が豊富な土木技術者も、重要な専門家です。

・土圧・排水・基礎構造の妥当性
・補修・補強の現実性
・施工上の注意点

 を、実務的な視点で判断できます。

第三者の建築・住宅インスペクター

 既存住宅を第三者として調査する建築インスペクターの中には、擁壁まで含めて診断できる人がいます。

・目視調査によるリスク評価
・追加調査が必要かどうかの判断
・調査結果を分かりやすく説明

 といった点に優れており、一般の方が最初に相談しやすい存在です。

擁壁の専門家をどうやって見つければいいのか

 ここが、最も重要で、最も分かりにくいポイントです。
以下の方法を組み合わせて探すことをおすすめします。

①「擁壁」「造成」を明確にうたっている専門家を探す

 ホームページや案内文に、

・「擁壁の調査・診断」
・「造成地・傾斜地の安全確認」
・「擁壁を含めたインスペクション」

 といった記載があるかを確認しましょう。住宅全般」だけで、擁壁に触れていない場合は注意が必要です。

②「調査・診断」と「工事」を分けているかを見る

 信頼できる専門家は、

・まず現状を調査・診断する
・その結果をもとに判断を示す
・必要であれば複数の選択肢を提示する

 というスタンスを取ります。最初から
「すぐ工事が必要」
「この方法しかない」
と言う場合は、一度立ち止まって考えましょう。

③ 相談時の説明が分かりやすいかを確認する

 初回相談や問い合わせの段階で、

・専門用語ばかり使わない
・こちらの話をよく聞いてくれる
・「分からないことは分からない」と言ってくれる

 こうした姿勢があるかどうかは、非常に重要な判断材料です。

④ 不動産会社・工務店任せにしない

 土地購入や建替えの場面では、不動産会社や工務店から、「問題ありませんよ」と言われることもあります。

 しかし彼らは、擁壁を専門に判断する立場ではないことがほとんどです。不安がある場合は、必ず第三者の専門家を別に探すことが大切です。

まとめ:専門家は「探し方」で差が出る

 擁壁の問題は、早く気づき、正しく判断すれば、選択肢は必ずあります。そのために重要なのは、

・擁壁を見られる専門家を知ること
・そして、その専門家を正しく探すこと

 「工事をする人」ではなく、「まず判断してくれる人」を見つけることが、住まいと家族を守るための最も確実な一歩です。

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