耐震改修工事と聞くと、「家を大きく壊す工事なのでは」「費用がいくらかかるのか分からない」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。しかし実際の耐震改修工事は、建物の状態を丁寧に調査し、弱点となっている部分を的確に補強していく工事が中心です。
木造住宅の耐震改修で行われる工事内容は、大きく分けると次の5つに整理できます。
- 壁の補強
- 基礎の補強
- 接合部の強化
- 屋根の軽量化
- 劣化部分の是正
本章では、これらの工事がそれぞれどのような目的で行われ、どのような点に注意が必要なのかを、実際の耐震改修工事の流れに沿って分かりやすく解説します。
壁の耐震補強(耐力壁の追加・強化)
最も基本となる耐震改修
耐震改修工事の中心となるのが、壁の補強です。古い木造住宅では、地震の揺れに抵抗する「耐力壁」が不足していたり、配置が偏っていたりするケースが多く見られます。
具体的には、次のような工事が行われます。
- 筋かい(すじかい)の新設・入れ替え
- 構造用合板を用いた耐力壁の追加
- 金物(接合金物・筋かい金物)の設置による接合部強化
これらは、建物全体のバランスを考えながら配置することが重要で、単に壁を増やせば良いというものではありません。耐震診断結果をもとに、どの方向にどれだけの補強が必要かを判断します。
基礎の補強工事
見落とされがちだが重要なポイント
壁をいくら強くしても、基礎が弱ければ建物は安全になりません。特に、無筋コンクリート基礎(鉄筋が入っていない基礎)の住宅では、基礎補強が耐震改修の前提条件となる場合があります。
よく行われる基礎補強の例としては、
- ひび割れ補修(エポキシ樹脂注入など)
- 鉄筋コンクリートによる基礎の増し打ち
- アンカーボルトの後施工
などがあります。基礎補強は工事費がかかりやすいため、「どこまで行うか」の判断が非常に重要であり、建物の状態や予算とのバランスを見ながら計画します。
接合部の補強(金物補強)
倒壊を防ぐ“要”となる工事
地震被害の多くは、柱や梁が折れる前に、接合部が外れて建物が崩れることで発生します。そのため、柱と土台、柱と梁などの接合部に金物を設置する補強は、耐震改修において非常に効果的です。
代表的な金物補強には、
- ホールダウン金物、
- 柱頭・柱脚金物、筋違いの設置
- 羽子板ボルト・プレート金物の追加
などがあります。ただし、金物補強は設置位置や施工精度によって効果が大きく左右されるため、図面通りに施工されているか、工事中の確認が欠かせません。
屋根の軽量化工事
耐震性能を一気に改善できる場合も
重い屋根は、地震時に建物へ大きな負担をかけます。そのため、瓦屋根から軽量な屋根材へ葺き替える「屋根の軽量化」は、耐震性向上に非常に効果的な改修です。屋根を軽くすることで、
- 建物の揺れが小さくなる
- 柱・壁・基礎への負担が減る
- 壁補強量を抑えられる場合がある
といったメリットがあります。耐震改修では、壁補強だけでなく屋根も含めて総合的に考えることが重要です。
劣化部分の補修・交換
「補強以前」の問題への対応
シロアリ被害や腐朽が進んでいる住宅では、いくら補強しても本来の耐震性能は発揮されません。 そのため、耐震改修工事とあわせて、
- 腐った土台・柱の交換
- シロアリ対策処理
- 雨漏り箇所の補修
などが行われることも多くあります。これらは直接「耐震補強」とは言えませんが、安全な耐震改修を成立させるための重要な工事です。
まとめ
耐震改修工事は「どこを、なぜ補強するか」が重要であり、単に壁を増やしたり、金物を取り付けたりする工事ではありません。本当に大切なのは、建物の弱点を正しく把握し、必要な部分に適切な補強を行うことです。
一般的な木造住宅の耐震改修工事をまとめると以下の通りです。
- 壁の補強
地震の揺れに耐えるための耐力壁を適切に配置し、建物全体のバランスを整える。 - 基礎の補強
無筋基礎やひび割れのある基礎を補強し、上部構造を確実に支えられる状態にする。 - 接合部の強化
柱・梁・土台などの接合部を金物で補強し、地震時の抜けや外れを防ぐ。 - 屋根の軽量化
建物の重心を下げ、地震時の揺れや負担を軽減する。 - 劣化部分の是正
シロアリ被害や腐朽、雨漏りなどを改善し、補強工事の効果を確実なものにする。
これらはすべて、単独で考えるのではなく、建物全体を見ながら組み合わせて判断することが重要です。 また、耐震改修工事には「どこまで行うか」という現実的な判断も欠かせません。
次節では、こうした耐震改修工事において、実際の現場で失敗が起こりやすいポイントについて詳しく解説していきます。「せっかく工事をしたのに期待した効果が得られなかった」という事態を防ぐためにも、ぜひ続けてご覧ください。

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