白蟻はあらゆる木材を食べるわけではありません。実際には避けられる木材や、明らかに被害が少ない樹種が存在します。それらには共通して「白蟻が嫌う成分」や「構造的に噛み砕きにくい性質」が備わっており、防蟻処理をせずとも一定の耐性を示す“天然の防蟻木材”といえます。本節では、ヒノキ・チーク・イペなどを中心に、食われにくい木材の特徴と活用方法を解説します。
白蟻が嫌う木材の特徴とは?
食われにくい木の共通点
特性 | 内容 |
---|---|
防蟻性のある精油成分を含む | 白蟻が嫌う芳香成分や毒性物質が含まれている(ヒノキチオール、チークオイルなど) |
材が硬くて密度が高い | 噛み砕きにくく、蟻道の形成も困難(特に広葉樹のハードウッド) |
腐朽にも強く、湿気を寄せつけにくい | 白蟻が好む腐朽菌の繁殖条件が整いにくい |
白蟻は「湿っていて」「柔らかく」「腐りかけている」木が大好きです。
逆に、「硬くて乾いていて匂いが強い」木は嫌います。
食われにくい代表的な木材
ヒノキ(檜)【国産・針葉樹】
- 独特の香りと高い耐久性を持つ日本の代表的な構造材
- ヒノキチオールを含み、防蟻・防腐効果が非常に高い
- 特に心材は被害例が極めて少なく、古民家や神社仏閣でも数百年の耐久例あり
- 土台や柱、浴室まわりにも最適
チーク(Teak)【東南アジア産・広葉樹】
- 世界的に有名な高級耐久木材。耐水性と寸法安定性が高い
- 油分を多く含み、白蟻・海虫・腐朽菌に強いため、デッキや船舶、家具などに利用される
- 加工性はやや悪いが、耐久性ではトップクラス
イペ(Ipe)【南米産・広葉樹】
- 非常に硬くて重い木材。表面は滑らかで緻密
- 白蟻や腐朽に対する自然耐性が極めて高く、薬剤処理不要でも屋外使用が可能
- 公園のウッドデッキ・桟橋・ベランダ・外構に使用されることが多い
- 加工には専用刃物が必要だが、その分耐久性は抜群
他にも白蟻に強いとされる木材
樹種 | 特徴 |
---|---|
ウリン | 別名「アイアンウッド」。非常に重く、雨や白蟻に強い。耐用年数は20年以上。 |
ヒバ(青森ヒバ) | ヒノキに近い成分構成。ヒノキチオールに加え、ヒノキアスナロールという成分で防蟻・防菌性が高い。 |
ケヤキ・カシ | 密度が高く、硬くて丈夫。構造材や土台としても使われるが、加工性はやや難あり。 |
注意:食われにくい ≠ 絶対安全
白蟻は飢餓状態になると、通常は避ける木材にも手を出します。また、「辺材(外側の部分)」は心材よりも柔らかく、強い木材でも辺材は食われる可能性があるため注意が必要です。
安全に使うためのポイント
- 水まわりや地面に接する場所では、なるべく心材を使用する
- 高耐久材でも、切断・加工部には油性防蟻剤を補足すると安心
- 重くて硬い材は構造負荷や加工性も考慮する
まとめ:木の選び方ひとつで、防蟻性が変わる
防蟻処理に頼らず、木材そのものが持つ「耐蟻性」に注目することで、より持続可能で安全な設計が可能になります。特に長期使用を前提とする構造材・床材・外構材では、「白蟻が嫌う木材」を選定することが、数十年後の安心につながります。
素材が語る、耐久のチカラ。
木を知れば、白蟻に強い家が見えてくる。
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