それぞれの土に適した地盤改良工法とは

住まいづくりの基本(住まいづくりの考え方と進め方)
土質から地盤改良の工法を考える

 これまでの解説をもとに、一般の方にもわかりやすいよう、「土の種類」と「適した地盤改良工法」を整理した一覧表を作成しました。併せて、それぞれの工法の簡単な特徴とポイント解説も加えています。


一覧表

土の種類主な問題点適した地盤改良工法ポイント・注意点
粘性土水分を含むと沈下、収縮・表層改良工法・柱状改良工法・鋼管杭工法深さと強さに応じて選択。地盤が浅ければ表層、深ければ柱状・杭。
シルト質土水分変動で強度低下、液状化リスク・柱状改良工法・砕石パイル工法軟弱層が深い場合は柱状改良。透水性改善には砕石パイルも有効。
砂質土液状化リスク、流動性・表層改良工法・締固め工法(コンパクション)・砕石パイル工法液状化対策重視。締め固めで強度向上、砕石で排水性も確保。
礫質土掘削しにくいが強い地盤・改良基本不要・転圧整地のみ通常改良不要だが、大礫混じりなら施工注意。杭施工時にプレボーリング併用する場合も。
ローム(関東ローム層など)水を含むと滑りやすい・表層改良工法・柱状改良工法表層が弱ければ改良。擁壁や排水対策も重要。
シラス乾燥時安定、水分で流動・崩壊・柱状改良工法・砕石パイル工法流動防止のため、内部まで確実に固める。雨水対策必須。
腐植土圧縮しやすく、荷重に耐えない・置換工法(腐植土除去)・鋼管杭工法腐植土は除去が基本。深層に及ぶ場合は杭支持が必須。

【各工法の補足解説】

表層改良工法

  • 地表から2〜3m程度までの軟弱層をセメント系固化材で固める方法
  • コストが比較的安い
  • 浅い軟弱層に有効

柱状改良工法(深層混合処理工法)

  • セメントミルクを注入して、地中に直径50cm〜80cm程度の柱を作る
  • 支持層に届かない場合でも、柱全体で建物を支える

砕石パイル工法(ハイスピード工法など)

  • 砕石(石)を地中に詰めて杭状に締固める
  • 透水性が向上し、液状化対策にもなる
  • 環境負荷が小さい

鋼管杭工法

  • 鋼製のパイプを支持層まで貫入し、直接荷重を支持層に伝える
  • 深い腐植土や極端な軟弱地盤向き
  • 工事費は比較的高め

置換工法

  • 軟弱な土を掘り出し、砂や良質土で置き換える方法
  • 浅い腐植層や泥炭地に有効
  • 掘削搬出コストがかかる

 このように、「どんな土か」によって、選ぶべき地盤改良工法は大きく変わります。間違った改良をしてしまうと、施工後に沈下が起こる、地震や豪雨で被害が出る、といった大きなリスクにつながるため、地盤調査結果を正しく読み取り、適切な工法を選ぶことが本当に大切です。住宅を建てる際には、必ず専門家と相談しながら、地盤に最も適した方法を選びましょう

地盤改良工法別の費用目安一覧

 ここでじゃ。一般的な木造住宅(30〜40坪程度)を想定した参考価格帯を紹介します。実際の費用は、地域・現場条件・設計内容によって異なることをご了承ください。

工法名概算費用(税別)適用ケース
表層改良工法約3〜6万円/坪(10〜20万円/棟)軟弱層が2m以内の場合
柱状改良工法約5〜10万円/坪(30〜80万円/棟)軟弱層が3〜8m程度の場合
鋼管杭工法約8〜15万円/坪(50〜120万円/棟)支持層が深い場合(5m以上)
砕石パイル工法約6〜12万円/坪(40〜90万円/棟)液状化対策、環境配慮型
置換工法(表層のみ)約3〜8万円/坪(15〜40万円/棟)腐植土層が浅い場合

ポイント

  • 軟弱地盤が浅ければ安く済みやすい(表層改良)
  • 支持層が深くなるとコストが跳ね上がる(柱状改良・鋼管杭)
  • 砕石パイルは環境配慮型だが、やや高めになりやすい
  • 置換工法は掘削量・運搬距離によって価格が大きく変動

工法ごとのメリット・デメリット比較表

~それぞれの特徴をしっかり理解しよう~

工法名メリットデメリット
表層改良工法・比較的低コスト
・工期が短い
・浅い軟弱層に対応可能
・深い軟弱層には対応できない
・大雨時に改良効果が落ちる場合あり
柱状改良工法・深い軟弱層にも対応可能
・支持力が安定しやすい
・幅広い地盤に使える
・コストが中程度〜高め
・セメント量が多いと環境負荷が懸念される
鋼管杭工法・確実に支持層まで到達できる
・不同沈下防止効果が高い
・建物荷重をしっかり支持できる
・費用が高額
・施工騒音・振動に配慮が必要な場合あり
砕石パイル工法・自然素材使用で環境に優しい
・液状化対策にも有効
・透水性が良く水はけが改善
・施工単価がやや高い
・地盤の硬さによっては施工不可の場合も
置換工法・腐植土を完全に除去できる
・良好地盤への入れ替えで安心感が高い
・掘削土の処分費・運搬費がかかる
・浅い地盤にしか適用できない

地盤改良は「安さ」だけで選ばないことが重要です。地盤改良工事は、単に「安いから」といって選ぶと、改良効果が不十分、後で不同沈下や損傷が起こる、といった取り返しのつかないリスクが発生する可能性もあります。必ず、

  • 地盤調査結果に適した工法を選択すること
  • 施工会社と十分に相談し、リスクも含めて理解すること が、安全で長持ちする家づくりには不可欠です。

地盤調査から改良工法決定までの流れ

 ここでは、地盤調査から改良工法の決定までの流れをご紹介します。

【図解】地盤調査から地盤改良決定までの流れ

1. 建物計画スタート
          ↓
2. 地盤調査の実施
(SWS試験/ボーリング試験など)
          ↓
3. 地盤調査報告書を確認
 ・土質の種類
 ・支持層の深さ
 ・N値(強さ指標)
 ・沈下リスク
          ↓
4. 地盤判定
 → 安定地盤? 軟弱地盤?
          ↓
【判定結果による分岐】
 ・良好地盤 ⇒ 通常の基礎工事のみ
 ・軟弱地盤 ⇒ 地盤改良工事が必要
          ↓
5. 適切な改良工法を選択
 ・表層改良
 ・柱状改良
 ・鋼管杭
・ 砕石パイル など
          ↓
6. 地盤改良工事の実施
          ↓
7. 建物の基礎工事スタート

各ステップをさらに詳しく解説

建物計画スタート

  • 建築予定地が決まり、家のプランを立てる段階。
  • 土地購入の前に、地盤の性質をチェックすることが理想的です。

地盤調査の実施

  • 一般住宅では**SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)**が多用されます。
  • 地盤の硬さ・地層構成・支持層の深さを把握するために必要です。
  • 地盤が怪しい場合は追加でボーリング調査を行うこともあります。

地盤調査報告書を確認

報告書で見るべきポイントは、

  • 土の種類(粘土?砂?シルト?)
  • 支持層の有無とその深さ
  • N値(地盤の硬さ指標)
  • 推定沈下量

など。これらをもとに、地盤の安全性を総合判断します。

地盤判定

 地盤判定では、大きく次の2つに分かれます。

判定結果対応
良好地盤(硬い層あり)通常の基礎工事でOK(布基礎・ベタ基礎)
軟弱地盤(柔らかい層あり)地盤改良が必要(支持層まで届かせる必要あり)

適切な改良工法を選択

 地盤の状況に合わせて最適な改良方法を選びます。

状況選択する主な工法
軟弱層が浅い(〜2m)表層改良工法
軟弱層が中程度(3〜8m)柱状改良工法
支持層が深い(8m以上)鋼管杭工法
液状化・排水改善が必要砕石パイル工法

地盤改良工事の実施

  • 設計した工法に基づき、改良工事を行います。
  • 工事後、改良がきちんとできたかの確認も重要です(施工記録や管理資料をチェック)。

建物の基礎工事スタート

 地盤が整ったら、ようやく基礎工事(ベタ基礎・布基礎など)が始まります!

【まとめ】

最初にきちんと地盤を調べ、正しい改良をすることが、
後悔しない家づくり
安心して暮らせる家づくり
につながります。

土地購入や建築を計画している方は、ぜひこの流れを参考に、
「地盤にも目を向けた家づくり」をしてみてください。

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