土には「礫・砂・シルト・粘土」などの種類があります。では、「どの土なら家を建てても大丈夫なの?」という疑問が出てきます。ここで登場するのが「地耐力」です。簡単にいえば、
その地盤が、建物の重さをどのくらい安全に支えられるのか
を表すものです。一般的には「kN/㎡(キロニュートン毎平方メートル)」という単位で表します。例えば30kN/㎡であれば、かなり大ざっぱにいえば、
1㎡の地面で約3トンの荷重を支えられる
くらいのイメージです。ただし、ここで非常に重要なことがあります。
「砂だから30kN/㎡」「粘土だから20kN/㎡」というように、土の種類だけで地耐力が決まるわけではありません。
同じ砂でも、ぎゅっと締まった砂とサラサラで緩い砂では強さが違います。粘土についても、硬く締まった粘土と、水を多く含んだ軟弱な粘土では大きく違います。そのため、以下に示す地耐力はあくまで「このような傾向がある」というイメージとして考えてください。
礫――締まっていれば比較的強い地盤
礫とは、砂利や小石を多く含んだ粒の大きな土です。十分に締まった礫質地盤は、一般的には住宅を支える地盤として良好な場合が多く、50kN/㎡以上の比較的大きな地耐力を期待できる場合もあります。ただし、礫があるから必ず強いとは限りません。
例えば人工的に埋め戻された礫や、礫の間に軟らかい土が多く入っている地盤では、十分な支持力が得られないことがあります。
対処方法
地盤調査によって十分な地耐力が確認でき、沈下のおそれも小さければ、特別な地盤改良を行わずに基礎を施工できる場合があります。30kN/㎡以上の地耐力が確認できれば、条件に応じて布基礎やべた基礎を採用することができます。
砂――締まっているかどうかが重要
砂質地盤は、状態によって大きく性質が変わります。よく締まった砂質地盤なら、住宅を支える十分な地耐力を持っていることがあります。一方、緩く堆積した砂では地耐力が小さくなり、建物を建てることによって地盤が締まり、沈下することがあります。例えば、
締まった砂質地盤 → 30~50kN/㎡以上を期待できることもある
一方で、
緩い砂質地盤 → 20kN/㎡を下回ることもある
というように大きな差があります。また、砂質地盤ではもう一つ注意しなければならないことがあります。
それが液状化です。地下水位が高く、緩い砂質地盤では、大きな地震によって液状化し、建物が沈下したり傾いたりすることがあります。
対処方法
十分に締まった砂質地盤であれば、通常の布基礎やべた基礎で対応できる場合があります。一方、緩い砂質地盤の場合には、
- 表層地盤改良
- 柱状地盤改良
- 小口径鋼管杭などによる補強
などを検討します。さらに液状化の可能性がある地域では、単純な地耐力だけではなく、地下水位や砂層の厚さなども調べる必要があります。
シルト――一見すると普通でも注意したい地盤
シルトは砂より細かく、粘土より粗い土です。砂と粘土の中間のような性質を持っています。住宅地盤では「砂質シルト」「粘土質シルト」などとして現れることも多く、含水量や締まり具合によって性質が大きく変わります。
締まったシルトであれば住宅を支えられる場合がありますが、軟弱なシルトでは20~30kN/㎡程度以下となる場合もあります。また、水を多く含んだ軟弱なシルト層が厚く堆積している場合には、沈下にも注意が必要です。
対処方法
比較的浅い部分だけが軟弱で、その下に良好な地盤がある場合には、表層地盤改良などで対応できることがあります。軟弱層が深い場合には、
柱状地盤改良や杭状の地盤補強
によって、より深い良好な地層まで建物の荷重を伝える方法を検討します。
粘土――「地耐力」だけでなく沈下にも注意
粘土質地盤は、不同沈下を考えるうえで特に注意したい地盤です。ただし、粘土だから悪い地盤というわけではありません。硬く締まった粘土であれば、50kN/㎡以上の地耐力を持つこともあります。問題になるのは、水を多く含んだ軟弱粘土です。
軟弱な粘土地盤では、地耐力が20kN/㎡を下回ることもあります。そして粘土地盤では、もう一つ重要な問題があります。それが圧密沈下です。
建物の重さによって粘土の中の水が少しずつ抜け、長い時間をかけて地盤が沈んでいく現象です。そのため、「建物を支える力はあるから大丈夫」というだけでは判断できません。将来どの程度沈下する可能性があるのかまで考える必要があります。
対処方法
軟弱な粘土層が浅ければ、表層地盤改良によって対応できる場合があります。軟弱層が数メートル程度続く場合には、柱状地盤改良などが検討されます。
さらに軟弱層が深い場合には、小口径鋼管杭などによって深い支持地盤まで荷重を伝える方法が検討されます。
地耐力によって基礎はどう変わる?
ここまで土の種類について説明しましたが、実際の基礎選びでは「土の名前」ではなく、地盤調査によって確認された地盤の長期許容応力度が重要になります。
木造住宅などで構造計算によらず告示仕様の基礎を選ぶ場合、大きく分けると次のようになります。
| 地盤の長期許容応力度 | 基礎の考え方 |
|---|---|
| 30kN/㎡以上 | 布基礎・べた基礎・基礎ぐい |
| 20~30kN/㎡未満 | べた基礎・基礎ぐい |
| 20kN/㎡未満 | 基礎ぐい |
つまり、
- 30kN/㎡以上 → 布基礎も可能
- 20~30kN/㎡ → べた基礎以上が必要
- 20kN/㎡未満 → そのまま浅い基礎で支えるのは難しい
というイメージです。
「べた基礎だから安心」は間違い
ここで、住宅を購入する方にぜひ知っておいていただきたいことがあります。最近の木造住宅ではべた基礎が非常に多いため、「うちはべた基礎だから地盤は大丈夫」と思っている方も少なくありません。
しかし、これは必ずしも正しくありません。べた基礎は建物の荷重を広い面積で地盤に伝えることができる優れた基礎ですが、地盤そのものが大きく沈めば、べた基礎も一緒に沈みます。
特に、建物の右側は硬い地盤、左側は軟弱地盤という状態だったらどうでしょう。建物全体が均等に沈むのではなく、軟弱な側だけ大きく沈む可能性があります。これが不同沈下です。
したがって、不同沈下を防ぐために重要なのは、「強い基礎をつくること」だけではなく、「その基礎を支えている地盤がどうなっているのかを知ること」なのです。
地耐力だけを見ても不同沈下は判断できない
そして、もう一つ非常に重要なことがあります。地盤調査の結果、「地耐力30kN/㎡あります」と言われたとしても、それだけで安心してはいけません。不同沈下を考える場合には、
- 地耐力は十分か
- 軟弱層がないか
- 軟弱層はどのくらいの厚さか
- 敷地内で地盤の硬さが違っていないか
- 盛土と切土にまたがっていないか
- 地下水位は高くないか
- 圧密沈下のおそれはないか
- 液状化のおそれはないか
などを総合的に見る必要があります。地盤が建物を「支えられるか」と、「沈まないか」は、似ているようで少し違う問題なのです。不同沈下を防ぐためには、この両方を確認することが大切です。
土の種類よりも「地盤全体を見る」ことが大切
ここまでを整理すると、一般的な傾向は次のようになります。
| 土の種類 | 一般的な特徴 | 注意すること | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 礫 | 比較的強いことが多い | 埋戻し・締固め | 良好なら直接基礎 |
| 砂 | 締まり具合で大きく変わる | 沈下・液状化 | べた基礎・地盤改良等 |
| シルト | 水の影響を受けやすい | 軟弱層・沈下 | 表層・柱状改良等 |
| 粘土 | 硬いものから非常に軟らかいものまである | 圧密沈下 | 地盤改良・杭状補強等 |
ただし、この表だけを見て、「礫だから安全」「粘土だから危険」と判断してはいけません。実際の地盤は、礫・砂・シルト・粘土などが何層にも重なっています。さらに、その硬さ、厚さ、水分量、地下水、造成履歴などによって性質は大きく変わります。
だからこそ住宅を建てる前には地盤調査を行います。そして、その調査結果から、
「どんな土なのか」
「どのくらい建物を支えられるのか」
「将来沈む可能性はないのか」
を確認し、その土地に適した基礎や地盤補強を選ぶことが、不同沈下を防ぐうえで非常に重要なのです。
一点、この記事を公開用に仕上げる際には、「礫50kN/㎡、砂30~50kN/㎡……」という数値をあまり前面に出さない方がよいと思います。土質名だけから地耐力を決められないため、読者が「うちは砂だから30kN/㎡以上ある」と誤解する可能性があるからです。
むしろ、国交省の基準である「30kN/㎡以上・20~30kN/㎡・20kN/㎡未満」を大きく図解し、その下に「土の種類によってこの数値が決まるのではなく、地盤調査で確認します」と入れると非常に分かりやすいです。国交省資料でもこの3区分による基礎選定が明示されています。(国土交通省)
また、住宅瑕疵担保責任保険協会も、地盤の判断では許容支持力だけでなく即時沈下・圧密沈下を検討し、自沈層や液状化のおそれがある場合には有害な沈下が生じないことを確認する必要があるとしています。これは今回の「不同沈下」というテーマではぜひ入れておきたいポイントです。(kashihoken.or.jp)
