地震による住宅被害を考えるとき、「地震の大きさ」だけに注目してしまいがちですが、実はそれ以上に重要なのが、どのような揺れ方をしたかという点です。同じ規模の地震であっても、揺れの伝わり方や時間の長さによって、住宅が受けるダメージは大きく異なります。ここでは、住宅への影響という視点から、代表的な地震の種類と揺れ方の違いを見ていきます。
内陸直下型地震― 瞬間的に、強烈な力が加わる揺れ ―
内陸直下型地震は、陸地のすぐ地下にある断層がずれて発生する地震です。このタイプの地震の特徴は、
- 震源が浅い
- 揺れが突然、真下から襲ってくる
- 揺れ始めから非常に強い
という点にあります。建物は、変形して力を逃がす時間がほとんど与えられないまま、一気に大きな力を受けます。
阪神・淡路大震災に見る直下型地震の恐ろしさ
1995年の阪神・淡路大震災は、典型的な内陸直下型地震でした。当時の揺れは、
- 最初に「ドン」と突き上げる衝撃
- 直後に、激しい横揺れ
がほぼ同時に発生する、住宅にとって非常に厳しいものでした。特に、
- 旧耐震基準で建てられた木造住宅
- 壁量が不足している住宅
- 増改築によってバランスが崩れていた住宅
では、揺れが始まってから、わずかな時間で倒壊に至った例が数多く見られました。
「倒壊しなかった家」も、無傷ではない
阪神・淡路大震災では、倒壊を免れた住宅も数多く存在します。しかし、それは「安全だった」という意味ではありません。実際には、
- 柱や梁に内部亀裂が入っていた
- 接合部の金物が緩んでいた
- 基礎にひび割れが生じていた
といった、外観からは分かりにくい損傷を受けていた住宅も多くありました。これらのダメージを抱えたまま次の地震を受けると、一気に倒壊リスクが高まることになります。
海溝型地震― 揺れが長く続き、建物を揺さぶり続ける ―
海溝型地震は、海のプレートが沈み込むことで発生する地震です。このタイプの特徴は、
- 揺れが比較的長時間続く
- 建物が何度も繰り返し揺さぶられる
という点にあります。一回一回の揺れは、直下型地震ほど瞬間的に強くない場合でも、
- 繰り返し変形することで
- 部材が少しずつ傷み
- 最後に耐えきれなくなる
という形で、被害が進行していきます。
揺れ方の違いが、住宅の「弱点」を突く
直下型地震と海溝型地震では、揺れの性質が大きく異なります。しかし、どちらの揺れであっても共通しているのは、
- 耐震性能が不足している住宅
- 壁や構造のバランスが悪い住宅
では、弱い部分から被害が集中するという点です。地震は、住宅の欠点を容赦なくあぶり出します。
「前の地震では大丈夫だった」は通用しない
地震被害で非常に重要なポイントがあります。それは、”一度の地震で倒壊しなかったからといって、
次も耐えられるとは限らない”ということです。
- 以前の地震で受けた見えないダメージ
- 繰り返される揺れによる劣化
これらが重なった結果、次の地震で突然倒壊するケースも決して珍しくありません。
まとめ:地震の種類を知ることが、耐震を考える出発点
日本では、
- いつ
- どこで
- どのタイプの地震が起きるか
を正確に予測することはできません。だからこそ、
- どんな揺れ方でも
- 命を守れるか
- 次につながる状態を保てるか
という視点で、住宅を考える必要があります。

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