インスペクションは、同じ「住宅診断」という名前でも、誰が行うかによって得られる情報の質が大きく変わります。だからこそ、「受けるかどうか」以上に「誰に依頼するか」 が重要になります。
インスペクションは“資格名”だけで選ばない
インスペクションを行う人には、
- 建築士
- 住宅診断士
- 民間資格を持つ検査員
など、さまざまな立場の人がいます。しかし重要なのは、資格の名前そのものではありません。
- どこまで建物を理解しているか
- 構造・施工・劣化を総合的に見られるか
- 購入者の立場で説明できるか
といった 実務的な視点と経験 が問われます。
建築士が行うインスペクションの強み
建築士が行うインスペクションには、次のような強みがあります。
- 構造・耐震・法規を横断的に理解している
- 図面と現況の整合性を判断できる
- 将来の改修や建替えまで見据えた説明ができる
単なる「不具合探し」ではなく、この家をどう判断すべきか という視点で整理できる点が大きな特徴です。
不動産会社・売主と利害関係がないか
インスペクションでは、中立性 がとても重要です。
- 売主側の紹介
- 仲介会社と強く結びついた検査
の場合、無意識のうちに評価が甘くなることも否定できません。依頼先は、
- 売主・仲介業者と利害関係がない
- 購入者側の立場で説明してくれる
かどうかを、必ず確認しましょう。
「指摘するだけ」で終わらない人を選ぶ
良いインスペクションは、単に問題点を並べるだけではありません。
- どの程度深刻なのか
- すぐ直すべきか
- 様子を見てよいのか
- 費用感や対応の方向性
まで含めて、判断につながる説明 をしてくれます。専門用語ばかりでなく、納得できる言葉で説明してくれるかも重要なポイントです。
「安さ」だけで選ばない
インスペクション費用は、内容や範囲によって差があります。安さだけで選ぶと、
- 調査範囲が限定的
- 床下・小屋裏を見ない
- 説明が簡素
といったケースもあります。費用と同時に、
- どこまで調査してくれるのか
- 報告内容はどの程度か
を必ず確認しましょう。
事前相談に応じてくれるか
信頼できる専門家ほど、依頼前の相談にも丁寧に応じてくれます。
- この物件でインスペクションは有効か
- どこを重点的に見るべきか
- 他の調査が必要か
こうしたやり取りを通じて、相性や説明の分かりやすさ も見えてきます。
インスペクションは「判断の伴走者」
インスペクションを依頼する相手は、単なる検査員ではなく、中古住宅購入という大きな判断に伴走してくれる存在と考えると分かりやすいでしょう。信頼できる相手を選ぶことで、不安は整理され、判断はブレにくくなります。
まとめ
インスペクションの価値は、内容だけでなく「誰が行うか」によって大きく左右されます。資格名や費用の安さだけで選ぶのではなく、構造・法規・劣化を総合的に判断でき、売主側と利害関係のない中立な専門家を選ぶことが大切です。問題点を指摘するだけでなく、その意味や対応方針まで分かりやすく説明してくれる人こそ、安心して判断を任せられる存在です。

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