かつて小さな木造住宅には「4号特例」と呼ばれる制度があり、一定の条件を満たせば、建築確認申請に必要な図面や構造の詳細な審査が一部省略できるようになっていました。この特例制度があったことで、家を建てる人・設計する人・工務店や建築士のそれぞれにとって、いくつかの“楽”があったのです。
図面が少なくて済んだ
通常の確認申請では、構造計算書や詳細な構造図、金物の仕様図など、多くの資料を添付する必要があります。しかし、4号建築物の場合は、構造的な部分の詳細な説明を省略してもOKとされていました。
これにより…
- 建築士は図面作成の手間が減り
- 申請者は早く申請でき
- 行政側もチェックにかかる時間を短縮できる
という三方にとってメリットのある仕組みでした。
申請~着工までが早かった
申請内容が簡素である分、審査にかかる期間も短縮されていました。とくに地方の自治体では、
「4号建築物=構造部分は建築士が責任をもって設計している」という前提で、形式的な確認のみでスムーズに許可が下りるケースが多かったのです。
これにより…
- 着工のタイミングを調整しやすく
- 工期の計画が立てやすく
- 家づくり全体のスピード感が出た
という、現場の実務上のスムーズさが得られていました。
費用を抑えやすかった
構造計算や詳細図面を省略できることで、建築士への設計費用や申請にかかるコストも相対的に抑えやすくなっていました。これはとくに、「とにかく限られた予算で家を建てたい」という施主にとって、大きな安心材料になっていたのです。
小さな家を建てやすい環境だった
4号特例があったことで、小規模な木造住宅の建築ハードルがぐっと下がっていたのは事実です。都市部の狭小地や、郊外の単身者・夫婦世帯向けのコンパクト住宅などは、まさに4号特例の恩恵を受けながら建てられてきました。
「信頼」に支えられた制度でもあった
この制度が成立していた背景には、「建築士が責任をもって設計するから大丈夫だろう」
という、ある種の“信頼”があったともいえます。しかし時代が変わり、建物に求められる性能や安全性、省エネ性などが高まる中で、「省略」よりも「確認・担保」が重視される方向に移りつつあるのです。
まとめ:4号特例は「家づくりのハードルを下げる」制度だった
かつての4号特例は、簡素化された手続きによって、
✅ 図面や書類の量が減り
✅ 審査が早く済み
✅ コストも抑えやすく
✅ 小さな家を建てやすい土壌があった
という、大きなメリットを持つ制度でした。ですがその反面、見落としや安全性のばらつきが生まれやすい側面もあったため、2025年以降はより厳しく「確認する」仕組みに変わっていきます。今後は“信頼”だけでなく、“根拠”と“確認”によって支えられた家づくりが求められる時代へ。制度の背景を知ることで、これからの住まい選びにも役立つ視点が養われるはずです。
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