確認申請は本来、建物の安全性や法令順守をチェックする大切な制度です。
しかし、かつての制度では「4号建築物」に対して、一部の図面や書類の審査が省略できる“特例”が認められていました。ここでは、なぜそのような制度が存在したのか、背景や理由をわかりやすく解説します。
背景にあったのは「設計士の責任」と「行政の負担軽減」
建築士がチェックすれば、確認は簡素でよいという考え方
4号建築物の特例が認められていた最大の理由は、建築士が設計し、かつ設計内容に責任を持つという仕組みが整っていたためです。
仕組み | 内容 |
---|---|
建築士の関与 | 建物の設計は有資格者である建築士が行う |
自己責任の原則 | 建築士が「建築基準法に適合している」と確認のうえ申請 |
確認機関の負担軽減 | 小規模住宅まで厳密に審査すると、行政の事務負担が過剰になるため、簡略化が図られた |
「小規模なら、資格のある専門家が設計すれば大丈夫だろう」という合理的な判断だったとも言えます。
対象が“日常的な住宅”だったから
全国に数多く建てられる戸建て住宅をスムーズに進めるため
4号建築物の多くは、一般の住宅や店舗付き住宅、別荘などの“日常的な建物”でした。
- 特別な用途や構造でない
- 火災や災害リスクが低い小規模建築
- 建築士が標準設計で対応できる内容が多い
そのため、毎回すべてを厳密に審査するのではなく、「必要最低限の審査で良い」とされていたのです。
審査省略によるメリット
現場や施主にとっての利点も多かった
利点 | 内容 |
---|---|
書類が少なく済む | 省エネ計算・構造計算の提出が不要(※当時) |
審査が早い | 確認申請から許可までの日数が短縮 |
設計変更も柔軟に対応 | 細かい変更があっても再審査が不要な場合が多い |
費用が安くなる | 設計・確認申請にかかる手数料が少ない |
特に住宅を「早く・安く・簡単に」建てたい人にとって、大きなメリットがあった制度でした。
しかし、次第に見えてきた“想定外のリスク”
建築士の力量・モラルに依存しすぎていた面も
この特例制度には、次のような構造的リスクが潜んでいました。
- 第三者の目によるチェックが省略されていた
- 建築士の説明を受けても、建て主(施主)が内容をよく理解していないことが多かった
- 構造の安全性や省エネ性能があいまいなまま着工されるケースも存在
つまり、「専門家を信用する」前提に立った制度であるがゆえに、設計のばらつき・不備・トラブルが表面化してきたのです。
まとめ:「簡略化」は合理的だったが、限界もあった
視点 | 内容 |
---|---|
簡略化の目的 | 行政負担の軽減・設計の自由度・住宅供給の効率化 |
支えていた前提 | 建築士の誠実な設計と責任感 |
問題点 | チェックの目が届かず、施工トラブルや違反が発生することも |
当時は合理的でも、現在の「住宅性能・安全・省エネ重視」の時代には合わなくなってきた制度だったとも言えるでしょう。
次
目次