中古住宅を購入する際、多くの方は不動産会社からの説明をもとに判断します。立地、価格、築年数、リフォーム履歴など、丁寧に説明されると「大丈夫そう」と感じるかもしれません。しかし、ここで一つ大切な視点があります。それは、不動産会社の説明=購入者にとって最善の判断材料とは限らないということです。
不動産会社の役割を正しく理解する
まず誤解してはいけないのは、不動産会社が「悪い存在」だということではありません。不動産会社の主な役割は
- 売主と買主をつなぐこと
- 契約を成立させること
です。一方で、
- 建物の安全性
- 将来の修繕リスク
- 耐震性や構造上の問題
までを購入者目線で深く判断する立場ではないのが現実です。説明内容は事実であっても、「どこまでリスクとして捉えるべきか」「購入判断にどれほど影響するか」までは踏み込まれないケースが多くあります。
「説明を受けた」と「判断できた」は違う
中古住宅購入でよくある失敗は、説明を聞いた=理解したつもりになってしまうことです。たとえば、
- 「築年数は古いですが、リフォームされています」
- 「当時の基準では問題ありません」
- 「みなさん普通に住まれています」
これらの言葉は、安心感を与えますが、具体的なリスクや将来の負担を示しているわけではありません。重要なのは、
- どこが弱点なのか
- 何が将来問題になり得るのか
- それを自分は受け入れられるのか
を、自分の言葉で理解できているかどうかです。
判断を他人に委ねるリスク
中古住宅は「一つとして同じものがない」商品です。だからこそ、判断を他人任せにすると、後悔につながりやすくなります。実際に多いのが、
- 「こんなに傾いているとは思わなかった」
- 「補修費がここまでかかるとは聞いていなかった」
- 「耐震改修が簡単にできると思っていた」
といった声です。不動産会社は責任を持って説明していても、最終的に住む責任、費用を負担する責任は購入者自身にあります。
判断の軸を自分の中に持つ
不動産会社任せにしない判断とは、「すべて自分で調べる」という意味ではありません。大切なのは、
- 専門家(建築士など)の意見を聞く
- 不動産会社の説明を“材料”として整理する
- 最後は自分の価値観で判断する
という姿勢です。たとえば、
- 安全性を最優先したいのか
- 多少のリスクを承知で価格を重視するのか
- 将来の改修費を含めて許容できるか
こうした判断は、本人にしかできません。
「質問できるかどうか」が判断力の差になる
不動産会社任せにしない人は、必ず質問をしています。
- 「この家の弱点はどこですか?」
- 「将来、費用がかかる可能性はありますか?」
- 「建築士に見てもらうことは可能ですか?」
こうした質問に、誠実に答えてもらえるかどうかも、物件や取引を見極める大切なポイントです。
不動産会社 × 建築士 × 自分、という関係
理想的なのは、
- 不動産会社 → 取引と情報提供のプロ
- 建築士 → 建物を見極める専門家
- 購入者 → 判断と選択の主体
という役割分担です。誰か一人に任せるのではなく、それぞれの立場を理解し、組み合わせて判断することが、中古住宅購入を成功させる近道です。
次のステップへ
次の 8.3「建築事務所でできる具体的な支援」 では、建築士・建築事務所が、
- どこまで関われるのか
- どんな支援が実際に受けられるのか
を、より具体的に解説していきます。「専門家に相談する」とは何を意味するのか。その全体像を知ることで、中古住宅購入はさらに安心なものになります。
