白蟻対策の基本は「湿気をこもらせない」こと。そのためには、床下だけでなく壁体内や屋内の湿気も適切に排出できる構造が不可欠です。この節では、白蟻の侵入リスクを下げるための「通気層工法」と「換気計画」の考え方について解説します。
通気層工法とは? ~壁の中に空気の通り道を設ける構法~
通気層工法とは、外壁材の内側と構造体の間に「通気層(空気の層)」を設けることで、壁体内の湿気を排出できるようにする工法です。これは、木造住宅における防露・防腐・白蟻防除において非常に有効です。
構造イメージ(外壁→内側へ)
外壁材(サイディング等)
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通気層(胴縁で確保された空間)
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透湿防水シート(タイベック等)
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構造用合板・柱
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断熱材
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内装材(石膏ボード等)
通気層工法の効果
効果 | 説明 |
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壁体内の湿気を屋外に排出 | 結露を防ぎ、構造材の腐朽や白蟻の発生を抑制 |
壁内部の乾燥状態を維持 | 腐朽菌・白蟻の生息環境を作らない |
外壁の熱を排出して断熱性向上 | 夏の遮熱にも寄与 |
通気層の設計上のポイント
項目 | 要点 |
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胴縁の設置 | 通気層を確保するため、外壁下地に「縦胴縁(15~18mm程度)」を設置し、空気の通り道をつくる |
換気口の確保 | 軒天・水切りに空気の出入口を確保し、通気層の上下に自然な空気の流れをつくる |
塞がない施工 | 窓回り・配管部・サッシ下などで通気層が断絶しないよう、通気を妨げない納まりに配慮 |
シロアリ返しの板金 | 通気層を通って白蟻が登ってこないよう、防蟻板金の設置も重要 |
通気層が「空いていればいい」のではなく、連続して空気が動ける構造にすることがポイントです。
換気計画とは? ~家全体の空気の流れを意識する設計~
壁体内だけでなく、屋内の空気の流れ全体を設計段階から計画することで、白蟻の嫌う「乾燥した環境」を家全体に広げることができます。
換気の基本は「入口と出口」
部位 | 換気の工夫 |
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軒天換気(屋根通気) | 屋根の下地と断熱材の間に通気層を設け、軒先から棟まで空気を通す |
屋根棟換気口 | 温まった空気が上昇して自然に抜ける構造をつくる |
床下換気 | 基礎パッキンや換気口で床下に空気を通す |
室内換気(24時間換気) | 居室・水まわり・収納などの結露・カビ対策が白蟻対策にもなる |
換気不良が招くリスク
- 結露 → 腐朽菌 → 白蟻
- 湿気 → 木材含水率上昇 → 白蟻
- 湿った壁 → 白蟻の通り道になる
換気設計は、室内空気の健康+構造材の保護+白蟻対策を同時に満たす重要な計画です。
まとめ:白蟻を防ぐ「風の道」を設計でつくる
通気層工法と換気計画は、湿気をためず、木材の乾燥状態を維持するための設計技術です。白蟻や腐朽菌は乾燥を嫌うため、風の流れを止めず、家全体を“風通しの良い構造”にすることが被害防止につながります。
「風が通る家」は、
人にも木にも、白蟻にも“ちょうどいい”住まいのカタチなのです。
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