耐震診断というと、「計算で数字を出すもの」というイメージを持たれがちですが、実際にはその前段階として、現場調査が非常に重要な役割を担っています。どれだけ精密な計算を行っても、現場の状況を正しく把握していなければ、正しい診断結果は得られません。ここでは、耐震診断において建築士が「家のどの部分を見て」「その状態をどう判断しているのか」を、部位ごとに整理して解説します。
外部調査|建物全体のバランスと劣化状況を見る
外壁の状態
まず確認するのが外壁です。
- ひび割れの有無・位置・大きさ
- 剥がれ、浮き、欠損
- 苔やカビの発生状況
外壁のひび割れは、構造的な問題なのか、仕上げ材の劣化なのかを見極める必要があります。構造クラックが疑われる場合は、耐震性能や基礎の状態にも影響する可能性があります。
屋根の種類と状態
屋根は、耐震診断において非常に重要な要素です。
- 瓦屋根か、軽量屋根か
- 瓦のずれ・割れ
- 屋根材の固定方法
- 劣化状況
屋根が重いほど、地震時の揺れは大きくなり、建物にかかる負担は増大します。瓦の下に土が使われているか確認できない場合は、安全側を見て 「非常に重い屋根」 として評価されることもあります。
屋根材の劣化状況を見て、雨漏りの有無の判断基準とします。瓦やスレートなどがわれていたり、ずれていたり、金属板葺きが腐食していたら、雨漏りをしている可能性が高くなります。
軒先・庇・雨樋
一見、耐震とは関係なさそうに見える部分ですが、
- 軒先や庇の塗装剥がれ
- 木部の腐食
- 雨樋の変形や勾配不良
は、将来的に雨漏りや木部腐朽につながり、構造耐力の低下を招く要因になります。
内部調査|住まいの「違和感」を読み取る
床の状態・傾き
床は、住まい手が最も異変を感じやすい部分です。
- 床鳴り
- 沈み
- レーザーレベルによる床の傾き測定
多少の傾きは、木造住宅では許容範囲とされることもありますが、不同沈下や構造変形が疑われる場合は注意が必要です。
壁・天井の状態
- 亀裂の有無
- 雨漏り跡
- カビや変色
特に、天井の雨漏り跡は、「現在進行形か」「過去のものか」を慎重に見極めます。現在は止まっていても、原因が構造に影響していないかを確認することが重要です。
床下・基礎調査|見えない部分こそ重要
床下の状況
床下は、可能であれば必ず確認したい部分です。
- 土台や大引きの腐食
- シロアリ被害
- 湿気の状況
点検口がなく確認できない場合は、床の状態などから間接的に判断することになります。
基礎の種類と劣化
基礎は建物を支える最重要部分です。
- 無筋基礎か、鉄筋入りか
- ひび割れの有無・幅
- 浮き、剥がれ
鉄筋探査機を用いて、鉄筋の有無を確認することもあります。無筋基礎でひび割れがある場合は、耐震性を考えるうえで大きなマイナス要素になります。
小屋裏・天井裏調査|構造の「素顔」を確認する
天井裏や小屋裏は、構造の状態を直接確認できる貴重な場所です。
- 柱・梁の状態
- 火打ち、小屋筋違いの有無
- 金物(羽子板ボルト、垂木留め金物など)の設置状況
一方で、
- 柱頭・柱脚金物が未設置
- 筋違いが断熱材で確認できない
といった場合は、耐力がないものとして評価されることがあります。
現場調査の結果は、評点にどう反映されるのか
現場調査で確認した内容は、
- 建物重量の評価
- 壁量・耐力壁の評価
- 接合部の評価
- 劣化による低減係数
として、耐震診断の評点に反映されます。つまり、現場調査こそが、評点の「根拠」なのです。
まとめ
耐震診断における現場調査は、単なる目視確認ではなく、建物の安全性を多角的に読み解くための重要な工程です。
建築士は、「今どうなっているか」だけでなく、「このまま地震が来たらどうなるか」を想像しながら、家の各部を確認しています。耐震診断の結果を正しく理解するためにも、現場で何を見て、どう判断しているのかを知っておくことは、とても大きな意味を持ちます。

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